第27回 Lonely Boy: Tales from a Sex Pistol (English Edition) 著:Steve Jones

Lonely Boy: Tales from a Sex Pistol (English Edition) 著:Steve Jones Kindle版
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このコラムはなるべく日本で翻訳されていない音楽書を紹介していきたいと思います。気分は植草甚一です。植草さんは海外の記事を適当に訳して食えていたんだから楽ですよね、なんて書いたら植草ファンから殺されます。でも、過酷なロック・バンドのツアーについて回って、ドラックやって、朝の6時にプールに飛び込んで、1秒前の記憶をなくしていく俺たちって金魚みたいだよなと思った僕のリアルな体験は誰よりもすごいと思ってるんですけど(海外の評論家だと当たり前ですけど)、そんなのじゃ食えないですよね。

 

レッド・ツェッペリンの大家渋谷陽一さんが生でツェッペリンを見たことないことを考えると(再結成は見てますけど)、リアルにパンク、ニュー・ウェイブ、ポジパン、アシッド・ハウスを体験してる僕は大物評論家になれると思っていたんですが、全然無理なんですね。

 

どうしたらいいんでしょう。マーク・フィッシャーの『資本主義リアリズム』のような本を英語でちゃんと書くことでしょうね。僕やれるか、やるしかないですよね。

 

植草さんのエッセイは古すぎて読めないんですけど、植草さんと言う人は「本屋でも、レコード店でも、散歩でも基本的にはひとりが好きで、ひとりぼっちの人でした。映画だけは淀川長治さんという理解者がいたけれど、それ以外はたった一人で自分が面白いと思うものを見つけて、たった一人で楽しんでいた。それを何十年も続けていたんです。植草さんは本当に孤独を貫いた人だったんです」そこは僕と似てるなと思います。

 

僕も頑張って植草さんみたいに自分で勝手に好きなものを紹介していくしかないですね。今の時代はもう文章じゃなく、『たっちゃんひとり旅』みたいにユーチューヴで紹介していくしかないのかもしれませんが。たっちゃんはユーチューブで毎月100万円稼いでいるみたいだから、『ケンちゃんイギリスひとり旅』とか頑張ればイギリスに住むことも可能ですよね。無理か、僕は原稿も書かずにそんな妄想を一人でしてしまうのです。

 

ロンリー・ボーイと言えばセックス・ピストルズのスティーヴ・ジョーンズです。あのスティーヴ・ジョーンズがロンリー・ボーイ!そうなんですよ。彼が“アイム・ロンリー・ボーイ”と歌うのは本当のことだったです。それについて書かれた自伝がこれです。彼がなぜロンリー・ボーイかと言うとお母さんの新しい旦那にセクシャル・ハラスメントを受けて、家にいずらくなって、ロンリー・ボーイになったと言う話です。どんなすごいセクシャル・ハラスメントを受けたかと言うと、10歳の時に一度その義理の父のチンポをしごかせられただけという、またしてもこんな酷い書き方をしたらダメですよね。一度でもショックです。あと本だから本当はもっと何回もあったかもしれないけど、書いてないのかもしれないです。後インタビューでは自分は泥棒の家系の子とよく言っているんですが、それについても触れられてないので、書きづらいことは書いていないんでしょう。

 

泥棒の家系ってびっくりするかもしれませんが、イギリスというか西洋では普通のことなんです。映画を観てたらなんとなく分かるかもしれませんが、『ザ・タウン』なんて映画はそんな家族を描いてます。昔の日本もそういう人たちがいました。サザエさんの漫画にもよく押し売りというのが出てきますが、そういう人たちが普通にいたのです。スリとかね。こういう犯罪に手を染めて生きるよりも、真面目に生きた方が効率がいいということになってそういう人たちは減っていったわけです。減ってはいないのか、今はオレオレ詐欺をやるような人たちですね。

 

『ロンリー・ボーイ』はそうやって家庭がなくなった少年が窃盗とセックスを繰り返していくという話です。面白いのは盗られた人とやられた女性が僕らが知っている人なんです。デヴィッド・ボウイの機材も盗っていて、しかもあの映画『ジギー・スターダスト』の録音日に盗っていて、あの映画の音が悪いの俺のせいかなだって。

 

どのギターか書いてはいないんですが、多分あの黒いレスポールはモット・ザ・フープルのアリエル・ベンダーのでしょう。返したくないからどのギターかは書いてない。あれはお気に入りだし、その気持ちは分かる。まだ持ってるし、“アリエル・ベンダー、ギター取り返しに来い”だって、73歳のおじいちゃんに何を言う。白いレスポールはニュー・ヨーク・ドールズのシルヴェイン・シルヴェインからマルコム・マクラーレンがもらってきているので、盗んでないですが、多分レスポール・ジュニアは10CCのメンバーから(本当にどのギターは誰からのと書かれていない)、こちらは返してもいいと思ったのか、もう手元にないからか謝りの電話をしています。しかし名前くらいはちゃんと覚えとかなあかんで。でびっくりしたのはあのナチュラルのフライングVは現在ジョン・ライドンの奥さん、ノナから買ってもらってました。スティーヴとノナが出来てたなんて知らなかったぞ、そりゃジョンと仲悪くなるわ。でも一番衝撃だったのはあのシド・ヴィシャスのベースは今スティーヴの所にあるんです。これはちゃんとシドのお母さんから買っています。

 

盗んで、動いているものはすぐにやって、そしてドラッグ中毒になった。その理由は彼に家族がなかったから。自伝の最後は全てを許すことで、シラフというか本当の自分を取り戻すという話になっていきます。児童虐待をした義理の父にも、当時一度もやらなかった、やってもらえなかったハグをしています。

 

でも子供を虐待する奴ってなんなんですかね。ぶっ殺してやりたくなりますね。

 

この自伝のオチは、エルトン・ジョンの映画のオチ、ジャンキーじゃなくなって、家族も手に入れ、幸福となりました。でもまだ買い物癖だけは治ってません風に言うと、盗癖も、ジャンキーでもなくなったけど、まだ最愛の人とはあってませんという感じです。スティーヴも早く最愛の人と出会えたらいいなと思います。スティーヴいわく“本当に好きになってしまったら、セックス出来なくなるんだ”だそうです。その気持ちはすごくよく分かるけど、いつまで中二病みたいなこと言ってるんだ、早く家族を作って欲しいなと思います。最後は誰もがロンリー・ボーイ、ロンリー・ガールになるとは思うんですけど、家族っていいもんですよ。

 

『ロンリー・ボーイ』は家族に捨てられ、一人で頑張った男が、なんとか一人で生きていくことを学んでいった本です。