カレー屋店主の辛い呟き Vol.9 「 チリー・ゴンザレスって知ってるよね?」

大阪・上本町のカレー屋兼飲み屋店主の”ふぁにあ”と申します。

いきなり夏SONG貼り付けてみました。(Nujabes/AfterHanabi)好きなんですよ。この曲。夏だなと日本人の僕は思うのですが、国が違うとHAPPY NEW YEAR!!!!だったりするのですね。花火が打ちあがるシチュエーションが違うワケで。でも夏だよね?この曲。まあ、どうでもいい話…。

しかし暑いデス。

この暑い最中ミナサマはいかがお過ごしですか?

2機あるクーラーのひとつが死亡したままの当店。残り一台の生命力と中古の冷風機、そして入り口のビニールドアに、この夏の運命を預け営業を続ける毎日でございます。

そして、店主たる私といえば、すっかりワールドカップも終わってしまいロス状態。日本代表がKOされたベルギー戦。最後のベルギーのカウンター。その選手達の強烈なランニングを見てしまった瞬間感じた寒気。斬られる前の絶望感と、美しいものを見た恍惚。クロアチアのモドリッチ&ラキティッチの留める蹴るの基礎技術の高さと気迫。フランスのエムペパのなんか見たらいけないものを見た感じの化け物的速さ。云々….。はー。名シーンいろいろあるよな。一生話せる気がします。

そんな話をしたいあなたはお店にドゾ。

先ほど書いたように竹槍並の装備で夏に立ち向かってる当店ですが、意外と涼しいとの評判もいただいておりますので。

さてさて、唐突ですが、この文章をお読みの皆様はチリー・ゴンザレスって音楽家ご存知なのでしょうか?その彼のドキュメンタリー映画がこの秋に日本で公開されるという話を聞きまして、少し興奮しながらお店で何人かのお客さんに話をしてみたところ、そもそもチリー・ゴンザレスって誰?というお客さんがほとんど。意外と知られてないんですかね?どうなんだろ?

ちなみに、そのドキュメンタリー映画「SHUT UP AND PLAY THE PIANO」(原題)は、9/29よりシネクイント他で全国順次公開していくようです。

その映画の内容ですが、紹介文をお借りすると、”圧倒的に強烈なキャラクターとジャンルにとらわれない音楽性で、その破天荒な生き様と、繊細で感動的な音楽の魅力に迫るドキュメンタリー””フィリップ・ジェディッケ監督による本作は、1990年代後半以降、カナダからドイツへ渡ったゴンザレスの挑発的で破天荒な生き様と狂気とも呼ばれる言動、そして、対照的に繊細で美しいピアノ演奏に迫る。ダフト・パンクジャービス・コッカーらとの共演や、ウィーン放送交響楽団とのステージでのパフォーマンスも収録したエンタテインメント作。プレミア上映されたベルリン国際映画祭でも高い評価を得た。” 云々。

有名どころではビョークやダフトパンクなどの多くの有名アーティストから熱狂的支持を集めるピアニスト・作曲家・ミュージシャンetcのチリー・ゴンザレス。もっと知ってもらいたいなと思った訳です。はい。

彼は過去に、クラシックからジャズ。ポップスからエレクトロ、ヒップホップまで幅広い音楽性の作品を発表していて、時には27時間連続でピアノをステージで引き続けるというギネス記録(意味が分からない…w)を持っていたりします。その言動や、行動を含めて一言でいうと、なんてーか「ギリギリ」の人?なのかもしれません。まぁ。だからこそドキュメンタリー映画になるわけなんでしょうけど。

僕が彼のことを知ったのはipodのCMに採用された超有名曲。「Feist」の 「1234」でした。

この曲ではプロデュースを担当していて、Feistというアーティスト共々気になり、いろいろと掘っていくと彼はピアニストとして相当有名な人だってこと、そのキャラクターの濃さというか、奇人!wってことが分かってきました。そして、その魅力もです。

例えば、2012年リリースのピアノソロのアルバム「SOLO PIANO II」から「Kenaston」という曲。彼のピアノ曲はよくサティやラヴェルなんかが引き合いに出されたりするのですが、この曲もそんな引き合い通りのホント美しさ。

かと思えばカナダ出身のエレクトロプロジェクトであるピーチズやファイストとのライブでは歌やラップを披露したり。

過去の特定のジャンルやシーンに収まらない彼の活動は、何かと話題を呼んできた訳ですが、この活動の幅の広さが、逆に彼の個性を引き立たして見えるのですね。そして、「ちょっとやってみました的」仕上がりじゃなくて、きちんと落とし込んで彼の楽曲になっているのが流石なトコ。

例えば、これもipadのCMに使われていた彼のRap曲「NeverStop」

→ちゃんとipad使ってるw いいLIVEです。

「NeverStop」でコンビを組んだ、エレクトロユニットのボーイズノイズと組んだユニット「Octave One」では2014年に名曲揃いのアルバムなんかもリリース。

いずれの楽曲も彼の音楽の重要な要素になる「ハーモニー」というキーワードが浮かんでくるエモーショナルな仕上がりになっています。

彼はあるインタビューで語っているのですが、

「ある時期、ハーモニーの役割は違う要素で補われるようになった。特にサウンドが目立ち、さらにハーモニーよりサウンドの方がストーリーを作ることができたからだ」

「でもいまは状況が変化して、ハーモニーへの関心が高まっているこの傾向をとても喜ばしく思っている。もしハーモニーが衰退していなければ、もしかしたら僕の音楽はここまで来ることはなかったかもしれない」

ダフト・パンクやドレイクがスタジオに呼んでくれた時、僕はコードについて考えるようにしていた。おそらくアーティスト達はコードへのつながりを求めていると思う。だってコードは、たくさんの感情を生み出してくれるからね。感情を引き出すコードを求めているんだ。でも僕みたいにコードを使って感情を引き出せる人はマイノリティーのようだ。とてもラッキーなことにね」

いろいろな動画やインタビューで彼は「ハーモニー」という言葉をよく使います。感情を音で表現することに忠実で、いろいろな感情を引き出される彼の生み出すコードが彼の魔法の最大のタネだと思います。

そしてもうひとつ、僕が共感を持っている発言があって、これもインタビューからの引用ですが

「僕は、ヒップホップとはカルチャーと考え、ラップは音楽のスタイルと捉えている。だからこそヒップホップとラップを分けることがとても重要だと考えているんだ。当時(ラップ・アルバム『Gonzales Über Alles』『The Entertainist』をリリースした2000年)は、新しい音楽の表現方法を模索している時で、ヒップホップ・カルチャーに自分が合わないと感じた。だからこそ、インスピレーションをくれたラップを手がける時は、そのカルチャーの一部に飲み込まれないように気をつけてきた。僕はひとつのスタイルにこだわらず、いろいろな音楽スタイルを楽しみたい。エレクトロニック・ミュージックやクラシックなどのカルチャーにも傾倒せず、その一部にもならないということだね」という発言があります。

ひとつのカルチャーに傾倒することもすごく楽しいことですが、そのカルチャーが合わないから音楽ごと聴かないってもったいないなと思うわけです。

少しは彼の魅力伝わりましたかね?

ウチの店なんかで、彼のこと一緒に語れる人が増えたらいいなーと。また、僕の知らない音楽の魅力を熱く語ってくれるお客さんが増えたらいいなと。店のカウンターでお客さんを待ちながら、ぼんやり考えたりしてます。

しかし、熱い。

そしてヒマだ…。