第24回 この妬けるほどの光、この太陽、そしてそれ以外の何もかも—ジョイ・ディヴィジョン ジ・オーラル・ヒストリー (ele-king books)

この灼けるほどの光、この太陽、そしてそれ以外の何もかも──ジョイ・ディヴィジョン ジ・オーラル・ヒストリー (ele-king books)
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ワイヤー、ギャング・オブ・フォーと並んで超重要ポスト・パンク・バンドのジョイ・ディヴィジョンのオーラル・ヒストリー本『この妬けるほどの光、この太陽、そしてそれ以外の何もかも』が出ました。

 

オーラル・ヒストリーとは関係者の言葉だけでつなぎ合わせていき、事実を浮き彫りにする手法なんですけど、評論家の人が自分の意見は書かないから、本当にその場にいたような気にさせてくれるから僕は大好きな手法です。

 

口でやるセックスをオーラル・セックスというですけど、英語って面白いですね。ちなみに顔射はbukakeと言います。日本人が顔射するまで外国の方はそんなプレイしたことなかったんですかね。確かに昔のハードコア・ポルノは全部腹に出してました。完全にセックスをしていることがハードコア・ポルノでは射精するのも男優さんの重要なテクニックでした。たまに中に出してしまった男優さが、「オー!マイ・ゴッド」と悔しがってる姿を見るのは面白かったです。

 

あんなものを顔にかけるなんて汚いですよね。汚いものをかけられたり、かけるから興奮するんでしょけど、ジョイ・ディヴィジョンとはそんなバンドでした。人間の汚いもの、その闇の中に光を見ようとしたバンド、それがジョイ・ディヴィジョンでした。だからヴォーカルのイアン・カーチスは首をくくって死んでしまったのです。『この妬けるほどの光、この太陽、そしてそれ以外の何もかも』と言うタイトル、本当にジョイ・ディヴィジョンの本質をよくわかっていますね。これだけで読みたくなります。ランボーですけどね。

 

また見つかった

何が、永遠が、

海と溶け合う太陽が

 

独り居の夜も

燃える日も

心に掛けぬお前の祈念を、

永遠の俺の心よ、かたく守れ。

 

人間どもの同意から

月並みな世の楽しみから

お前は、そんなら手を切って

飛んで行くんだ。

 

もとより希望があるものか

立ち直る筋もあるものか

学問しても忍耐しても

いずれ苦痛は必定だ

 

明日という日があるものか

深紅の燠の繻子の肌

それ、そのあなたの灼熱が

人の務めというものだ

 

また見つかった、

何が、永遠が、

海と溶け合う太陽が

 

「永遠」ランボー

 

素晴らしい詩ですね。子供の頃は何を言っているのか、全く分かりませんでしたが、大人になって何回もこの永遠の太陽を僕は見ました。グラストンベリーのあの丘で、イビサのあの浜辺で、イギリスの名もない原っぱのレイヴで、フジロックでそんな太陽を眺める場所がないのが残念ですね。アサギリだったらあるんですけどね。でもその時には音楽が止まっているのは残念ですね。ライジングだとバンドと共に永遠を感じることが出来るんですけどね。フジロックで一番必要なのはみんなで朝を迎える場所なような気がします。

 

太陽が昇ってくる時、人は死と生を感じることが出来るんです。人は死んで生まれ変わる、それを何億年と続けて来たんだという思いに人は永遠を感じることが出来るのです。何も出来ないただの歯車のような自分もその永遠の一部だと感じることが出来る、そこに奇跡というか生きる喜びを感じることが出来るわけです。ランボーの詩はそういうことを歌っているわけです。そんなことをよく理解していたイアン・カーチスが亡くなったのはショックでした。

 

ジョイ・ディヴィジョンの関係者はいろんな本を出しています。まずはイアン・カーチスの奥さんデボラ・カーチスの『タッチング・フロム・ア・ディスタンス』、これはマッチョなバンド世界を女性の視点から冷めた目で見ていて、女性ファンの気持ちがよく分かる本です。

 

ベースのピーター・フックの『アンノン・プレジャーズ:インサイド:ジョイ・ディヴィジョン』これは残念ながら日本語にはなっていないんですけど、お笑いジョイ・ディヴィジョンのような本です。あの神格されたジョイ・ディヴィジョンが崩壊していきます。「ピーターそんなこと書いたらあかんよ」と言うエピソード満載です。

 

そして、もう少し音楽的な視点もちゃんと書かれているのが、ギターのバーナード・サムナーの『ニュー・オーダーとジョイ・ディヴィジョン、そして僕』です。後はレーベル・オーナーのトニー・ウィルソンの『24アワー・パーティー・ピープル』、そしてこの本を読めばジョイ・ディヴィジョンの全貌がつかめると思います。関係者から話を聞いたのは僕が尊敬する評論家ジョン・サヴェージです。尊敬すると言うか、ジョン・サヴェージのような音楽を通して、若者の革命を語れるような評論家になりたいと思って頑張っております。グリール・マーカスの『リップスティック・トレイシズ』よりをパンクと状況主義の関係をちゃんとヤング・カルチャーとして解説した『イングランド・ドリーミング』の著者です。

 

映画監督のジュリアン・テンプルがセックス ・ピストルズのドキュメンタリー映画『The Filth and the Fury』を作った後に、ドクター・フィールグッドの『ドクター・フィールグッド -オイル・シティ・コンフィデンシャル- Oil City Confidential』を作り、イギリスの歴史を繋げ合わせようとしてるように、『この妬けるほどの光、この太陽、そしてそれ以外の何もかも』も『イングランド・ドリーミング』と対になる本だと思います。初めに、オーラル・ヒストリーとは書き手の意思を入れずに、当事者の言葉だけで歴史を再現する方法と書きましたが、書き手の編集の仕方によってジョイ・ディヴィジョンをどういうバンドたったか違ってくるのです。ジョン・サヴェージがジョイ・ディヴィジョンとはどんなバンドだったかと解釈しているのか、僕は楽しみで仕方がないです。次回はこの本の感想と、まだ翻訳されてないピーター・フックの『アンノン・プレジャーズ:インサイド:ジョイ・ディヴィジョン』の面白エピソードを紹介したいと思います。みなさん、『この妬けるほどの光、この太陽、そしてそれ以外の何もかも』読んでおいてくださいね、僕ときっと違った感想を持たれると思います。皆さんと僕の感じ方がどう違ったのか、比較するの楽しみです