Crispy Camera Club インタビュー
- 2019.04.01
- KYOTO
- Crispy Camera Club, SWAG, ティンセルタウン/グッバイ・マイフレンド
「聴く人がそれぞれの日常の風景とか景色を思い浮かべられるような歌だったら最高だなと思ってます(ミサト)
Crispy Camera Club「ティンセルタウン」
――初期フリッパーズ・ギターからスピッツまで、主に90年代以降に確立された日本語ポップ・ミュージックとしての王道を感じさせる、ソングライティングの骨格のしっかりとした曲が揃ったアルバム。『SWAG』はそんな力強い手応えを感じさせる作品ですね。曲はどのようにして作り、合わせて完成させているのでしょうか?
ミサト:割と作り方はいろいろで、私が弾き語りで作ってきたものに肉付けしていくこともあれば、まずどんな曲を作ってみたいかみんなで案を出してサウンドから作って、メロディーをつけて、最後に歌詞を乗せるパターンもあります。私的には歌詞を先に書いてからメロディーを乗せるほうが得意なので、弾き語りから作る場合はサウンドから作る場合と順序が真逆だったりもします。アレンジは完全にみんなで考えるんですけど、メンバーみんなルーツが違ったりするのでそれぞれのスパイスが加わって最終的に思いもよらなかった形になることが多くておもしろいです。ルーツが違っても、みんなお互いのアイデアをそれいいやんって思い合えるところがあるので。
――そもそもこのバンドを結成する際、音楽性、ヴィジョンをどのように描いていましたか? 方向性やテーマなどがあったら教えてください。
りんすけ:結成した当初はビジョンとかは何も考えずにスタジオに入って曲作りをしてました。音楽性はメンバー共通して洋楽が好きなのですが好きな年代やジャンルが少しずつ違ったので90’sUKをベースに個々の好みを詰め込んで曲作りをしていってました!個人的にはミサトの作るポップなメロディーや声を邪魔しないようにドラムを叩いてますが、ベースやギターは潰しにかかるくらいめちゃくちゃに動いててそれがうまくバランスを取れてるのかな~とも思ったり。
ミサト:最初はただふたりの好きな音楽を、やりたいことをやってみるって感じで始めたので、方向性とかは何も考えてなかったと思います。こんなバンドになりたいと頭で考えていたというよりは、勝手にこうなってきたという感じです。私は旅とか冒険とかそういう夢見る少年ぽい感覚をずっと持っていたくて、それを連想させる曲が勝手に増えてしまうところがあるので、あえて言うなら今までのテーマはこれでしょうか。その中で、聴く人が恋とも友情とも自由に受け取って聴いてほしいなって思ってます。でもこれから先もっとたくさん影響受けたり感化されたりして変化していけばいいなと思ってます。
――ミサトさんとりんすけさんはもともとリツコで活動されていました。そこからCrispy Camera Clubもスタート……という流れの中で、お二人は音楽に向き合う姿勢、思いはどのように変化しましたか?
ミサト:まずはとりあえず第一に楽しくバンドをしようってとこから始まって、ふたりでスタジオに入り始めましたね。曲も一から作って、リツコとは全く別のことを始めるっていう感覚でした。わたし的には人とのつながりも一から作るぐらいのつもりで、新しい気持ちでCrispy Camera Clubを始めました。今までよりもっと自分らしさを出せる場所にしたいって思ってました。
りんすけ:一応リツコは解散はしてないんで自分達の中では延長線にあるバンドではなくて、休止しちゃったし暇になるし新しくバンドする?って感じではじめました。とにかく気負わず楽しくやろう!(笑)って二人で話してやりたい音楽的に男のメンバーとやりたかったから気があうメンズと出会えてラッキーって感じですかね。昔よりは素直に音楽を楽しんで活動出来てるのでメンバー3人には感謝してます!
――良いうた、良いポップ・ミュージックのイメージはどのようなものとして描いていますか?
