THROAT RECORDS通信 Vol.4 「今日も奈良は暑いです。」
- 2018.08.05
- NARA
みなさんいかがお過ごしでしょうか。この夏は全国的に記録的な猛暑が続いているようです。
奈良は盆地なので元々夏は暑く冬は寒い土地なんですが、この夏の暑さは今までに体験したことのない暑さです。レコードショップに出勤さえすればエ アコンの冷房でどうにかなるのですが、自宅から店までの自転車通勤(ほんの10分くらいのものですが)で毎日仕事をする前から汗でTシャツがビ ショビショです。こう暑いとただでさえ来客の少ない真冬と真夏の期間、泣き面に蜂というかなんというか店頭で汗と一緒に涙も出てきそうになってい る毎日です。
ウチの店では中古レコードやCD(と少しの新品商品)の店頭販売の他にレーベルでリリースした作品とグッズのオンラインショップもやっています。 THROAT RECORDS実店舗を作ったのが2012年の11月でオンラインショップを始めたのが2015年の7月でした。店を作った当初は出来ればお客さんに実際 に店に足を運んでもらって顔の見える接客が出来ればと思い、店頭販売のみでオンラインショップはやらずにいました。しかし実際に店を始めてみる と、実店舗の売り上げだけで店を維持していくのは難しそうな感触もあり、ある程度の在庫数を持つことが出来る自社商品のみ取り扱うオンライン ショップを立ち上げることにしました。今ではオンラインショップの売り上げの方が店舗売り上げを上回る月もあります。
新しく出た音源やグッズなど、その度に注文してくださる常連さんもいます。顔や年齢などはまったくわかりませんし、常連さんという呼び方が適切か どうかもわかりませんが、同じ名前でオーダーを頂くたびにどんなお客さんなのかというようなことを想像したりしています。
自分の場合、そもそも店を始めた動機というかきっかけが世にある他のレコードショップのオーナーの方々とは少し違います。店もレーベルもそうです がそういう呼び方で呼んでいるだけの容れ物のようなもので、それぞれ自分の作ったものを届ける手段として必要だったという感じです。そんな感じな のでどれだけ売るかももちろん大事なことなんですが、どのように売るかということがまず最初に考えないといけないテーマでした。その考えは今でも 変わっていませんし、その流れを補強するため(うまい言い方が思いつきませんでした)に他の商品もある程度選別して取り扱いさせてもらっていま す。
プロのレコード屋や第一線のレーベルオーナーは誰にでも出来るような仕事ではありません。このご時世、余計にそう思うのかもしれませんが厳しい世 界です。そういった職業の方々に会うと今でもまったく頭が上がりませんし、自分が同じようにそれを職業に出来ていると思ったこともありません。片手間で出来るような仕事ではないことを店をやってみて毎日実感しています。
ただ伝えるためのプロセスのことは誰よりも考えているつもりではいます。店頭に立って接客することでの思わぬ発見や新しい出会いも沢山あります。 それが自分の作るものに還元されていっている実感もあります。そういった想いもあり、少々イレギュラーなやり方ではありますが店やレーベルはこれ からも続けていこうと思っています。対面の接客でしか出来ないことや伝わらないものというが間違いなくありますが、同じような気持ちでオンライン ショップからのオーダにも対応させてもらっているつもりです。お金がないと生きていけないのでそれだけの話ではもちろんありませんが、自分にとっ てこの店でレコードやCD売ることと伝えることはほぼ同義だと思っています。
自分も毎日サブスクリプションサービスで音楽を聴いて、オンラインショップでたくさん買い物をしますが、行きたくなる店や会いたい人の数が減った ということはありません。むしろ増えたくらいです。音楽の世界はどんどん可能性のある方へ開かれていっているのではないでしょうか。
例えば誰かに好きだと伝えるために、直接言葉で言うことが出来ます。他にも電話で伝えたり、手紙に書いて送ることだって出来ます。好きだと思った 気持ちを相手に伝えるために選ばれたどの方法にも正解不正解はありません。相手の表情を確かめながら口にする言葉も、今すぐ伝えるための電話も、 形にして残すことが出来る手紙も、それぞれにその想いが宿ります。
そのプロセスに向き合うための自分の店やレーベルでありたいものだと、猛暑で誰も来ない、暇過ぎてどうしようもない店の片隅でこの文章を書きまし た。こんな愚痴みたいなコラムも多分いつかどこかで実を結ぶんじゃないでしょうか。これはこれで、何かを伝えるためのプロセスの途中だという気が してます。
今日も奈良は暑いです。