第5回 プリーズ・キル・ミー -Garageland-Books-レッグス・マクニール-ジリアン・マッケイン(著)
- 2018.03.29
- COLUMN FROM VISITOR
- ナチ, プリーズ・キル・ミー, ブリッツクリーグ・バップ, ラモーンズ, 町山智浩
前回、映画評論家の町山智浩さんとトーク・ショーをすると告知させてもらったんですが、ロフト・プラス・ウェストで160人というソールド・アウトのお客さんの前で、ダダ滑りをしまして、大変な大恥をかいてしまいました。町山さんの貴重なお話を聞きに来たお客さんにはもうしわけないと思ったのですが、あまりにもイラッとしてしまいました。どうしてかというと僕の音楽の話を全く信じない。別に僕の音楽の話なんかどうでもいいんですけど、話の転がりとして、そういう雑談から、映画の話に持って行こうと思うのですが、全部僕の話を否定されまして、全然話がころがらない、ということで、これは町山さんに僕の音楽人生がどういうものだったか、語らないといけないと三時間ノン・ストップで自分の話をしまくってしまったというわけです。
もともと町山さんの音楽についての知識はむちゃくちゃというのは知っていたので、それはいいんですけど、そんな人に俺の音楽ネタが嘘だろと言われる続けるのはどうかなと思ったのです。
まず良い例として、BSで放送されたこの番組を見てください。町山さんがラモーンズのことを語っているんですけど、全部微妙に間違ってます。1分20秒の所からご覧ください。
町山さん「すごいお墓があります。ギター持ってますね。SGモデルかな。これはジョニー・ラモーンですよ。ジョニー・ラモーンはボーカルと仲が悪かったんですよ。その原因はこのジョニー・ラモーンがナチス・ドイツが大好きで、それが嫌だったと言われてますね。彼が歌った「ブリッツクリーグ・バップ」はナチス・ドイツの電撃作戦のことですね。戦車と飛行機で一気に近くの国を占領してしまうことを歌ってしまうので、非常にナチ好きのロッカーで有名なんですが。」
ジョニーはゴリゴリの共和党支持者ですが、ナチ好きだったことは一度もありません。もしラモーンズのメンバーで唯一ナチ好きがいるとしたらそれはディー・ディー・ラモーンです。なんでそんなことになったかというと、彼は子供の頃、ドイツに住んでいて、みんなからイジメられて、ドイツ人が嫌いになったのです。それで、友達もいなく一人寂しく家の裏庭を掘っていたら、ナチの遺品がどんどん出てきて、家族の人からも怒られる、ドイツ人も目をそらすそれらをコレクションしだしたのです。そして、大人になって倒錯の気があった彼はそれを使って、ラモーンズのあの有名なロゴをデザインしたゲイのアートゥロ・ベガとナチ・プレイ『愛の嵐』をやっていたのです。男二人で何してるんですかね。ラモーンズにナチシンパのメンバーはいない。
ジョニーの持っているギターはSGじゃなくって、モズライト、なんでモズライトを持っているかというと、MC5のギターリスト、後にパティ・スミスと結婚したフレッド・スミスを尊敬しているから。ジョニーはモズライトの前はリッケンバッカーを弾いていたんだけど、それもフレッド・スミスが弾いていたから。
「ブリッツクリーグ・バップ」はナチの電撃作戦の名前を使っているけど、ナチのことは一切歌っていなく、どういう歌かというと、悪ガキたちがバスの後ろに陣取って、前に座っているイジメられっ子たち(もちろんこれがラモーンズ)を電撃作戦で襲撃するという歌。
当時ヨーロッパではどんなことであれナチのことを語ることはよくないと思われていたので、ナチの電撃作戦を曲のタイトルに使うというのは不良少年、少女たちにはカッコいいなと思われていた。だからセックス・ピストルズの追っかけたちは自分たちのことをナチの親衛隊の名前に引っ掛けてブロムリー(自分たちが住んでいる場所)・コンティンジェント(ナチの親衛隊)と呼んだのです。この親衛隊にいたのが、のちにスージー・アンド・ザ・バンシーズを結成するスージー・スーとスティーヴ・セブリンやレフトフィールドのニール・バーンズだ。
ちなみにラモーンズが「ブリッツクリーグ・バップ」という曲を考えたのは多分スィートの「ザ・ボールルーム・ブリッツ」からヒントを得たのでしょう。ブリッツはイナズマという意味で電撃作戦とリンクしている。これはどういう歌かというとダンス・ホールの壁に佇む綺麗な子を電撃作戦のように誘いたいなという歌。日本だとこう言う風習はないですが、外国だと女の子たちは壁に持たれて、男の子たちからダンスに誘われれるのを待っているのです。映画でよく見たでしょう。今はもうこんなスタイル外国でもないですけどね。80年代までのスタイルですね。いまだと、男も女もエクスタシーやって、まず踊るというのが基本スタイルです。壁に持たれて声をかけられる女の子がいるのかどうなのか、もしいたとしたら、それは基本ヤバイ子ですよ。声をかけると絶対事故ります。
町山さんは本当にいろんなことを知っていて尊敬しているのですが、音楽に関してこんなに変な記憶違いをしていると、映画のことも実は色々間違っているんじゃないかと思えてしまったんですよね。で、もうあんたの話なんかききたくないよと思ってしまったのです。
僕の音楽の話は突拍子もないと言われますが、皆さん、「プリーズ・キル・ミー」という本を読んでみてください。プレ・パンク、パンクのことを当事者たちが語ったオーラル・ヒストリーなんですが、僕の話は全部ここに書いてあることです。
ちなみにもしナチ・シンパのミュージシャンがいるとしたら、それはストゥジーズのギターリストのロン・アシュトンです。その辺のこともこの本には出てきます。多分、町山さんはジョニー・ラモーンとロン・アシュトンを混同しているんでしょう。
後この本では、ベルリン時代のデヴィッド・ボウイとイギー・ポップもナチごっこをしていて「むかつく」とデヴィッド・ボウイの奥さんでユダヤ人のアンジーが語っています。
パンク好きだったら絶対読まなければならない本は「プリーズ・キル・ミー」です。これは僕らの聖書ですから。
『プリーズ・キル・ミー』アマゾンで9万8千7百8十円です。英語版で読めばいいと思います。英語版だと2千円くらいで買えると思います。キンドルだったら千円で手に入るんじゃないでしょうか。口頭の英語なんで簡単に読めると思います。英語の勉強に最適だと思いますよ。僕もこんな本を読みながら英語を勉強していきました。わからない単語は調べすにどんどん飛ばしながら読んでいってください。だんだん理解出来るようになると思います。そして、2回目読み返す時に調べながら読むのがいいと思います。こう言う事だったのかと理解できたりするのが楽しくなりますよ。