カレー屋店主の辛い呟き Vol.21 「甲子園のハナシあれこれ」
大阪・上本町のカレー屋兼飲み屋店主の”ふぁにあ”と申します。
まだまだ暑い日が続いておりますが、ミナサマはいかがお過ごしですか?
さてさて、ミナサマ今年の夏はどうでしたか?
旅行に行ったり、フェスに行ったりと行事も盛りだくさんなこの季節、無類の野球好きな僕は、毎年甲子園に行くわけです。そう!夏の高校野球です。
昔から高校野球を見ていると、夏の平日ビール片手に野球観戦をするおっさんを見て、この人何して生活してるんやろ?と不思議に思っていたワケですが、今となってはすっかりそんなオヤジに…。
まぁランチの営業もあるので現地に行けたのは何度かでしたが、この時期、営業しながらも高校野球中継の画面に釘付けってのが夏のウチの営業スタイルだったりします。いや。阪神戦は常にやってるからいつもの事か…。ええ単なる野球好きなおっさんなんです。

■履正社オメデト!好ゲーム続出!星陵の奥川君は化け物でした。
野球に興味のない方からすると、おっさんが立ち飲み屋で話しているような話で申し訳ないのですが、よろしければ少しお付き合いくださいね。今年の甲子園は、奥川という絶対的エースを擁する星陵。東のエリート集団東海大相模。爆発的な打力で勝ち上がってきた智辯和歌山。選抜準優勝の習志野。大阪の履正社。あたりが優勝候補で、ダントツの候補がいるわけでもなく、奥川くん以外のスターが予選で負けてしまったので、ドラフト候補が少なくレベルが低いというのが、大会前の評価。
でも、大会が始まると、組み合わせ抽選の妙もあって、各試合のいろいろなサブストーリーが広がる中、好ゲームが展開され大会は盛り上がっていきます。
2回戦屈指の好カードだったのが、高知の明徳義塾と和歌山の智辯和歌山の強豪校同士の対決。全国屈指の強豪で、優勝経験もあるこの2校。今まで甲子園では2回対戦して明徳の2勝。おまけに前回の対戦では、延長15回の激闘の中、今回の智辯のキャッチャー東妻くんのお兄ちゃん現千葉ロッテの東妻選手のサヨナラ暴投で決着するという劇的な結末を迎えた一戦でした。
長く高校野球を見ていると、こういう因縁とめぐり合わせにドラマを感じる事が多いんです。まぁやってる本人はお兄ちゃんのカタキ!って思ってるわけじゃないんだろうけど…。スタンドの高校野球ファンのオヤジどもは、こういう小ネタをツマミにビールが進むわけですな。勝手にドラマにしたら盛り上がるだろ?
で、試合は前評判が高った智辯の打線を、明徳2年の控えピッチャーがコーナーに球を散らしながらかわし続けて七回表明徳の1vs0。ドラマが起こります。ここで、一つ重要な舞台装置になっていたのが、智辯和歌山応援席から流れてきた「ジョックロック」。
ジョックロック応援シーン。もともとヤマハのキーボードにサンプルでついてたMIDI音源がオリジナルだそう。
この曲は高校野球ファンの中では有名で「魔曲」との異名をとる名曲。智辯和歌山の応援曲として数々のドラマを起こしてきました。過去の大会でも、この曲が鳴ると点が入る、大逆転をする、相手もエラーをするという現象から「魔曲」と呼ばれるようになって。ある大会では智辯の得点の約7割がジョックロックが鳴っているときに入ったとか。で、面白いのが智辯和歌山の応援は基本的に1回につき1曲と決まってて、プロ野球みたいに選手ごとだったり、チャンスの時にかかる曲では無くて、基本的にジョックロックいこかーと曲が先に始まって、なぜかチャンスになる訳。うーんオカルト…。
そして、今年もこの曲がかかった瞬間からチャンス→同点→ホームラン3本という展開に。結局この回一挙7点。このまま智辯和歌山の勝利のゲーム。
智辯逆転シーン。曲が鳴るとエラー、イレギュラー、そしてホームラン。