ミサト:耳に残るメロディーを大切にしたいとは思っています。わくわくするようなメロディーですかね。限定せず、聴く人がそれぞれの日常の風景とか景色を思い浮かべられるような歌だったら最高だなと思ってます。爽やかだと良く言われるので、それは狙ってそうなったわけではないんですけど、あ、なんかよく聴いたら爽やかなだけじゃないな、捻ってるな、渋いな、みたいな隠し味が伝わればいいなと思ってます。
稲本:僕にとってのポップ・ミュージックの定義は、どんな度合いで音楽が好きな人にも届く間口の広い表現であることです。歌がよくて曲がよくて演奏がいい、それは前提だったりするのですが、Crispy Camera Clubはミサトちゃんという素晴らしいヴォーカリストがいるのが強みでありアイデンティティでもありますね。曲と演奏は努力とアイデアでいくらでもよくできるけど、歌は生まれ持った部分が大きいですし。ただ、歌をきちんと届けるためには曲と演奏が丹念に作り込まれたものであることが必要不可欠だと考えています。1曲作るのに時間をかけろという話でもとにかくたくさん音を重ねろという話でもなくて、いかに思い通りに自分たちのこだわりを聴かせる工夫ができたか。例えば音像の奥のほうに短いフレーズを入れたとして、その音が鳴っていること自体には誰も気づかなくても、「なんでか分からんけどこの箇所じんわりしていいんだよな」と感じてもらえるようなギミックになっていればいいと思いますし、過不足なく余計なものを見せるというイメージでやってます。
――稲本さんは以前からライヴなどでサポートしていたので特に大きな変化はないのかもしれないですが、実際に稲本さんが加入してからバンド・アンサンブルはどのように強化されたと言えますか?
中根:Mr.稲本が加入してからというもの、バンド・アンサンブルはR.O.C.K一直線です。ロックって何かって言うと僕はリラックスした状態のことやとおもとります。ギンギンにいきり立ってるのはロックに見えて実はロックじゃなかったりするでしょ。本物のロックがどうこうとか言うこすられ倒した議論はしたくありませんが、例えばうまい飯食べた時とか湯船に浸かった時とか「あ~」てなるじゃないですか。あれがロックの正体なんですよきっと。Mr.稲本のギターはそういったロックのわびさびを身体のどこかで分かっていてそれが音とリズムになっています。音楽的なルーツでやっぱすごいインディー感増してるのもポイント高めですね。僕ロックンロール少年なんでインディーロックとかなんやねんってここ最近まで思ってたすけど、Mr.稲本とバンド組めてこれも一つのロックンロールやなって思うようになりました。
稲本:『SWAG』のときはサポート・メンバーとしてレコーディングに参加したのですが、当時デモを聴かされたとき、いい曲っぽいけどまだ活かしきれてないというか、もっとアレンジでよくできるやろと思ったんです。で、いろいろアイデアを出して採用された部分もあったのですが、なんせサポートメンバーなのであまり大きな舵とりはすべきでないなと思ってちょっと遠慮してたんです。Crispy Camera Clubのメンバーは全員僕にないものを持っていてそこにはとても助けられているし、でも逆に僕にしか出せないアイデアがあるという自負もあるので、サポートメンバーから正式メンバーになったことで、お互い強みを100%出し合える環境になったのはよかったなと思います。
――レコーディング作品の音質からはビンテージ感のあるアーシーなギター・ロック・サウンドを想像するのですが、曲調はポップで人懐こく、ある意味でマスでセールスを獲得できそうなキャッチーさがあるのが強みかなと感じます。以下のパラメータにおいて、Crispy Camera Clubのルーツ、お手本になるアーティストをいくつでも教えてください。
【作曲】
ミサト:スピッツ、the brilliant greenなど洋楽の空気を持った日本語のバンドや、ブルートーンズ、ジェリーフィッシュなどキャッチーでグッド・メロディーな洋楽のバンドに影響を受けていると思います。
【作詞】
