渚のベートーベンズ インタビュー

「新メンバーも加入してフレッシュな状態。やはり全員がソングライターであるというのがテーマなので4人の曲が集まって新しい絵になるようなアルバムを作りたいですね(江添恵介)」

渚のベートーベンズは最近どうしているんだろう? 京都のインディー・ミュージックに興味を持っている方なら、ふとそんな風に思いをはせることもあるのではないかと思う。2年前には台風クラブ、本日休演と共に3マン・ツアーを敢行するなど、新世代京都シーンを支える勢いを見せつけていた彼ら。しかしその後、メンバーの脱退や個人活動などにより、ここ1年ほどは開店休業中のようになっているのが現状だ。
そんな中、4月12日に京都『磔磔』で開催されるシリーズ・イベント《BOTANICAL HOUSE VOL.5》で久々にライヴ活動を再開することになった。『フルーツパーラーミュージック』(2015年)、『OYSTER』(2017年)という2枚のアルバムで、メンバーそれぞれが曲を提供して自らリード・ヴォーカルをとる、というスタイルで多様なポップ・ミュージック・センスを見せつけた彼らだが、新たなステージとも言える今回の復活ライヴはどんなパフォーマンスになるのだろうか。新メンバーとして加入した高木ボラ(狸囃子、無線)が吹き込むフレッシュな息吹にも期待していたい。
今回の公演を前に、普段は西院のライブ・ハウス『ネガポジ』でブッキング・マネージャーなどもつとめている江添恵介にインタビューに答えてもらった。なお、会場である『磔磔』の45周年記念アニバーサリーにあたるタイミングで開催されるこの今回の《BONTANICAL HOUSE》には、この渚のベートーベンズのほかに、昨年、《K.O.G.A.》からアルバムをリリースして話題の同じく京都を拠点とするギター・バンドであるCrispy Camera Club、大阪の3ピース・バンドのはいからはくちも出演する。

渚のベートーベンズ「渚のライオン」

――一昨年に結成時のメンバーの一人、麻生達也さんが脱退しています。そこからバンドとしての活動が徐々に少なくなっていった印象なのですが、まずはその麻生さん脱退後のバンドの状況がどのような感じだったのかから教えてもらえますか?

江添恵介「2017年9月に東名阪で開催したイベント《三面楚歌》(台風クラブ×本日休演×渚のベートーベンズのスリーマン企画)を最後にちょっとゆっくりしようかって事になって、その間メンバーが結婚したり子供出来たり転職したりと色々ありましたが、僕は自転車にハマって時間があればサイクリングに行ってました(笑)」

――ええ、モルグモルマルモのメンバーでもあった、おのしほうさんも京都を離れて今は東京にいます。

江添「そうなんです。しほうが京都を離れたのは2018年からです。しほうも東京で転職もしてかなり多忙だったので昨年は4人で集まれるのは1日ぐらいしかありませんでした。当初はデータのやり取りで曲作りやレコーディングを進めようと考えていたのですが……それも難しかったですね……。でも、西村中毒は西村中毒バンドでの活動していますし、彼は同時にラッキーオールドサンのサポート・メンバーとしても活躍しています。僕も僕でFateh*lia Band(ファテリアバンド)でライヴとかをよくやっていて、最近のそういう個人活動が新しいベートーベンズにどう生かされるかが僕らも楽しみなんです」

――そうやって、『ネガポジ』界隈にいた仲間たちによって結成されたベートーベンズも次のステージに入ったということですね。では、メンバー全員がソングライティングを担当しそれぞれ歌えるというバンド最大の強みはこれからどのように変化していきそうですか?

江添「全員がソングライターであるというテーマは全く変わらないです。方向性はこれから詰めていこうという感じですが、割りとのんびりしていたので、4月12日のライブが決まって背筋がピンと延びた感じです。でも、今はすごくフレッシュな状態なんですよ」

――ええ、狸囃子や無線で活動してきた高木ボラさんが加入していますね。高木さんは京都府立医大出身で、学生の頃から『ネガポジ』界隈で活動していた新しい世代のアーティストですが、彼が加わってからバンドの内部はどのように変化しましたか?