改めてこの「魔曲」の威力を見せつけた試合となりました。そして、夏の甲子園では時折こんな劇的な試合が見られます。それには高校野球ならではのメンタルな要因があって、例えば、この試合。魔曲ジョックロックがかかった瞬間、甲子園全体が何か起こるのではという期待感で異様なムードになります。その時、マウンドや守備に就くのは、ゆーてもただの高校生。こんな観衆の前で野球したことがないんですね。自分の応援席以外の約4万人の観客は敵。異常なプレッシャーの中で守る選手。そしてこの「魔曲」の短い低音の不協和音の繰り返し。ましてや「魔曲」のジンクスを知ってるわけで、もはや平常心ではプレー出来ないんだよな。これよく言われる「甲子園の魔物」。
負けるとその時点でこのメンバーで野球をするのが最後。プロレベルになっていく同級生と対戦できる最後の機会。周囲の期待と感謝。様々なメンタルの中、まだ不完全で、プレーのレベルがマチマチな高校生がプレーをする夏の甲子園。感情の揺れでどうにでもなる結果。無責任な高校野球好きのおっさんからすると、このメンタルの要素ってプロスポーツにはあまりないXファクター。実は一番面白い部分だったりします。だから、とんでもない好プレーや、信じられないミスが起こるんだ。
そして、甲子園はこの試合を勝ちあがった智辯和歌山と、大会屈指の好右腕奥川くんを擁する星陵との対戦で最初のクライマックスを迎えます。この奥川という投手。長年野球を見てきましたが、松坂以来20年に一人の逸材かと。今となっては150kmの真っすぐを投げれるピッチャーは毎年のように出てくるけど、これをコーナーに決めれる能力。同じ腕の振りから投げられるスライダーの制度。高校時代の田中マーくんや、ダルビッシュを完全に凌駕していました。そして、智辯の魔曲ジョックロックが鳴り響く中、大会屈指の打線相手に、マウンドで仁王立ちして三振を取り続ける奥川。延長15回23三振で智辯和歌山を下す激投でした。なんてゆーか「魔曲」とか関係ない奥川のラスボス感。
リミッターを外したこの試合の星陵奥川の三振集
そのまま決勝まで勝ち上がった星陵、待ち構えていたのは大阪の履正社でした。実はこの両校、春の選抜大会一回戦で対戦して、全国屈指と評判もあって、大会前自信を持っていた履正社打線が奥川に17三振くらって3安打完封負けするという衝撃的な試合。
選抜の履正社vs星陵の17三振ダイジェスト
屈辱的な負けから、打倒奥川を目指しパワーアップしてきたチームが決勝戦で直接対決するというシチュエーション。もはや、野球マンガのような舞台。おまけに星陵の奥川、山瀬のバッテリーは小学校の時からの幼馴染のバッテリー。そのバッテリーが最後の大会であと一歩で優勝。いや、マンガやん…。
結果は、選抜で無安打2三振だった履正社の4番井上の、リベンジを果たす3ランなどで履正社の勝利。
奥川くん自身の疲れ、調子の悪さもあったけど、序盤の絞り球をチームとして決めず、初球からの積極好打で投球のリズムを崩し、低めのスライダーは徹底的に見逃すという履正社の攻めが一枚上手でした。ただ、智辯和歌山戦のピッチングならば、履正社でも厳しかったかなと…。
なんにせよ、今年の夏の甲子園大会も楽しい時間でした。来年はどんなドラマが待っていますかね。
■魔曲ジョックロックだけじゃないのです!スタンド応援のアレコレ。
先述したように、この夏の甲子園では、スタンドの応援も重要な舞台装置。楽しみはグランドだけではないんですね。昔は、“かっとばせーだーれだれ”なんて簡単なコールから、山本リンダ“狙い撃ち”、ピンクレディ“サウスポー”なんて定番曲が多かったですが、昨今は各校趣向を凝らした応援ソングをスタンドより聞かせてくれます。今年見てて印象に残ったものをいくつか紹介させてくださいね。
てか、全部映像に上がってるってな。応援のブラスバンドのファン多いんだね。
