音楽っていいよね。せっかくならお気に入りの容れ物に大切にしまっておきたい。

今年の夏は例年に比べて猛暑日が多く、毎日そこかしこで暑い暑いという文字を見かけたり言葉に出していたような気がします。盆地で夏の暑さの厳し い奈良の夏も、やっと終わっていく気配が朝夕から感じられるようになってきました。皆さんの暮らす街の夏はどんな塩梅でしょうか?

奈良のことについて書くように依頼されたコラムではあるのですが、そう毎度奈良の事ばかり書くテーマもネタが無くなりそうで、今回はここ奈良を拠点に自分のやっているレーベル兼実店舗のTHROAT RECORDSについて少し書かせてもらおうかなと思います。

というのも最近の話なんですが、東京で活動するRopesというユニットの新曲が2曲ネット経由で配信になりました。このRopes前作のフルアルバムとその更に前作のミニアルバムが私の主宰するTHROAT RECORDSからリリースされております。両作品共にCDとレコードでフィジカル音源の販売を手伝わせてもらったのですが、今回の新曲に関してはアーティストから直接リスナーの皆さんに音源データが配信されたということで特にレーベルとしては関わっていないという感じです。Apple MusicやSpotifyなんかで聴くことが出来ますので機会があれば是非チェックしてもらえたら嬉しいです。個人的にも1曲yumeという曲にコーラ スでも参加せてもらいました。

そもそものTHROAT RECORDSの始まりは自分のやっているLOSTAGEというバンドの作品をリリースするために立ち上げたもので、作った当初は誰か他のアーティストの 作品をリリースすることを考えてはいませんでした。今も人気の出そうな新人を探してリリースするとかそういったことは考えてませんし、たまたま縁のあった友人の作品作りを自分の出来る範囲で手伝っているくらいの感覚です。

個人的な思いですが自分がレーベルを立ち上げた時に考えた、自分のことは自分でやれることはやるのが一番いいというスタンスがあるので、レーベルでリリースを手伝ったアーティストの活動に関しても最終的には自分たちで音楽を作って自分たちで届けたい場所に届けることが出来るようになるというのが理想だと思っています。

音楽を入れる容れ物に値段を付けてそれを仕事にするという一面がある一方で自分も音楽を作って表現をする立場でもあるので、所謂職業がレーベルやレコード会社の方、マネージャーやディレクターの方たちとは根本的に考え方が違うかもしれません。

Ropesの配信リリースがだけがきっかけというわけではないですが、最近音楽の容れ物について考えることが増えました。

レーベルというのもレコードショップというのも大きな括りで言えば音楽の容れ物であり、そしてCDやレコードにネット配信というのもリスナーにそれを届けるための音楽の容れ物であるわけです。その容れ物の形がこの10年20年で急速に変化して、それにどうやって対応していくかっていうのが音楽に関わる人たちの間でよく話題になっているような気がします。

つい先日も深夜に酔っ払ってTwitterに音楽の容れ物のことばかり考えている頭デッカチな人が増えてしまった、もっと音楽の話をしたいと愚痴のようなことを呟いていました。翌朝起きて素面でそれを確認してとても恥ずかしかったのですが、こぼれ落ちた本音だったと思います。そして誰よりも音楽それ自体の話から逸れた、容れ物の話ばかりしていたのは自分だったことに今更気付いて反省しているところです。

音楽やそれ以外の表現にもいえることかもしれませんが、伝達方法の多様化やそのスピード感が日々目まぐるしく変化していく中でそれが生まれた一番最初、始まりの部分のことを改めて考えることが必要な時期がきてるのかもしれません。

何か大袈裟な話をしてるような気もしますが、結局は音楽っていいよねっていう話です。せっかくならお気に入りの容れ物に大切にしまっておきたいなと、そんなことを考えながら奈良のTHROAT RECORDSでは中古レコードを洗浄したり、中古CDを研磨したりする日々を送ってます。