江添「そうなんです。高木が加入したのは2018年の1月あたりです。すごく好奇心旺盛なやつでノビシロもある。僕にはそう見えたんです。それにベートーベンズの音源も愛聴してくれてたので、高木しかいない!と思いましたね。それぞれに曲を提供して合わせるというスタイルは変わらないです。実際新曲はどんどん出来ていってます。しほうがリハーサルになかなか参加出来ないことで、まだ見えない部分もありますが、新編成になって無駄をそぎおとした様な音楽がやりたいと漠然と考えています。それに、まあ、毎回そうなんですがレコーディングしながら方向性が見えてくるところが僕らのいつものやり方。そこに吸い寄せられるように完成へ向かうのが僕らの特徴なんです。目標としては今年中か来年頭にはサード・アルバムを完成させたいですね。遠距離でも進められる方法を試行錯誤しながらモティヴェーションを保っていきたいです。やはり全員がソングライターであるというのがテーマなので4人の曲が集まって新しい絵になるようなアルバムを作りたいです」

――江添さんは現在スタジオ『music studio hanamauii』でエンジニア仕事も多く手がけてますね。ここ1、2年の間に関わられた作品、アーティストなどをおしえてください。

江添「去年ぐらいからその『hanamauii』の宮一敬さんとレコーディング・チームを組んで、宮さんが録音、僕がミックスといった感じで仕事してます。ここ1、2年で言うと、台風クラブ、尾島隆英、西洋彦、ねじ梅タッシと思い出ナンセンス、星の王子さまたち、三好真弘、西島衛、センテンス、IKIMONO、ICHI、タカダスマイル、NICE TO MEET YOU 、Cosmicos、ジャッカルズ、いちやなぎ、裏声で歌え君が代などを手がけています。ほとんどがネガポジでブッキングしてPAしてきたアーティスト達ですね(笑)」

――つまり『ネガポジ』でブッキング・マネージャーとして普段仕事をされていることが、バンド活動にも、それ以外の活動にも広がりをもたせたということですね。結果として、演奏する立場、それをライヴ・ハウスでバックアップする立場、録音をサポートする立場…とあらゆる角度から音楽の現場に関わる京都のキーマンのような存在になってきました。そんな今の江添さんから見て、京都の音楽の動きはどのように見えますか?

江添「『ネガポジ』が西院に移ってから、客層も変わりましたで見え方も少し前と違うんです。丸太町時代は割と変わったバンドが出てるイメージが強かったと思うんですけど、今は色々なバンドが出てくれてると思います。最近は全然他のライブ・ハウスへ遊びに行けてないので何とも言えないですが、最近はクールで賢いバンドマンが増えたなと思いますね。僕らが20代の頃はもっといい意味でも悪い意味でも暑苦しくてアホな奴らが多かった。そういう意味では変化を感じますね。でも、こと『ネガポジ』に関していうと、丸太町で営業していた時代は近隣からの苦情に耐えながら何とかやってきた感じだったので、それを思い返せばそもそもが西院に来て良かったと思ってます。西院に来て一番変わった事はやはり居酒屋としてのポテンシャルを上げた事です。フード・メニューもライブ・ハウスでは有り得ないようなものを出していったり、平日は基本ノーチャージ、とにかく人に来てもらおうという方向性で今はやってます。だから、気軽にどんどん遊びに来てほしいですね!」

BOTANICAL HOUSE Vol.5
~磔磔45周年スペシャル~
出演:渚のベートーベンズ / Crispy Camera Club / はいからはくち

【チケット詳細】
https://smash-jpn.com/live/?id=3097
渚のベートーベンズ Twitter
https://twitter.com/Nagisa_no_Btvs