特殊音楽の世界10「変わったヴォーカル男性編」
- 2018.09.02
- COLUMN FROM VISITOR
- カント・ア・テノーレ, デヴィッド・モス, デメトリオ・ストラトス, フィル・ミントン, ロジャー・ターナー, 山川冬樹, 山本精一, 巻上公一
以前ちょっと変わった女性ヴォーカルの特集をしましたが、今回は男性編です。
変わった男性ヴォーカルといえばまずはこの人、デメトリオ・ストラトス。
イタリアのバンドAREAのヴォーカルでしたが79年に亡くなっています。古い人ですみません。でもこのドキュメンタリーを(飛ばして観てもらって構いません)観てもわかるようにバンド活動と並行してソロでもヴォイスの持つあらゆる可能性を拡げていました。
AREAの動画も貼っておきましょう。たとえロック・バンドであろうとも声の持つ可能性の追求の姿勢は変わりませんでした。
デメトリオ・ストラトスも多用している、ホーミーやホーメイといった二声三声を同時に出せる倍音唱法というものを日本で一般化した一番の貢献者といえば、ヒカシューの巻上公一です。この動画では倍音唱法—喉歌(のどうた、Throat-singing、Overtone-singing)はあまりやっていませんが、演劇的にも思えるその多彩な表現力は世界的に見ても唯一のものだと思います。
そしてもう一人、日本で倍音唱法といえば忘れてはいけない人が山川冬樹。
これを見てわかるようにライトは心臓の鼓動とリンクしています。自らの心臓の動きをもコントロールする圧巻のパフォーマンスです。
ホーミーのような喉歌の元はモンゴルが有名ですが昔から世界のいたるところにあるようです。
たとえば地中海イタリア・サルデーニャ島のカント・ア・テノーレ。リンクは貼りませんが一度検索して観てください。おっさん4人が、もし口臭きつかったらたまらんだろうというくらい接近しあって見事な喉歌をやってます。
ホーミーのような喉声は、地元の人達にとってはずっと昔から慣れ親しんできた特殊でも何でもない伝統的な唱法だったということだと思います。ですから声の可能性を追求する人達が喉歌を見いだし、それに取り組むのは極々自然なことかもしれません。
最後に欧米のインプロ・シーンでヴォイスといえば忘れてはいけない人を二人。
まず超ベテランのフィル・ミントン。
特殊な唱法を駆使するわけではありませんがありとあらゆる発声方法を使い、声を一つの楽器として見なしているように思えます。ちなみにこの動画で一緒にやっているドラムのロジャー・ターナーは今秋来日予定で、京都では10月27日にアバンギルドで山本精一と共演します。
そしてもう一人、前回でも紹介しましたがデヴィッド・モス。
元々ドラマーでしたが最近はヴォイス・パフォーマンスを主にやっているようです。ドラマーでもあることを頭において聴いてみると前述のフィル・ミントンとの違いがわかるような気がします。
今回はインプロ系に限定しましたが、変わったヴォーカル、ヴォイスの人はあらゆるジャンルに存在しています。また機会があればそういう人たちも紹介しようと思います。
F.M.N.石橋
:レーベル、企画を行うF.M.N.SoundFactory主宰。個人として78年頃より企画を始める。82~88年まで京大西部講堂に居住。KBS京都の「大友良英jamjamラジオ」に特殊音楽紹介家として準レギュラーで出演中。ラジオ同様ここでもちょっと変わった面白い音楽を紹介していきます。
(文中敬称略)