第2回 「CRASS」ジョージ・バーガー(著)萩原まり(訳)
- 2017.12.25
- COLUMN FROM VISITOR
- CRASS, ウィル バーチ, ジョージ バーガー, パブ・ロック革命, ロック・フェスティバル
みんな本読んでいますか!
読んでいないとバカになりますよ、とまでは言わないですけど、このネット時代PCから離れてゆっくりと本でも読まないと気が狂ってしまいそうです。
はい、日本のロックの名曲INUの「気い狂て」“いい加減にせんと気い狂って死ぬ”を歌いましょう。
大変な時代になりました。音楽は全部ネットの中にあります。ボブ・ディラン・キチガイのスティーブ・ジョブスが膨大なディランのライブ・ブートレッグをアーカイブ出来ないかなという妄想から始まったことがここまで来てしまったのです。びっくりするでしょう。
スティーヴ・ジョブス、ボブ・ディランしか興味ない人でした。年もすごく離れているのに、ボブ・ディランと付き合っていたという理由でジョーン・バエズと結婚しようとした人です。14歳違うだけなんで、普通といえば普通ですが。ジョン・ライドンはスリッツのアリ・アップのお母さんと結婚してますからね。ジョン・レノンもヨーコさんのこと「マザー」と呼んでましたから、20歳くらい離れているのかと思ったら、たった7歳でした。失礼しました。
頭のおかしな人のせいで今の音楽業界はこうなってしまったのです。別に悪いことじゃないと思ってます。「ストリーミング音悪い、レコードがいい」と言っている人の声も負け惜しみのような気がして仕方がありません。レコード時代にも「レコードの音なんか本当の音ちゃう、マスタリングされる前のスタジオの音が俺の本当の音や、だから俺はレコード聴かん」と言っているミュージシャンの人もいました。聴こうよw
確かにスタジオのあの大きなモニターから出る音はどんな高級オーディオより音いいです。体震えます。でも、10年後にはビートルズのアビーロード・スタジオの卓前で聴いている音が体験出来るアルバムとか出るんでしょうね。
キリがないです。
楽しくやっていきましょう。
本もすぐに全部ストリーミングみたいな形で毎月900円払ったら全部読めるようになるんでしょう。
本の世界にはスティーブ・ジョブスみたいなキチガイがいないからそんなことにはならないんですかね。
どうなるか分かりませんが、本読んで行きましょう。
先月はチャールズ・マンソンの犯罪についての本を紹介しましたが、今月はクラスというバンドの伝記本です。チャールズ・マンソンの犯罪はコミューンから始まったのですが、クラスの歴史もコミューンから始まりました。ということでこの本を紹介したいなと思いました。チャールズ・マンソンが悪でクラスが善ということですか。
僕はクラスのコミューン一度行っているんですよね。コミューンなんて嫌いだとずっと思っていたのですが、とっても綺麗でびっくりしました。その理由もこの本にちゃんと書かれています。レコーディング・スタジオもあったんですよね。すごいいいスタジオというか、天才的エンジニアがいたんです。僕が行った時はジーザス&メリーチェインがあのファースト・アルバムを作っていました。この辺のことも本にちゃんと書かれています。
そうそう全然関係ないですけど、現代のコミューン渋家も僕は行っているんですけど、とってもよくオーガナイズされていてびっくりしました。僕の知っているコミューンって、何か誰も掃除しなくって、小汚いイメージしかなかったんですが、僕が行ったコミューンはみんな綺麗でした。チャールズ・マンソンのコミューンは汚らしいかったらしいですけどね。
クラスの本を読めば分かると思うのですが、クラスの物語はコミューンというよりロック・フェスティバルから始まっています。フジ・ロックと一緒なのです。ロック・フェスティバルの挫折から始まっているのです。
みなさん、ロック・フェスティバルって一度全部挫折していたの知ってますか? あのウッドストックも実は挫折しているんですよ。近い内にウッドストックの主催者マイケル・ラングの著書『ウッドストックへの道ー40年の時空を超えて主催者が明かしたリアル・ストーリー』という本も紹介しますが、この本を読むとウッドストックの頃にはアメリカではフェスというのが流行遅れになっているというのがよく分かります。フェスにはたくさんの人が集まって問題を起こすだけの公害と思われていたのです。
ウッドストックでも出資者はフェスティバルには全く興味がなかったのです。出資者は、マイケル・ラングが出資者に興味を持ってもらうために考えたアイデア、当時、アーティストの隠れ家的場所として盛り上がっていたウッドストックに宿泊施設の完備されたレコーディング・スタジオを作るというビジネスに興味があっただけなのです。
出資者はフェスはそのレコーディング・スタジオを盛り上げるくらいにしか考えてなかったのです。そして、ロック・フェスでは誰も場所を貸してくれなくなっていたのです。政治集会の中に音楽をやる場所があるとか、アート・フェスの一部にコンサート会場を作るとかという理由をつけてじゃないと誰も場所を貸してくれなくなっていたのです。それがウッドストックのタイトルが、ウッドストック・ミュージック&アート・フェア、3デイズ・オブ・ピース&ミュージックとなっている理由なんです。だからアートの人間も政治の人間も沢山の人が関わったから、あれだけの人が集まることになってしまったのです。
そんなウッドストックに影響されたのがイギリスのフェスです。クラスの本に書かれているように、みんなお金もなく挫折していくのです。そんな中で唯一彗星のように復活したのがグラストンヴェリー・フェスティバルです。その時彼らが一緒にやったのが反核団体のCNDです。政治団体と一緒にやっていなかったらグラストンヴェリーはあそこまでの形を作れなかったでしょう。
クラスの人たちはフェスをやっていた人たちが挫折して、フェス見たいな大きなことよりも自分たちのコミューン(場所)をしっかりと作ってやっていこうとした頃にパンクと出会い、ああいうバンドとなっていったのです。
一つの時代を作ったクラスですが、そんな彼らが失速する理由、それはイギリスの戦争、フォークランド戦争を止めれなかったことです。反戦、反戦って言ってたのにね、そりゃそうだ。彼らの挫折から何が生まれたか、まだ何も生まれてないような気がしますが、でもこの本読めば、何かしたい気になります。
フェスの挫折から生まれたもう一つ重要な動きがあるんです。パブ・ロックです。次回はそんなことが詳しく書いてくれているウィル・バーチの名著『パブ・ロック革命ーニック・ロウ/エルヴィス・コステロ/ドクター・フィールグッドらのロックンロール・デイズ』を紹介します。これも残念ながらもう中古でしか手に入らないんですね。
早く本もストリーミング時代に突入しないかな。