気分はどうだい? Vol .15 <風に吹かれてみたいから….麻田浩とその時代>

2019年に入り最初に読了した本。1月28日にリットーミュージックから発売された「聴かずに死ねるか! 小さな呼び屋 トムス・キャビンの全仕事」麻田 浩 /奥 和宏 (共著)。勿論「麻田浩」の音楽人生の現在に至るまでの波乱万丈の半生を時代順に書き連ねた自伝。麻田さんがプロモーターとしてやられた多くのコンサートの資料などもふんだんに掲載されていて素晴らしい本となっています。共著として関わった奥 和宏さんも大変な作業だったと思います。麻田さんは僕より年代が少し上になるのですが、僕もほぼ同じような音楽的な影響を受けた一人なのです。このコラムでもよく書いているのですが、60年代始めからのアメリカのモダンフォークのコピーから始まり、ドンドン欧米のアーティストにはまっていった僕の音楽変遷と同じ道を日本において先端を切って仕事としてやられたのが麻田浩その人だったのです。それらの内容は本に詳しく出ているので是非読んでほしいと思います。自分の好きなアーティーストを招聘して大きな会場ではなく、見合った会場でコンサートを開く・・そして当時、大阪にいた僕もそんなコンサートに客として参加しました。会場でもよく麻田さんを見かけたものです。トムス・キャビン最初のデヴィット・グリスマン・クインテットの大阪毎日ホールでも終演後楽屋口にメンバーに会いに行ったのですがその横に麻田さんがいたのを覚えています。その後もいくつかのコンサートにも参加。あの今となっては伝説になっているトム・ウェイツのコンサート(大阪は厚生年金会館中ホール)にも行きました。この辺りはトムス・キャビンを始めた頃の話で本中にも出てくるのですが・・・

 

チケット、右上:デヴィット・グリスマン・クインテット / 76年 5.11大阪毎日ホール、下:トム・ウェイツ / 77年1.15大阪厚年中

 

で、実は僕が麻田浩を最初に知ったのはもっと古く、中学生時代のことなのです。中学の頃大阪郊外で洋楽=フォークに目覚めた僕と友人が家でギターを弾き始めた頃、多分ジョーン・バエズの「ドナドナ」をコピーしていた頃、その弾き方を当時PPMフォロワーズというグループにいた小室等さんの教則ソノシートで教わるのですが、その東京の学生グループなどの情報を調べているうちに麻田さん達がやっていたMFQというグループを知ることになります。そして何年か後には黒沢久雄さんのいた<ブロードサイド・フォー>や<森山良子>が僕らが所属していた神戸のフォーク・サークルのゲストで来たりもしたのです。で同じ頃にマイク真木さんの「バラが咲いた」がヒットするわけで、たぶん時代的に東京も大阪も同じような状況だったように思うのです。その後日本におけるアイヴィー・ファッションの流行と共に「メンズクラブ」などに麻田さんなどが登場、そしてVANジャケット、ラングラー、SCENEなどのブランドが学生を中心に若い連中に人気となります。また大阪の友人の間では麻田さんが出演していたTVドラマ<股旅USA>(主演:麻田浩、渡辺篤史、篠ひろ子、テーマソング:フラワートラベリンバンド)若者3人がスバル・レオーネに乗ってアメリカを横断するだけの低予算でセリフも構成もインディーぽい作りだったのですが、ある意味ロードムーヴィーぽい感じが僕らにとっては面白くて結構ハマって毎週観ていました。まーいろいろあるのですがきっかけはこのぐらいで・・

 

で、面白いというか、凄い出会い、縁というのか、僕がその麻田さんの事務所で働くことになるのです・・85年から仕事を東京にシフトしている時、麻田さんが日本のアーティストのマメージメントを本格的にしようとする時期に、何がきっかけかは忘れたのですが麻田さんの事務所で働くことになったのです。社員です。当初からSIONのマネージャーをやっていた今<レスペクトレコード>をやっている高橋くんがいて、僕はデルジベットをメインにあとはマネージャーがいたコレクターズやウイラードの全体的な事を任され約5年ほど一緒に働きました。日本青年館のコレクターズや日比谷野音のウイラードのコンサート制作も、日本コロムビアにレーベルを作ったのもこの頃(当時は麻田事務所という社名で)当初は細野晴臣さんの事務所内からなのですが、僕が入った時に渋谷のエッグマン近くに移転、そしてバンドがそれなりに活動出来るようになると九段、武道館のすぐ近くに事務所を構えることとなります。

 

 

(写真下)麻田さんのシングル盤「風に吹かれてみたいから」、SION自主制作盤「新宿の片隅で」、トムス・キャビン主催コンサート・ポスター(サイン入り)、トニー・ジョー・ホワイトのサイン入CDと当日の音源、左下は平成元年のコステロ(主催はスマッシュ)など

 

まー、ほんとうにいろいろなことがあったのですが、全部書いてもキリがないので、麻田さんのエピソードで印象に残ってる事を。デルジベットが渋谷のエッグマンで色々なバンドが出た何かのトリビュートイベントに出演したのですが、次の日、広島近代美術館でのライブで、このライブが終わり次第広島へ移動しなければならない時、当時事務所が持っていたツアーバスの運転を麻田さん一人で突っ走ったこと・・とか。あとロンドンのデルジベットのレコーディングをフルハルロードにあったジェスロ・タルの<メゾン・ルージュ・スタジオ>でやったのですが、一人で前乗りし、すべての段取りをつけてくれたことなど、麻田さんにとっては普通のことなのかもわかりませんがそのバイタリティーというかパワーは凄いものが有りました。あと、バンド、音楽に関する嗅覚も・・当時の麻田事務所はなくなりましたが、所属していたグループは今現在でも健在でますます頑張っています。そして麻田さんが復活トムス・キャビンとしてやり始めた「聴かずに死ねるか!」のライブシリーズはもちろん現在も続いています。60年代、あの時代から始まった麻田さんの挑戦、冒険、先見性ある考え方、その仕事の実践は多くのプロモーター、音楽関係者に大きな影響を与え現在に至っています。

 

PS :先日、本のキャンペーンで大阪のFM局にゲストで出られた時の一言「僕が死んじゃったらもう書けないからね・・」と。麻田さんのような音楽プロデューサーはこの時代にはもう出てこないと思います。最後まで好きな音楽を、そしてそれを仕事として貫いてほしいと思います。

 

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<聴かずに死ねるか! 小さな呼び屋トムス・キャビンの全仕事>
出版社: リットーミュージック 2,376円(本体2,200円+税)
著者    麻田 浩(著)/奥 和宏(著)
仕様    A5判 / 256ページ
発売日    2019.01.18
https://www.rittor-music.co.jp/product/detail/3117313026/

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