気分はどうだい? Vol .13 「今、 ” ラヂオ “ の音楽番組が・・」
今、また”ラヂオ”の音楽番組が面白い。いつも何かのおりに触れ、神戸のラジオ関西で全曲アナログ・レコードを使用した音楽番組のディレクターをしているということを書いているのですが、当初は野球のないシーズンの6ヶ月だけの特番みたいだったのが、なんとこの10月で5年目に突入しました。(もちろん提供してもらってるスポンサーにも感謝なのですが)現役で音楽の仕事をまともにやっていた30代の頃でさえラヂオの番組が続くということは大変なことだったのです。21世紀に入ってまだラヂオか、と思われるかもわかりませんが、アナログ・レコードも5年前あたりは中古市場を除けばほとんど市場からは姿を消していたし、アナログ復権の実感の全くない時期でした。CDが依然パッケージ商品として市場では強く、音楽業界内でもまだ主流でした。しかし、音楽を聞くハードとしては淘汰されたカセットテープやMDなどと同じように87年頃から全盛を極めたCDも終焉をむかえる時期でもあったように思います。現在市場からCDを再生するデッキやPCから装置が消えつつあります。商品として60年70年のCDがデジタルリマスタリングされた時、其のウリ文句が「アナログの音に近づけました」ということでしかなかったわけで、結局当時のアナログがいいということになってしまったのです。もちろんジャケットの大きさや重量感なども含まれるのですが。そして最初はいいと思っていたCDの収録時間(いっぱい聞けるから)の長さ、デジタルの音(音がいい幻想)そのものに飽きてきたというか疲れてきたのが本音だと思うのです。2018年現在、世界中でアナログ・レコードが復活、ごく普通にスポティファイなどの音楽ストリーミングサービスと共存、今のパッケージ形態として市場に出てくるようになりました。あれだけ店頭にCDしかなかったタワーレコードさえ売り場には大きなスペースがさかれています。
ラジオ関西レコード室シングル盤の棚。年代別に番号が打たれ、曲をPCにて検索。アルバムは別の部屋に・・
少し前までの音楽リスナーとしての一般人はダウンロードでの音楽を聞くか、日本では依然CDの購買が主流だったとおもいます。しかし、CD全盛の頃のメインリスナーにおいて年令とともに音楽を聞くということがライフスタイルの中からはずれ音楽への関心が無くなってきます。これはいつの時代でも同じで、CDが売れなくなる世代状況と重なるわけです。生で観るライブに関してはスポーツ観戦や映画を見に行く感覚なので古いアーティストでも好きだった連中のコンサートやライブは依然チケット買って観に行くわけで、逆に其の世界はビジネスとしても大きくなっていくことになります。ポール・マッカトニー、ストーンズなどがそうだし、日本で言えばジュリーとかです。しかしライブハウスにおいては動員的にホールでできないプロとプロのように活動する勘違いのアマチュア、そして昔は~~のような連中が混然としている状況が今でも続いているのだと思います。
音楽の聴取スタイルも家でオーディオセットの前でレコードを聞くという人は一部の当時からのオーディオ・ファンぐらいのもので、音楽を聞かせる昔のジャズ喫茶やロック喫茶もなく、音楽を聞くという形態そのものがそれぞれの時代で全く違ったものになってきているのです。現在は街中においてあらゆるところに音(それを音楽というのかどうかですが)が溢れ飽和状態になっていて広告的に言っても差別化もできない、さらにはCMやTVドラマでの音楽も意味がなさなくなってる時代。一般人達がI-podやスマホ等に自分の好きな曲を入れて聞くという79年のあのウォークマンの頃と同じような実に個人的趣向の状態が終わりを告げようとしているのです。少し前までは皆が聞いてる安心の材料としてヒットしている曲、売れている曲を中心に聞いていたわけですが現在は情報源が拡散し過ぎてわからなくなっています。仕事からリタイアした団塊の世代の年寄り達は若い頃に聞いた曲、フォーク・ソングやビートルズ、イーグルスくらいしかわからないし、現在においてもそれしか知らないわけです。現在の音楽ファンと言われる人達の情報はSNS、そしてまずはストリーミングサービスを利用するわけです。CD世代が持っていたCDは中古市場においては100円程度です。現在、目に見える通常の音楽市場においては60年代洋楽ロック商品が50周年記念として数枚組の高額な商品として相次いで発売される一方、今まで主流だったTVや雑誌などの媒体が取り上げなくてもスポティファイで3億回もストリーミングされたり、コンサートにおいても甲子園球場を満杯にするような若い日本のロックバンドが出てくるようになって来ているのです。
先日番組でかけたナット・キング・コールの「枯れ葉」が収録されている1956年(昭和31年)のアルバム「トゥ・イン・ラヴ」・・通し番号がV-1(写真中央)
そんな中、音楽を聞く形態として<AMラジオ>がスポティファイのストリーミングなどと同様に聞かれるようになってきています。若い連中にターゲットを絞りきったり、年寄りを狙ってるわけでもない「音楽」そのものを主体とする番組が面白いわけです。時代のアーカイブとしての音楽番組。開局65年の歴史を持つラジオ関西にはそれら洋楽のアナログ・レコードが財産として所蔵されていたこと、番組でその当時のアナログ・レコードを今もかけているというのが大きな意味を持つのです。<ラジコ>というアプリの登場によりスマホやPCでも全国のラヂオが聞け、再放送も聴けるわけです。全国ネット以外の番組もエリアに関係なく聞かれるようになってきています。最近では村上春樹が自ら喋り選曲している特番が始まったり新たな時代の媒体としてラヂオがいろいろなところで取り上げられています。さらに来年からはAMラジオがワイドFM化されることで新たなリスナーを掴むことにもなるはずです。神戸ラジオ関西の番組も5年が経ち、全国からのリクエスト、お便りが目に見えて多くなったのを実感するとともに、ラヂオを知らなかった若い連中も聞いていることもわかり、なにか次の時代につながる予感がするのです。アナログ・レコードの復権とともに、今また” ラヂオ “による音楽番組の時代が来ようとしているのです。