カレー屋店主の辛い呟きVol.29「おうちでなにする?」

大阪・上本町のカレー屋兼飲み屋店主の”ふぁにあ”と申します。ミナサマは調子いかがですか?お金もなく、奧さんも、子供もなく、ナイナイ尽くしの”NAI-NAI 16”なワタクシ。店はテイクアウトと時短営業で、もう青息吐息な状況だけど、日常は普段とそんな変わらない気もするなぁと思ったりもしてます。

 

思い返すと、色々あって上本町の裏路地で店を始めて約4年。始めは、お金と言うかまぁ何にもないから、日常生活のカロリーを下げる事に楽しみを見いだしてた時期。例えば”月10万以下で大阪市内で一人暮らしができるか!”チャレンジ的な!これって生活保護以下の金額でって事なんだけどね。やる事ないから散歩して、年2000円で動物園の年パス買って、子供に交じって動物園の人の講習受けて。じーちゃん、ばーちゃんに交じって天王寺の寺を散策して、区主催の落語会とか行って。本は図書館で、ネットはマクドやスタバで。飲むのは、一杯200円の西成の呑み屋。あれ?話が脱線しかけてる…。何が言いたいかってゆーと、お金が無くても、暇がありすぎても別に??楽しかったけどなーって事。楽しいコトはどこにだって転がってるよ。

 

こんな状況になって、何やら重苦しい感じになってる人も多いんだろーけど、何より重要なのは日々を楽しむ事だと思うんすよ。なんでも、自粛だ自粛だ!大変だ大変だ!頑張ろう頑張ろう!と顔を真っ赤に言ってる人見るとな。そう言うのも当たり前の状況だし、腹がたつコトも多いけど、毎日楽しむコト忘れてないですか?と言いたくなる時が増えてるような気がして。まぁお前みたいにお気楽な立場じゃねーんだよって人も多いとは思うんだけど。大事なのは好奇心と想像力。変化を恐れるんじゃ無くて楽しむコト。たとえ自分にとって危機であってもね。そこだけは無くしたくないなーと思います。

 

さてさて、昨今「おうちで○◯」的なモノが多かったりしますが、そもそも一生家にいても何の問題もないワタクシ。自分を構成しているのは、音楽と本とか漫画とゲームなので、おうちは大の得意!! 大好きな野球をはじめとするスポーツ観戦が出来ないのは辛いけどね。そんな自分を構成するモノの中から今回は、GW暇だよって方の為にオススメの漫画でも紹介しよかと思ってます。ただ、今まで読んで来た膨大な数の漫画から、単なるカレー屋が何冊か紹介してもなーってコトで、音楽が題材の漫画から個人的にベストな5とプラス1を絞って絞って短めにご紹介。スマッシュのwebsiteだから音楽に絡めてね。でも、ほんま迷いました。

 

これぞもはやClassicsのベスト5

もっとマイナーなモノでもいいのかも知れないけど、まだ読んだことが無い方がいるかもしれないし…。結果有名な作品ばっかになってしまった。全部見たコトある人も多いと思うけど、思い入れがなー。ベスト5と言ってしまったし。んで、全部マイナーなモノでもサブいかなーと。ほら、オススメ映画ベスト5と言ったってきっと”ロッキー”は入るだろ?いや入らんのか…。笑 でも好きな映画何?と言われてウッディアレンの〜とか、やっぱゴダールの〜と言うヤツよりロッキーや!って言うヤツのが友達になれる気がする…。知らんけど。

 

1.BLUE GIANT(全10巻完結) / BLUE GIANT SUPREME(連載中)/ 石塚真一

個人的に連載開始時から毎週楽しみに連載を追っかけてる作品で、数々の賞もとってる有名作品だけど、ベストな5なら外せない作品。仙台に住む主人公の宮本大がジャズに目覚め世界一のジャズプレーヤーを目指すっていう、いたってシンプルなストーリーなんだけど、絵から音が完全に聞こえてくるような作画はただ圧巻。「岳」の石塚真一作品なので日常をエモーショナルに描くストーリーもいいネンな。青年誌ならではの主人公の努力の描写と、目標に向かって突き進む姿。魅力的な登場人物。大人が見ても何か突き動かされるモノがあるんじゃないかな。ちなみに続編の「BLUE GIANT SUPREME」は週刊連載中。読んだコトがある人は知ってる話だけど主人公の最終的な姿は語られた上でのストーリー展開。どんなことが起きてたのってゆーある意味古畑任三郎型のシナリオも魅力かと。

 

.ピアノの森(全26巻完結) / 一色まこと

これも名作で、アニメや映画になってる有名な作品なので知ってる人も多いかも。貧しくて、複雑な環境で育った主人公の一ノ瀬海が近所にある森に捨てられていたピアノに幼少の頃より触れて育ってきたことで、小学校の同級生の天宮や後の師となる元天才ピアニストの阿字野壮介達と出会い、ピア二ストの才能を開花させていくお話。同時にピアノを通じて登場人物達の少年から青年への成長が描かれてます。で、この作品1998年に連載が始まって、休載や雑誌の廃刊などを経て、2015年に17年の歳月を経て完結したコミック全26巻。連載時はホンマに終わるんやろか?とファンをヤキモキさせてました。裏を返せば、ずっとニーズがあった訳。そして、ボクもそんなファンの一人でした。ラストのコンクールの描写はヒリヒリとさせるような、でもここまで待ってて、これが見れて良かったと思わせてくれるような、大河ドラマのような作品。泣けます。

 

.坂道のアポロン(全9巻+番外編1巻完結) / 小玉ユキ

 

