第23回 教養としてのロック名盤ベスト100 (光文社新書) 川崎大助(著)

教養としてのロック名盤ベスト100 (光文社新書) 川崎大助(著)
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前回、川崎大助さんの『日本のロック名盤ベスト100』を紹介したら、なんと川崎さん『教養としてのロック名盤ベスト100』という世界のロック名盤100の本も出しておられました。

 

両作とも客観的にロックを批評されている本です。『日本のロック名盤ベスト100』の時には指標となるものがなかったのですが、世界の場合はローリング・ストーンとNMEという雑誌がありますので、それらのベスト100を足して2で割ったもので順位を決めて書かれていってます。

 

NMEのほうはネットだけになってしまいましたが。

 

ローリング・ストーンはいつそうなるのでしょう。

 

僕は今全然ネットは見なくなってしまい、紙の本ばかり読んでます。紙の本ばかりというのは嘘で、キンドルになっているのはキンドルで読んでます。紙の本は重いし、お風呂で読みにくいし、ベットで真っ暗闇の中で読めないから嫌なんですけど、紙の本の方がしっかりと頭に入ってくるような気がします。

 

今の若い人は多分紙の本とか読まないと思うので、こんなギャップの世界を僕はもう生きていけないんだろうなと思っています。

 

『教養としてのロック名盤ベスト100』の順位の決め方は“足して2で割った”とアホな書き方をしましたが、本当はそんな単純なことで順位を決めていっておりません、本を読めばその方法がちゃんと書かれております。そうして順位を決めるとあるものが見えてきたというのもこの本の狙いです。

 

海外にはローリング・ストーンとNMEというちゃんとした知の蓄積があってうらやましい限りです。日本もロッキング・オンとミュージック・マガジンがあるからいいような気がするのですが、僕も川崎さんもロッキング・オンとミュージック・マガジンには客観性がないように思っているのです。ローリング・ストーンとNMEに客観性があるのかというのも疑問なのですが、唯一言えることは英語版ウイキと日本語版ウイキのバンドの項目などを見比べたらよく分かると思うのです。日本語版ウイキはとにかく編集中という赤色の部分が多すぎる、要するにファンの人たち、そうでもない人たちがああでもない、こうでもないと論争を繰り広げているのです。

 

オタクの世界でもそれは一緒で、SF警察というのが、ああでもないこうでもないと人に議論を毎晩ふっかけていっているのです。音楽の世界ではロック警察という言葉はないので、そんな人たちは少ないかもしれないけど、確実にいます。

 

はっきり言いますとロックの世界なんて、本当はマーシャルにエレキぶっ込んでEのコードを鳴らした時にどんだけ人を感動させる方で全て決まるんですが、これが分かっている人が日本の音楽業界には少ない。

 

これが基本なんです。このEのコード鳴らす時にE7にしてそこに#9を足すか、「押さえんのめんどくさいは全部開放で弾いたるわ」と違いを出していくわけです。ちなみにE7に#9を足したのはジミヘンで、今ではこのコードはジミヘン・コードと言われてます。全部開放で弾いたのはバウハウスのダニエル・アッシュです。真面目にロー・コードのEを抑えて音楽シーンを変えたのはリンク・レイ(本当は出だしはDなんだけど、後のリフはEのペンタトニックだから許して)、ハイ・コードのEでハード・ロックの扉を開いたのはジミー・ペイジ、半音下げにして迫力を出そうとしたのはエディ・ヴァン・ヘイレン。こんなことが一番重要なのに、日本で戦われていたのは三大ギターリストのエリック・クラプトンとジェフ・ベックとジミー・ペイジの誰が一番上手いかだけの話だった。

 

海外では誰もそんな話をしません。日本人が今一番大好きな歌「世界に一つだけの花」の世界です。海外のロックってどれだけ個性的になるかの世界だけですから。

 

「世界に一つだけの花」も日本では独自な進化を遂げそうですよね。奇抜だったらいいみたいな。アイドルの世界はそうなったわけなんでしょうね。なんで誰もセリーヌ・ディオンやマライア・キャリーやアレサ・フランクリンを目指さない。一番分かりやすい世界制覇が出来ると思うんですけどね。最初から誰も出来ないと思っているんですかね。セリーヌ・ディオンなんかカナダ人ですし、イギリス人はアディルやエイミー・ワインハウスをちゃんと誕生させました。

 

日本にオリンピックを定着させた人たちの物語『いだてん』を見ていると昔の日本人はちゃんと世界と戦おうとしていたなと感動します。そして、その言い出しっぺ柔道家の嘉納治五郎は日本人をオリンピックに参加させながら、彼の本当の目的、柔道をオリンピック競技にしてしまうしたたかさがあります。

 

『いだてん』は一番最初にオリンピックに参加した日本人金栗四三と、日本で初めてのオリンピックを開催することに奮闘した田畑政治の2部構成の物語ですけど、その裏で嘉納治五郎が柔道をオリンピック競技にするためにどれだけ暗躍したことか。

 

東京オリンピックの時に柔道が正式競技になるので、嘉納治五郎が亡くなって26年経ってましたが、なぜ日本のスポーツがオリンピック競技になれたことに嘉納治五郎の存在がどれほどあったのかものかも描かれることでしょう。

 

『いだてん』みながら僕はずっと日本のロックのことを考えてました。日本のロックは世界のロックの中で金メダルを取ったことがあるのだろうかと。そのために金栗四三、田畑政治、嘉納治五郎のように頑張った人はいるのだろうかと。

 

川崎大助さんの『日本のロック名盤ベスト100』と『教養としてのロック名盤ベスト100』を読みながら日本のロックのことを今一度考えたいと思います。