外の号外 vol.3

あけましておめでとうございます。今回は「外」を運営するバンド空間現代でドラムを叩いております山田が投稿します。2016年にオープンした「外」にとって2度目の新年を迎えました。今年も精力的にイベントを開催していきますので、皆さまどうぞよろしくお願いします。通常このコラムではライブハウス「外」のイベントレポートと今後のイベント情報を掲載していますが、今回は空間現代が昨年末に敢行した欧州ツアーについても書いてみようと思います。

《欧州ツアーのこと》

空間現代にとって2度目となる欧州ツアーは、詩人の吉増剛造さんと空間現代のコラボレーションを軸にしたツアーでした。フランス-イギリス-スイス-フランスと周り、その中で「吉増剛造×空間現代」として4本、空間現代単体で2本のライブを行ってきました。

                   「吉増剛造×空間現代」ジュネーブ公演

そもそも空間現代の欧州ツアーについて書くというのは、このコラムとは趣旨が異なります。しかし今回のツアーでバンドとして貴重な経験を積めたことはもちろん、ライブハウスを運営している者としても欧州の様々なライブハウスの様子を目の当たりにして感じることが沢山あったので、「外」のコラムに書いてしまおうと。またこのツアーを実現させるにあたって「外」に出演してくれた様々なアーティストたちの強力なサポートがあり、「外」を運営してきたことで生まれる循環のようなものも感じられたので、もう「外」のコラムにぴったりじゃないか!と思った次第です。続けます。

ツアーを周ってみて驚いたのは、どの国どの会場でも出演者及びスタッフへのホスピタリティがとても手厚いことでした。欧州ではイベントの開催時間が20時を回ることは普通で、日本と比べるととても遅いのですが、店をオープンする前に出演者と現地スタッフで一緒に夕食を食べます。ご存知ない方も多いと思いますが、これは日本のライブハウスではなかなか見ない状況です。日本では夕方に出演者が会場入りしてリハーサルをやり、本番前に「ちょっとメシでも食いに行くか〜」と言って出掛けるのがほとんど。もちろんその文化も楽しいのですが、スタッフを含めたみんなで夕食を食べて何となく結束が固くなるのも事実で、とても豊かな時間を過ごすことができました。そしてその時間が、その後のパフォーマンスに確実に影響を与えることも実感し、「外」も出演アーティストへの対応をもっと向上させていこうと強く思いました。

また最も感心したのは、2016年の欧州ツアーでも感じたことですが、空間現代のような海外ではまだまだ知名度が高くないアーティストのライブでもしっかりとお客さんが来てくれるということ。どの会場も満員とはいかないまでも、それに近い数のお客さんが集まってくれました。これは推測するに、お客さんが「そのライブハウスがブッキングしたアーティストだから面白いだろう」という信頼をもとにそこへ集まってくるということだと思います。当たり前と言えば当たり前の話ですが、日本ではこれがなかなか難しい。「外」でも、日本での知名度は低くても面白い音楽を発表している海外アーティストのイベントを開催していますが、集客は正直言って苦労することが多いです。今回感じたその信頼を「外」が獲得できていないのだろうと反省しましたが、一方で自分が観客だった時を考えてみても、あのライブハウスのイベントなら知らないアーティストだけど面白いのだろうという感覚はほとんど持ったことがありません。日本でその信頼を獲得するのは、あらゆる面でとても難しいことであるのは間違いないのですが、欧州でその様を目の当たりにした以上、こうゆう状況を生み出せるようにならないといけないな!と。精進します。

ということで来月から外で開催される大型イベントのお知らせを。

《イベントスケジュール》

「外」では2〜3月にかけて、『空間現代 COLLABORATIONS 2018』を開催します。空間現代は様々なアーティストとのコラボレーションを積極的に行ってきましたが、その中でもより先鋭的な方々を外に招いたコラボレーションイベントを開催します。

第1弾は演劇界でも独特な存在感を放つ鬼才・飴屋法水を迎えます。飴屋さんとは空間現代の1stアルバムレコ発イベントでパフォーマンスを披露してもらって以来、ちょこちょこと共演していますが、がっつりと一緒に作品を作り発表するのは今回が初めて。小島信夫の小説『馬』のテキストを使用した作品ですが、演劇なのか音楽なのかどちらでもないのか、名付けることが難しいパフォーマンスになるのは間違いないと思います。予約は既に受付終了となってしまいましたが、当日券は若干数販売する予定です。
http://soto-kyoto.jp/event/180202-05/

3月には上述した吉増剛造×空間現代のツアー凱旋公演。そして昨年4月に開催され大好評だったパフォーマンス集団contact Gonzoとのコラボレーションも。こちらは今のところどのような形になるのか全く予想がついていませんが、次回のコラムで詳しく紹介できればと思っています。どの公演もジャンルを横断し全く新しい感覚をもたらすパフォーマンスになるでしょう。普段「外」に来てくださるような音楽リスナーの方も、また舞台芸術に興味がある方も、何か新しい刺激を求めている方も、あらゆる人に観ていただきたい一大イベントです。是非ご参集ください!

山田英晶(空間現代)