月刊フラワーズで連載されていた少女マンガで、後にこれもアニメ化、実写映画化された有名作品。1966年の長崎県佐世保市を舞台にした高校生達の青春音楽漫画とでも言いましょうか。佐世保に転校して来た秀才で真面目且つ繊細な主人公薫が、野蛮且つ豪快な少年千太郎と出会い、ジャズの魅力に惹かれながら絆を深めていきます。少女マンガらしく青春恋愛要素も多いこの作品、個人的には、1960年代の佐世保という地方の穏やかな雰囲気とノスタルジックさを兼ね備えた舞台設定と、ジャズがまだ若者の中でど真ん中だったという時代感が作品世界に入り込めた理由の一つだったのかなと。この甘酸っぱいような世界観に浸かってしまうとこの全9巻+番外編1巻は、いつもスルリと読めちゃいます。

 

.ソラニン(全2巻完結) / 浅野いにお

あーこれも名作で、有名作。当時、ヴィレッジバンガードに出入りするような若者のバイブル的漫画でした。この話の主人公である種田は大学時代から続けていたバンド活動とアルバイトで生活している青年で、大学時代から付き合っているヒロインの芽衣子と同棲をしているんすね。そして、芽衣子は自分の限界を感じ会社を退社。種田もいつの間にか自分の音楽の才能は平凡であることに気づいてしまう。これ僕の周囲でも、ありがちな若者ならでは(若者だけって事でも無いか…)の焦燥感と切迫感。そんな社会に出る前のモヤモヤ感漂う日常に答えを出しかけた矢先の、主人公種田の事件。後に映画化されるこの作品、実写映画よりも何倍も映像的なんです。2005年からの連載時期、僕はもう30を越えていたけど、会社を立ち上げてエンタメの仕事を仲間や後輩と始めたばかり。この作品の主人公達と同じように焦燥感を抱えながらも、アホみたいだった当時を思い出すとあー泣ける。オヤジになったもんです…。せっかくなので映画版のライブシーンのリンク貼っときます↓実写の芽衣子は宮崎あおい以外ありえなかったと思うわ。うん。

.とんかつDJアゲ太郎(全11巻完結) / 小山ゆうじろう

 

今までの4作品とはテイストがちょっと違うけど、ホント好き。主人公は渋谷にあるとんかつ屋「しぶかつ」の三代目を継ぐべく修行中のの勝又揚太郎(かつまたあげたろう)。渋谷のクラブに出前を届けた事がキッカケで、修行をサボってクラブ三昧の日々。そして、伝説のDJのプレイを見た時に、被って見えたとんかつを揚げる父の姿!キャベツの千切りを切るリズムとBPM(曲のテンポ)、皿(レコード)と皿(とんかつ)! 豚をアゲるか、客をアゲるかに違いはない。大切な事はことはグルーヴだ!とんかつとDJで世界をアゲるとんかつDJが誕生してそれからそれからってのがこの作品のストーリー。アホですわこの作品。笑「アゲる」のワードひとつで強引にストーリーを展開する悪ノリ感。1巻で完全にもってかれました。

 

ホントはこれを紹介するだけのハズだった…。コレは必読です。

ここまで名作をいろいろ紹介してきたけど、実はこの作品を紹介したくてここまで書いてたと言ってもいいかもしれない。

 

音楽と漫画 / 大橋裕之

一部に熱狂的なファン(ボクもその一人)を持つ大橋裕之の名作「音楽と漫画」別枠にしたのはテイストが違いすぎるとも、圧倒的にマイナーすぎるからとも言えるんだけど、本音を言えば大橋裕之と言うマンガ家を知って欲しいから。今まで、漫画好きな人ともいろいろ話してきたけど”大橋裕之”好きだって人にあんま巡り会えた事無いんだな。このゆるーい作風、社会の底辺(一般的にな)の人びとの日常を鋭い観察眼で切り取って笑いにするセンス。そして何よりこの人の作品は”ストーリーではなくって空気を読ませる”唯一無二の漫画家だと思ってます。

この「音楽と漫画」。主人公でヤンキーの研二が、ケンカの相談をする不良仲間の大橋と朝倉に突然「バンドやらねえか?」と口走るとこからストーリーは始まるんだけど、それを受ける大橋と朝倉の「ふむやってみるかヒマだし」と言うフリーズしながらのセリフ。その後、実は音楽のコトをなんも知らない研二が、後輩の部屋から楽器を盗んでくるもベース2本とドラム。ボボボボとしか鳴らない演奏だけど「今すげ〜気持ちよかった」と思う彼等。ひたすら続くゆるーい作画とゆるーい話なんだけど、ストーリーはどんどん疾走していき王道の青春ど真ん中バンド漫画に。ゆるさとアツさが同居して、そのギャップにどんどんヤラレていくんスね。ラストでなんか泣きましたから。この感じで。笑 なんてーか”衝動”の空気感がゴリゴリ漂ってるんだよな。ホントぜひ一度手にとって欲しい一冊。そして、大橋氏の圧倒的なセンスと表現力を体感して欲しいのです。そして、ファンを驚愕させたトピックもあって。実はこの作品が40000枚の書き下ろしと7年の歳月を経てアニーメーション化されたという事実。声も研二役をゆら帝の坂本慎太郎がやったりと豪華。関西でもコロナ前に上映が始まってたんだけど、ちょっと後回しにしていたワタクシ。4月の劇場上映も吹っ飛んでいつ見れる事やら。これが個人的にコロナの影響で受けた痛手のかなり上位だったと言う話しも…。

とりあえず予告載せときます↓

さてさて長々と書いてきましたが、普段マンガを読まない方もマンガから少し離れてた方もこのGWマンガに触れてみるのもいかがですか?また状況が良くなったらウチの店でそんな話しながら飲みたいもんです。ではまた。