ミサト:やっぱり憧れはスピッツです。子供の頃からずっと親の影響で聴いてきて、草野さんの世界観には本当に震えます。
【演奏/アンサンブル】
稲本: ザ・キュアー、とりわけ「Friday I’m In Love」はずっと僕にとってのアンサンブルの理想形です。あの昇天感はギターやシンセの重ね方の妙だと思います。演奏、ライブではロックなざっくりした感じでやってますが、単純にまだそれしかできないというだけなのでCrispy Camera Clubらしい演奏はこういうのだというのを固めるのが課題ですね。
中根:ベースはモータウンの楽曲、主にジェームス・ジェマーソンのフレージングがポップな曲を演奏する上でかなり参考にしてます。そこにノイジーなギターが乗っかってくるとこが今の僕らのグルーヴで、ポップスとはつまりミクスチャーのようなもんやなと最近気付きました。他にもザ・フーとかクリームとか60年代のロックが好きなんでベースはそんな感じの演奏です。
【アレンジ】
ミサト:ストーン・ローゼズ、ラーズ、カーディガンズ、ワム! ストロークス。
稲本:最初に名前を挙げてくださったフリッパーズ・ギターやトラッシュ・キャン・シナトラズなどの隙間の埋まり具合は参考にしていますね。Crispy Camera Clubの場合そこに中根くんのロールしまくってるベースが乗るのでギター・ポップに寄りすぎないし、他にない按配になっていていいなと思います。
りんすけ:ベストコースト、アレックス・レイヒー、ストロークスあたりです。
【録音】
稲本:ギターだけで言えばマック・デマルコ、ディアハンター、ヤック、アズテック・カメラ、シャムキャッツとか。めちゃくちゃ歪ませる箇所ではbloodthirsty butchersの影響をストレートに出そうと意識しました。
りんすけ:Hop Along、ザ・ビートルズ。
【アートワーク】
りんすけ:アーティストより海外の雑誌や街で見かけるアートワークからインスピレーションを貰ってます!
――では、CDショップの店頭でCrispy Camera Clubのアルバムの左右に他のアーティストの作品を並べるとしたら、それぞれどういう作品にしたいですか? アングルは自由です。時代、国もジャンルも自由です。いくつか並べてみてください。
稲本:国内、国外で1つずつ選ぶならスピッツとストロークスですね。両者ともサウンドを更新しながらマスに訴えかけるポップ・ミュージックたり得続けている存在として。スピッツはミサトちゃんも挙げてますが僕も大好きですし、バンドやってくうえでの目標ですね。だいぶ余談ですが、僕が昔やっていた花泥棒というバンドのリリースがたまたまスピッツの「醒めない」の翌週になって、隣で面陳されてうれしかったのを思い出しました。タワーレコード秋葉原店様ありがとう!
――現在は京都を拠点にされていますし、実際に京都のライヴハウスの現場で育っている印象ですが、京都という町で結成、活動していることのアドバンテージ、その空気が反映されているとしたら、どういうところだと思いますか?
りんすけ:京都は何もかもが丁度良くて自然もあるしほどよく栄えてるし干渉せずに自分のペースがある気がしてるので、京都のバンドもあんまり周りに染まってない感じもするような……んー、正直他の所で住んだことないしわかんないです!(笑)
――では、これから京都を離れることも視野に入れていますか?
中根:東京行きます。宣言します。売れたいのに地方にいる意味わからんでしょ。活動していく上での損得ではなく、心意気の問題です。僕らそのうち売れるんで
稲本:僕だけ今東京に住んでて、夜行の移動がだいぶきついので早く来てほしいです(笑)。
BOTANICAL HOUSE Vol.5
~磔磔45周年スペシャル~
出演:渚のベートーベンズ / Crispy Camera Club / はいからはくち
【チケット詳細】
https://smash-jpn.com/live/?id=3097
Crispy Camera Club OFFICIAL SITE
http://crispycameraclub.com/
アルバム『SWAG』
配信シングル「ティンセルタウン/グッバイ・マイフレンド」