特殊音楽の世界13「アジアの特殊音楽その2」

1回、間をおきましたが前々回の続きです。

今回はAsian MeetingFestival(以下AMF)のことを少し詳しく書いてみます。

2005年に大友良英が始めたこのフェスティバルは2014年からは「アンサンブル・アジア」の一部門としてシンガポールのユエン・チーワイとDJ sniffがキュレーションに加わり国際交流基金の支援も得て開催されていましたが、去年に援助を切られインディペンデントな活動に戻ったことは前回でも書きました。

詳しくはhttp://asianmusic-network.comを参照下さい。

その AMFですが3つの大きな柱がありました。

その一つはSachiko Mをディレクターとする「Asian sounds research」。ここではアジア各国の、音楽なのかアートなのかも境界不明なアーティストを集め、各地で場所をリサーチしその環境の下で、インスタレーションなのか演奏なのかその領域も不明な「OPEN GATE」という催し(としか言えませんね)をやっていました。これは最初からアーカイブ化も目的にあったので写真集も発売され映像も公開されています。

その一部ですが2015年のマレーシアの映像がこちら。

そして去年の札幌国際芸術祭の一貫で行われたのがこちら。

実はこれ、映像で観るのと実際にその場に居るのでは全く受ける印象が違います。観客であるはずの自分がパフォーマンスや音の一部になる、と言っていいのか観客なのかどうかも曖昧になる不思議な感覚に陥りました。

しかしこのプロジェクトは去年で一旦終了し、しかしまた形を変えて何処かに出現するかもしれない、とのことです。

もう一つは「 Ensembles Asia Orchestra」、いく先々の現地でだれもが参加できるオーケストラを結成して行くプロジェクトです。

年齢にかかわらず誰でも、楽器でなくても音の出るものならなんでも持ち寄って、簡単なサインによって誰でも指揮者になれるこのオーケストラはAMF以外でも大友良英が日本各地で行っているものでもあります。

今年、台湾で行われたオーケストラの映像が、短いですがDJ sniffのツイーターで紹介されています。

https://twitter.com/dj_sniff/status/1038600274657533952

そして前回で紹介したDJ sniffとユエン・チーワイがディレクターを務めるライヴやシンポジウムを通してアジアのアーティストのネットワークを形成していく「 Asian Music Network」。

これについては下手なことを私が書くよりもDJ sniffのこのレポートを読んで下さい。

http://asianmusic-network.com/archive/2017/09/—amf.html

そしてoffshore主宰の山本佳奈子のこのレポートも必読です。

http://asianmusic-network.com/archive/2017/09/—amf.html

この二つを読めば「ネットワーク形成」という微妙な言葉と目標がいかに慎重に扱われ、そして実践されているかわかると思います。そしてAMFが単に日本目線でのアジア先鋭音楽の紹介でもないこともわかると思います。

そしてさらにいうならばそれがなぜ実験音楽と言われるものや即興音楽のもとでなされているかということも想像がつくと思います。

それは言語だけではなく文化習慣の違いやそれによる音楽語法の違いも含め、初対面同士で共演する術をその場で探っていく、それができる場を作ることが容易にできるからではないでしょうか?

ただ場を用意することは簡単であってもその先にある、各々の違いを乗り越えて何か共同の作業を行うことが容易にできるとは言いません。難しいことだとは思います。

自分の個性と表現を追求しながらも語法の違う相手との協働性を探りつつコミュニケーションをとっていく、それが、何かしらの出来合いの音楽語法に沿うのではない、個々で自分の語法を創造していく即興演奏だからできる部分もあると思うのです。

2人の文章にもあるようにAMFの成果はAMFを離れ新しい広がりを見せて居るようです。

AMFの今後と共にこれからのアジアの音楽に注目していきたいと思います。

 

F.M.N.石橋:レーベル、企画を行うF.M.N.SoundFactory主宰。個人として78年頃より企画を始める。82~88年まで京大西部講堂に居住。KBS京都の「大友良英jamjamラジオ」に特殊音楽紹介家として準レギュラーで出演中。ラジオ同様ここでもちょっと変わった面白い音楽を紹介していきます。

(文中敬称略)