特殊音楽の世界4 「ちょっと変わった女性ヴォーカル」
- 2018.02.27
- COLUMN FROM VISITOR
- キャシー・バーベリアン, シェリー・ハーシュ, ディアマンダ・ギャラス, 吉田アミ
人の声というのは大きな可能性を秘めていると思います。今回はいろんなアプローチで、人の声の持つ可能性を拡げている魅力的な女性たちを紹介します。
まずはこの動画を。
ディアマンダ・ギャラスです。恐いですね。見た通りの人で、気に入らない質問をしたインタビューワーの腹にいきなり前蹴りを食らわせたこともあるくらいエキセントリックな人みたいです。でも社会的メッセージの強いテーマを取り上げることも多く、レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズとロック・アルバムも出したりしています。
もう一つ、彼女のピアノの弾き語りを。
数多くの人がカバーしている名曲I put a spell on youです。オリジナル歌手のスクリーミン・ジェイ・ホーキンスは棺桶から登場したり衣装に凝ったりの多少演出過多気味で怖さを醸し出していましたが(本当はちょっと笑えます。)、彼女の歌はそういうギミック一切無しで本当に呪われそうな迫力に満ちています。
恐いのが続いたんで、次はこれで緩んで下さい。
現代音楽の大作曲のルチアーノ・ベリオの奥さんでもあったキャシー・バーベリアンのstripsodyです。
見ての通りコミックの擬音や一場面を楽譜に表し、それを声だけで表現しています。この曲は実はいろんな人がやっているんですが、バーベリアンの持つ軽いユーモアと強烈な表現力に敵う人はいません。
次はシェリー・ハーシュを。少し前の動画ですが。
ヴォーカルとヴォイスの境界を自由に行き来し、溢れるスピード感と超絶テクニックを持ち合わせる彼女は内橋和久とも2枚のデュオ・アルバムを発表しています。どちらもとても美しいアルバムなのでお勧めします。
次はパフォーマーやサブカル研究家としても知られている吉田アミのハウリング・ヴォイス。
彼女がこういうヴォイスをやることは現在少なくなっているようですが、声の持つ可能性ということで言えば彼女ほどその可能性を拡げた人はいないんじゃないかな、と思います。
実は弊社からリリースした彼女とsachiko Mとの「cosomos」とユタ・カワサキとの「astoro twin」のダブルアルバムが評価され、二つのバンドは世界のデジタル・アート界での最大フェス、アルス・エレクトロニカの2003年デジタル・ミュージック部門でゴールデン・ニカ賞(金賞)を受賞しています。しかしデジタル・ミュージックじゃないのにいいのか?
ここで前回の訂正を。前回、ポップ・グループの1stシングルにトリスタン・ホイジンガーが参加、と書きましたが2ndシングルのwe are prostitutesの間違いでした。思い込みはいけませんね。深くお詫びして訂正させていただきます。
F.M.N.石橋
:レーベル、企画を行うF.M.N.SoundFactory主宰。個人として78年頃より企画を始める。82~88年まで京大西部講堂に居住。KBS京都の「大友良英jamjamラジオ」に特殊音楽紹介家として準レギュラーで出演中。ラジオ同様ここでもちょっと変わった面白い音楽を紹介していきます。