第26回 Twisting My Melon: The Autobiography (英語) ペーパーバック – Shaun Ryder (著)
- 2020.01.01
- COLUMN FROM VISITOR
今月はハッピー・マンデーズ、ブラック・グレープのショーン・ライダーの自伝『ツイスティング・マイ・メロン』を紹介します。タイトルを訳すと“こんがらがった俺の頭”でしょうか。ブルースとかでウォーター・メロン・マンとかよく出てきますがあれどういう意味なんでしょうね、中身ぐちゃぐちゃな奴みたいな感じなんですかね。それとも頭空っぽみたいな奴ということなんでしょうか。
この本、キンドルだと550円で買えるので、英語の勉強にどうでしょうか。
ハッピー・マンデーズを久々に聞いたら、あの歌い方ってロッド・スチュアートをやってたんだって気づきました。ロッド・スチュアートの名盤『明日へのキック・オフ』に入っているファンク・ナンバー「ユア・インセイン」とか聴いてみてください、これを下手くそに歌ったらショーン・ライダーになるんだとびっくりします。
すごいですよね。日本だとロッド・スチュアートって、西城秀樹とかになるのに、イギリスだとショーン・ライダーになるんだと。
レッド・ツェッペリンのロバート・プラントの原型もロッド・スチュアートだと思うし、海外ってすごいよね。トム・ジョーンズ、ロッド、ロバート・プラントという流れ、ほんとこんな世界に僕はいたいです。
ショーン・ライダーはカンのダモ鈴木さんの歌い方もパクっています。ショーンって日本で言うと普通のヤンキーだと思うんですけど、カンを知っているってすごいですよね。日本のヤンキーはカンは聴かないでしょう。やっぱシンナーを吸っているか、ハッパを吸っているかの違いってこうも違うんですね。早く日本もマリファナ解禁した方がいいと思います。
それでは彼がどれだけヤンキーかと言う話を自伝から抜粋して行きたいと思います。彼は郵便局員だったんですけど、イギリスっていいすよね。あんな学がなさそうな奴でも郵便局員になれるんですから。日本は大学とか出てないと郵便局員になれないんじゃないんですか? 配達員くらいなら高卒でもなれるんですか?、俺なんか大阪で一番アホな高校に入ったら、そこの高校の就職先トンカツ屋しかなかったですよ、俺トンカツ食べれなかったから、速攻でその高校辞めました。今はトンカツ食べれるようになったから、トンカツ屋に就職でもよかったです。でもあの大きな鍋の油捨てるの怖いですよね。
何の話してるんでしょう。ショーン・ライダーの自伝読んでいたら、こんな感じになってしまいます。
ショーンが配っている場所でいつも吠えられる犬がいたそうです。“うっとおしいな、怖いなと思っていたんだけど、ある日俺はブチ切れて、その犬の首元を噛んで放り投げてやった”と書かれてます。犬の首を噛んで放り投げた、その犬、チワワみたいな犬やったのか、爆笑です。もちろん彼はアシッドやりながら手紙を配ってました。
彼はハッピー・マンデーズの初期、ミスターXと名乗っていたんですけど、それはドラッグの売り買いをしていて、本名を知られたくなかったからだそうです。何を考えているんでしょうね。
売れてからも変わりません。TVを見てると同郷のバンド、インスパイラル・カーペッツが出てきたそうです。そいつらがあまりにもカッコ悪いから、そいつらの事務所に“お前らみたいなクソ・バンドがマンチェスターのイメージをダメにするんだ、死ね!”とファックスを送って満足していると、家のファックスがガチャガチャって音がするんで、何だろうと思ってファックスを見に行くと“うるさい、お前が死ね、このクソ・ショーン・ライダー”とかいろんなことが書かれたファックスが送られてきたそうです。“なんで俺の名前がわかったんだ、なんで、どこから流したって分かったんだ、このクソ野郎”と送り返すと、“お前バカか、発信番号も発信者名もちゃんと書いてあるんだよ、それがファックスなんだよ”と返ってきたそうです。何年か後、オアシスのノエル・ギャラガーにあったら、「あのファックス送り返したの俺だよ」と言われたそうです。ノエルはインスパイラル・カーペッツのローディーをやってたのです。
マンチェスターの奴らは一体何をやっているんですかね。ショーン・ライダーはマンチェスターじゃなく、前回紹介したジョイ・ディヴィジョン、ニュー・オーダーのピーター・フックと同じサルフォードの出身ですが。
マンチェスター周辺にはこんな二人だけじゃないんです。スミスのベースのアンディ・ルークがショーン・ライダーに「お前とこのキーボードとバンド組もうと思うんだけど、あいつどうだ。」と訊かれたので、ショーンは適当に「いい奴だよ」と答えてたら、二週間後アンディが「あいつキーボード弾けないじゃん」と血相抱えて飛んできたそうです。「そうだよあいつキーボード弾けないよ、指一本でサンプリングの音出していただけだよ。」そんなことも分からなかったのか、お前そんなのでよくプロのミュージシャンやってるなと。ダンサーのベズも入れて二人も楽器が弾けない奴がいるバンドってすごいよな。
アホな奴ばかりではないいい奴もいます。元ハッピー・マンデーズのギターのマーク・デイは本当に真面目で、毎日のペティ・キャッシュ(海外のバンドはツアーに出ると雑費のお金として、毎日領収書のいらないお金をもらえるのです。同行したカメラマンももらえます。僕はそれが楽しみで仕方がなかったです。)をマネジャーからもらわず貯めていました。ある日バンドが解散する時、というか破産したのです。飛行機に乗り遅れたり、ホテルの部屋を壊したり、警察に捕まったり、いろんなことがあって収入より支出の方が多かったわけです。バンドではよくあることです。ブラーなんかもマネジャーが税金払い忘れていて、負債を1億くらい抱えたことがありました。フーも『トミー』が売れなかったら支出が多すぎて首が回らなくなって解散していたでしょう。ストーンズでもそうです。豪邸は買えたけど、貯金は全く出来ていなかったそうです。一発コケたら破産することは目に見えている。そんな状況をどうしたかということが書かれた本がプリンス・ルパート・ローウェンスタインの『ローリング・ストーンズを経営する: 貴族出身・“ロック最強の儲け屋”マネージャーによる40年史』です。ミック・ジャガーがルパート・ローウェンスタインに「助けて」と言いに行ったのを、彼がどうやって助けたかを克明に書いた本です。バンドって大変なんです。
マーク・デイはバンドが破産した時、マネジャーに「俺が貯めていたお金もらえる?」と訊いたのですが、もちろんその答えは「そんなのないよ」、そんな二人の会話を聴いていたショーン・ライダーは「使わなかったお前が悪いんだよ」と一言、ろくでもない音楽の世界でどうやって生きていくか満載の自伝です。