まずは、今年の甲子園でも美爆音と異名を取る習志野高校の応援団。ここはもはや反則wというほど管モノが多くてとにかく音がデカい。まずは、定番曲オリジナルチャンステーマの「レッツゴー習志野」
この曲のファン多いです。現場で聴くと智辯のジョックロックと同じく圧がすごい。
そして同じく習志野今年の新曲。アルフィーの「星空のディスタンス」この曲が応援テーマになっているの初めて聴きました。顧問の先生好きなんやろか…。完成度高いです。
コレ完奏編だそうです。チャンステーマって用意しててもチャンス続かないと完奏できませんからね。
次は現地で国学院久我山vs前橋育英戦を友達と見ていた時に、気になっていた曲。国学院久我山のチャンステーマなのですが、店に戻って調べてみるとこれまた渋い。
国学院久我山のチャンステーマ「一本」
原曲はあだち充原作の野球マンガの名作。アニメ版『タッチ』の双子の兄弟、事故で亡くなる和也のテーマソング「星のシルエット」。タッチタッチここにタッチはよくあるけど、このセレクトは初めて。妙に耳に残る曲で、twitterとかでも話題になってました。
その後、次の攻撃で前橋育英側から聞こえてきたのが、今や高校野球では各校が使っているBRAHMANの「SEE OFF」。
今年のが無かったので2年前の。前橋育英「SEE OFF」
僕も大好きなこの曲。でもBRAHMANのファンじゃないと知らないようなこの曲が、なぜ全国の高校に知られるようになったかには少しドラマがあって。高校野球ファンの中で定説になっているのが、2001年の茨城県立日立一が元祖であるということ。高校野球オタクであった当時日立一高校3年生の水野さんという女子高生が自校の応援の為に、チアを結成し、着メロを自作するほど好きだったこのBRAHMANの「SEE OFF」をチャンステーマとして採用したのが2001年の夏。2002年に茨城の県大会で対戦した強豪常総学院が、対戦相手のこのチャンステーマをかっこいいと気に入り応援に取り入れるワケ。そして2003年常総学院が甲子園でこの曲をバックに優勝すると、全国に一気に広まっていったと。そして、2006年からJリーグ松本山雅FCでもチャントとして歌われるようになったこの曲(余談ですが、BRAHMANのベースとドラムは松本出身、voTOSHI-LOW氏は茨城出身そんな縁もあるのです)はサッカー界にも広がっていくことになります。
サッカーJリーグ松本山雅FCのゴール裏で歌われる「SEE OFF」
20年経っても様々なスポーツの応援シーンで歌われるようになった名曲。応援歌一つとってもいろいろとドラマがあるモノです。曲に力が無かったらこうはならないんだろうけど。
そして最後に。今年の甲子園の印象的なシーンを一つ。
今年の甲子園開催前の悲劇的な京アニの事件を受けて、京アニの近隣の立命館宇治高が、これまた宇治舞台の京アニ制作の吹奏楽のアニメ「響けユーフォニアム」のOP「DREAM SOLISTER」を演奏するシーンがコチラ。
実は立命館宇治の甲子園一回戦が吹奏楽部のコンクールと重なり、今まで甲子園で勝ったことのない立命館宇治が今回一回勝たないと演奏のチャンスが無かったんですね。同じ地元で描かれる、同じ高校生の吹奏楽部としては、是が非でもやらねばいけない一曲。6回このテーマに乗せて猛反撃して3点を取り、この日投げる予定の無かった、相手星陵のエース奥川くんを引きずり出した姿になんだか泣けてきました。
場内全体の手拍子も暖かかったし。この曲もいい感じで全国の学校に広がっていけば、京アニのミナサマも嬉しいのではと。
長々と高校野球にまつわる話を書いてきましたが、実はこれでもだいぶカットしました 笑
あまりの自分の高校野球というか、野球に熱量に少し気持ち悪くなりました。
カレーの事もこのくらいの熱量でと自分に自戒しつつ今回はこのあたりで。