第34回「幻覚剤は役に立つのか」マイケル・ポーラン (著), 宮﨑 真紀 (翻訳)

「幻覚剤は役に立つのか」マイケル・ポーラン (著), 宮﨑 真紀 (翻訳)
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LSD、マジックマッシュルームなどの幻覚剤を称賛するのではなく、一体どういう作用を人間にもたらすのかを、ジャーナリズムの視点から解明しようとした本です。

そして邦題の『幻覚剤は役に立つのか』の通り、自然界に存在する幻覚を見せる物質は一体何のためにあるのかということを探っていきます。

書いているのは胡散臭いジャーナリストではなく、『雑食動物のジレンマ』『人間は料理する』(この本はNetflixでドキュメンタリー化されている)などの世界的ベストセラーを持つフード系ジャーナリストです。2010年、「Time」誌の「世界で最も影響力を持つ100人」に選出され、またハーヴァード大学英語学部でライティング、カリフォルニア大学バークレー校大学院でジャーナリズムも教えている人です。

これくらいしっかりした人なのだが、この本の凄いところは、そんな人が違法薬物をちゃんと摂取してレポートしていることです。

彼がそこまで危険を冒して書いているのは、実は一番の理由は60歳を過ぎて、人生の曲りかどにきているからという感じが伺えてそこが面白いです。

年齢が近い僕もこの本を読んで、もう一度LSDなどの幻覚剤をやってみようかなという気持ちにさせられました。

彼も僕も、LSDがカウンター・カルチャーを起こしたのか、それともカウンター・カルチャーがLSDを広めたのか、という疑問を解明したい遅れてきた世代なのです。

LSDで革命を!という世代ではないのです。

僕はカウンター・カルチャーには遅かったのですが、カウンター・カルチャーの第2波と呼ばれるセカンド・サマー・オブ・ラブ、レイブでLSDとMDMA通称エクスタシーをやって神様を見た世代です。

そういう意味ではエクスタシーで革命を!と思った世代ではあるのですが、この世代はLSD世代の失敗を見ているので、醒めていた世代でもあるのです。

著者はレイブ・シーンには興味がなかったが、その前にマジック・マッシュールームをやっていて、なんとなく神様を見る一歩手間までは経験していたのだが、LSDやマジック・マッシュルームをやった人たちが見る神や、地球との一体感などを体験していなかったので、地下セラピストを何人も頼り、そういう感覚とは一体どういうものなのかと解明しようとします。

これが原題の『ハウ・トゥ・チェンジ・ユア・マインド』ですね。

「不安障害」「依存症」「うつ病」「末期ガン」などに幻覚剤は効果的な治療薬となるのかというのがもう一つのテーマです。

彼は残念ながら神を見たり、地球、宇宙との一体感、自我が溶ける感覚などは体験出来なかったのです。自我が溶ける経験はしたのかな、どう書かれていたか、忘れてしまいました。

自我がなくなることの大事さみたいなことを書かれていることはとっても大事な考察をされていました。

で、そりゃじゃそれを解明しようとしている科学者に話を聴くというのが最後のオチです。

そして、結論はというと、それがどういうことなのか、やはり分からないということなのです。

マジックマッシュルームもLSDも元々は自然にあったものです。なぜそのようなものを食べたら、人間は動物(たまに動物も食べるらしい)はそんな幻覚を見るのか?なぜそんな幻覚を見せる必要があるのか?その不思議を探そうとするのがこの本です。

そして、なぜこういう本が出されるかのようになったかというと、ティモシー・リアリーによって、社会不安を起こしたサイケデリック革命も、時代が経ち、落ち着きを取り戻し、またもう一度政府から許可を取って研究することが始まっているのです。

MDMAに関しては、医療大麻と同じような形で、医師の処方箋があれば、手に入る前段階まで来ているのです。

これらの幻覚剤を使ってPTSD、依存症、ウツの治療に使おうという時代が来ているのです。この状況が今現在どこまで来ているのか、ということが知りたくってこの本を読んだのですが、『人間は料理する』を書いた作者の本です。人間とは何なのかまで深く掘り下げていってくれます。幻覚剤を使わなくっても、幻覚剤を使ったかのような気持ちにさせてくれました。

幻覚剤を使わずに幻覚剤と同じような作用をさせてくれるもの、それは瞑想です。

この本を読んで瞑想と幻覚剤の関係性みたいなものがとってもフィジカルに分かりました。瞑想を教える人って胡散臭いじゃないですか、ちゃんとしたお寺で座禅を組んだりするのはいいと思うのですが。

後僕は今ダイエットをやっていて、毎日空腹状態で過ごしているので、ずっと座禅、瞑想をしているような状態なんです。その状態でこの本を読むのはハマりました。

ビートルズがインドに行ったのもこれですよね、幻覚剤を使わなくって、自然な感じで飛べる方法があるなら、それを習得したいでした。

お釈迦様が悟りを開くために頑張ったのはこういうことなんだろうなと思います。

2千年前くらいから人間は歳をとると「不安障害」「依存症」「うつ病」「末期ガン(死)」について悩んできたんだと思います。自分がなるのは仕方がないとして、家族のものがそうなった時、それはとんでもない負担になったんだと思います。だからお寺に預けたりして、修行(治療)をさせたんだと思います。あるものはちゃんと自分の病を理解し、克服出来たものもいたでしょう。

お釈迦様の教えって、精神病の治療に一番効果的なものですよね。

執着しない。

これをどう克服するかで、人間というのはどれだけ楽になれるか。

それが自我の壁が溶けて、世界と一つになるという体験を与えてくれるわけですが、幻覚剤はそれを一瞬にして見せてくれるわけです。

この過程をなんとか精神治療に役立てないかということを今研究してるわけです。

興味のある方読んでみてください。