特殊音楽の世界3 「アヴァンギャルドとnew waveの垣根をまたぐ人、スティーヴ・ベレスフォード」
- 2018.01.31
- COLUMN FROM VISITOR
- New Age Steppers, カンパニー, スリッツ, ポップ・グループ
今回はスティーヴ・ベレスフォードという人を紹介します。まずはこの動画を。
毎度、ジジババの話題ばかりで申し訳ないですが、この人、ポップ・グループやスリッツにもつながるイギリス音楽界の重要人物なんです。
大友良英が彼を好きすぎるあまり自費で自分のレーベルから日本発売したThe Bath Of Surpriseというアルバム。
(入手困難なのでリンク貼ります。以下のリンクも入手困難なものだけ貼ります。)
どうです?無茶苦茶でしょう?でもなんとなくユーモアがあるし即興演奏に有りがちな深刻さとは遠いところにあるとおもいます。
大友良英がこのアルバムに関して書いた文章がこれ。
http://www.japanimprov.com/yotomo/yotomoj/essays/postjazz.html
ポップ・グループのマーク・スチュワートが当時のイギリスの即興演奏界を代表するカンパニーのライヴに頻繁に出入りしていた話は有名ですし、ポップ・グループの1stシングルにバリバリのインプロヴァイザー、トリスタン・ホンジンガーが参加していることでもわかるように70年代末から80年代にかけてニュー・ウェイヴ/ポスト・パンクとアヴァンギャルドはお互い新しい世界を求めて密接に関わりがあったと思うのです。
そのことを如実に表しているのがベレスフォードの存在なのです。彼はエイドリアン・シャーウッドのNew Age Steppersやスリッツのメンバーも参加していた49Americansにも参加していました。
英国に限らず即興演奏のシーンは80年代中旬には硬直していくのですが、彼や彼周辺の人たちはその軽やかさをずっと保ち続けてます。
アヴァンギャルドな音楽は活動を続けて行くと必ずと言っていいほど硬直状態になってしまいますが、やはりあるシーンがずっと広がりを保つには活動にも音にも彼のようにどこかに軽やかさが必要なのだと思います。
スタンダードやTVや映画音楽を主にやるこういう洒落たバンドもやっています。
このバンドにいる故ロル・コックスヒルも突然段ボールとアルバム出したりトラッド・フォーク・ロック史上屈指の名盤アルビョン・バンドのNo Rosesに参加してたりするボーダーレスな人でした。
プロデューサーとしても活動していて80年代にはこういうバンドもプロデュース。
そして何より特筆したいのがカセットによる録音。これが素晴らしいんですよ。録音場所の空間がよくわかるし何より音が良い。音の伸びもあるしふくよかな音なんです。カセットでなぜこんな録音ができるのか、来日した時聞いておけばよかったと後悔しています。盟友でもあるデヴィッド・トゥープも前述の49Americansでカセットによる録音を行っています。これはまだ簡単に聴けるので一度聴いてみて下さい。
最後に彼の現在も続いているバンド、オルタレイションズの去年のライヴを。
ここで前回のお詫びを。ミッシェル・ヴァイスヴィッツのアルバムCracle!がcracle boxだけで作られているように書きましたが正確にはCracle synthも使ってます。これもヴァイスヴィッツの創作楽器です。誤解を招く書き方ですみませんでした。Cracle synth の動画です。
F.M.N.石橋
:レーベル、企画を行うF.M.N.SoundFactory主宰。個人として78年頃より企画を始める。82~88年まで京大西部講堂に居住。KBS京都の「大友良英jamjamラジオ」に特殊音楽紹介家として準レギュラーで出演中。ラジオ同様ここでもちょっと変わった面白い音楽を紹介していきます。