Vol .3「カセットテープ、再び・・」 txt : Isao Matsui

「OK.グーグル、昨日編集したカセットテープをかけて!」と言っても、勿論出来るわけもなく、AIスピーカーの間違った使い方なのですが、勿論それと同じ編集をUPしたSpotifyやYouTubeだったらかけてくれるのでしょうが。当たり前なのですが、アナログ・レコード、そして今日書こうと思っているカセットテープは思い切りアナログな作業が必要な音楽を聴く作業なのです。70年代、オーディオ装置がある環境でしか音楽が聴けなかった時代、しかしそれが大きく変わる商品が登場するのです。それまでは家の中でレコードを聴くことしかできなかった音楽鑑賞を表に出て歩きながらでも音楽が聴けるというのが1979年7月1日に発売されたソニーのウォークマン1号機だったわけです。

 

それは「音楽を携帯し気軽に楽しむ」という新しい文化だったわけです。「録音機能なしでは売れないとの社内外の声に反して大ヒットとなり新たなライフスタイルを創造し・・」と書かれています。そして、それはその後のiPodやiPadに繋がり、いわゆるポップカルチャーに多大な影響を与えた革命的な発明だったわけです。当時家には最低限のオーディオ装置=アンプ、ターンテーブル、オープンリール用のいわゆるテープデッキ、FMラジオを聴くためのチューナー、そしてカセットテープのデッキ(僕の場合はダブルカセットデッキでした)そして、割と大きなスピーカーシステム(今も同じ、3WAYで30㎝のウーハー)があるわけです。しかし、ウオークマンが登場するまではレコードをテープに録音して聴くということはなく、さらに僕の場合オフィシャルで発売されていたカセットテープはまったく買いませんでした。入り浸っていたレコード店がほとんど輸入盤の専門店だったせいかも分かりませんが、オフィシャルカセットはほとんど見かけなかったように思います。ウォークマンの登場以降、自分の所有しているレコードそのものを録音して電車の中で聞いたり、歩きながら聴いたり出来ることは、本当に画期的なことだったのです。ヘッドフォンから漏れる音が社会問題になったのもこの頃ですね。まんま、レコードを録音することもあれば、Spotifyのプレイリストのように自分でいろんなアルバムから曲を取り出し編集したテープなども作るようになるのです。友人にプレゼントしたり、好評だったら同じようなシリーズをその友人のために作ったりもしました。そしてソニーの初代ウオークマン以降何台かの携帯プレイヤー、ラジカセ、そして数知れずのヘッドフォンを買うことになるのです・・

 

現在も相変わらず先程も書いたオーディオ・セットで聴いているのですが、家の中にはまだまだ当時のカセットテープが結構あり、思い立った時に聴けるようにしています。

カセットテープもその録音によっていくつかの内容に分かれているのです。古いものでは学生時代にやっていたバンドのリハーサルやコンサートに出た時の音源などを録音したものがあります。当時は後のインディーズの連中のようにカセットテープで自分らの音源を発売しようと言う発想は無く、あくまで何処かのレコード会社からということだったし、多くのバンドが学生のままメジャーからレコードを発売していました。現在でも多くの友人がプロとして活躍してますが、そんな当時のテープを聞くと凄く懐かしいというか、その場の空気感まで思い出しますね。そして、コンサートの主催やアーティストをマネージメント、制作していた頃のPAオペレーターが録っていたコンサートの録音。これは照明や曲の流れなどを確認するために録ったものなのですが、83年の浜田省吾の大阪フェスのツアーファイナルやアルフィーの厚年2日間、ラウドネス86年の武道館のテープ等がいくつか残っています。事務所が保管するか使用したあと廃棄するのですが・・そして、レコード各社からのサンプル音源が(これらは殆ど廃棄したのですが。というかサンプルの後に正式なレコードなりCDが来たので)。で、後は友人が事務所を引き払った時にもらったジャズのカセットテープが結構あります・・今はこれを一番聴いてるかも分かりません。というのもジャズのレコードは殆ど持ってなく、デザイナーでもあった彼の手作りのカセットのジャケがいいというのもあるのです・・最初に書いたのですが、この手作り、アナログな感じがいかにもカセットテープという感じなのです。あとはラジオ番組のいわゆるエアーチェックしたもの・・当時はこの手のFM雑誌が多く発売されていて時間等をチェックしたり、付録にカセット用の曲が印刷されたものがついていたりしました。

 

カセットテープ全盛の時代・・

そして1982年以降CDが登場、デジタルの時代に・・・

あっという間にアナログが淘汰されます。

 

しかし、なんと、こんなデジタルがバリバリの時代に何年か前からのアナログ・レコードの復権に引き続き、今度はカセットテープが面白がられているらしいのです。一世を風靡した「CD」も再生装置が販売されなくなり、PCからも装置が取り外されていきVHSやレーザーディスク、MDのような立場に・・CDを知らない、持ってない世代、サブスクリプションで音楽を聴く時代。しかし、僕の周りの若いバンドの連中や欧米のグループの中にはカセットテープで新譜を発表するグループが増えてるような気がします・・昨年の12月に観に行った英のシューゲイザーのグループ「スローダイブ」のライブでもアナログ・レコードとともにカセットテープが販売されていて、しかも売れていました。現場では新たなアナログの時代に突入なのかも分かりません。行き過ぎたデジタル世界とアナログな世界の共存。ハイレゾ、8K。でも僕個人にとっては音がいいとか、画像が綺麗とかそういった興味や選択肢はもうとっくに無くなっています・・いま、面白いのは、時代や世代を超える<音楽>そのものの世界なのです。