VINYL日和見日記 其の2

8月も終わりましたが、とんでもなく暑い夏でしたね。今年オリンピックや夏フェス、お祭りなんかがあったら熱中症対策とかかなり大変だったのではないでしょうか?

イベントがない中の自分的2020年夏のトピックといえば、山下達郎さん初の配信ライブ「TATSURO YAMASHITA SUPER STREAMING」。キャリア初となるネットでのLIVE配信でしたが見ておいてよかったです。まあ、LIVEの現場を生業としているので、見る前は色々思うところがありましたが、LIVE中のアーティストの一挙手一投足を観察するには涼しい部屋のテレビ画面ほど集中できる場所はないなと。じっくり見たいな〜と思うLIVEで「横の人の歌っている声がでかい」とか「前のお客さんがデカすぎでステージ下手が見えない」だの集中できないことがあったりしませんか?

あと「これ座って酒飲みながら見たいな〜」とか。とはいえ録音物の楽しみ方とLIVEの楽しみ方は全然違うので、多少のストレスを感じながらも、アコギのフィンガーノイズが聞こえてゾクッとするようなピンとした現場の空気の震える感じも大好きなので、LIVEが心置きなく楽しめる状況に早くなって欲しいものです。

そしてもう一つ自分的に気になっていた夏の話題といえば、『CITY POP on VINYL 2020』なるキャンペーン。これは純国産アナログレコードプレス工場としては最大手「東洋化成」(私もレーベルをしている時には大変お世話になりました)が主催するもので、CITY POP on VINYLにエントリーされた新旧名盤CITY POPアナログレコードが店頭・オンラインショップで一斉販売されるというもの。

これまでに再発されているものも改めてキャンペーンカタログとして取り上げられたりしておりましたが、今期新たに加わったアイテムも多く、中古市場でかなり高騰しているレア盤も手軽な(とはいえ再発盤もLP¥3800とかなので手軽じゃ無いか?)値段で購入できるのでCITY POPファンには大変ありがたいキャンペーンと言えます。

まあCITY POPの中古市場が高騰しているのは、単純に需要があるからですが、その需要というのが海外も含めたムーブメントになっているからですね。実際この数年日本の中古レコード店で外国人を目撃する頻度もすごく高かったですし、知り合いの中古レコード店で「CITY POPアーティストのレコードないか?」と問い合わせてくる外国人が多数来店すると言っておりました。もともと海外の熱心なレコード愛好家達によるレアグルーヴとしての需要はあったと思いますが、ここまで大きなムーヴメントになったのは、主にはYOUTUBEで展開されている音楽「 Vaporwave」

と、そこから派生した「FUTER FUNK」のネタにCITY POPやアニメが多数使われたことがきっかけで、ネタ元であるCITY POPがムーブメントになっていったとか。

この辺の事に関しては、Michael Sabaというニューアトランタ在住の方が『シティポップとFuture Funkの台頭』なる解説動画をYOUTUBEに上げておられるのですがなかなか面白い。外国人目線なので日本のPOPS史に詳しい方からするとご指摘があるような部分もあるかもしれませんが、外国にいるからこそ俯瞰で見る日本のCITY POPの解説は、新たな気づきがあったりするので「なるほど~」と感心しております。

そして何より音楽への愛を感じるというところが大事なポイントです。

『シティポップとFuture Funkの台頭』

字幕版はtwitterで!

そんなCITY POPムーブメントの牽引している楽曲といえば、竹内まりやさんの「PLASTIC LOVE」。先にご紹介した「TATSURO YAMASHITA SUPER STREAMING」でも1986年演奏が流れていましたね。この曲は1984年リリースの竹内まりやさんのアルバム『VARIETY』に収められている1曲ですが、ここ数年カバー、リエディットとものすごい量の楽曲がリリース&インターネット上にUPされております。

「PLASTIC LOVE」が世界的なヒットとなったのは、YOUTUBEへ投稿された韓国のDJ・プロデューサー、NIGHT TEMPOのリエディットバージョンがきっかけと言われておりますが、実際再生回数も1000万越え。

YOUTUBEがきっかけでグローバルヒットになったと言うのも今時な話ですが、それもこれも楽曲のパワーがあってこそです。

そんな「PLASTIC LOVE」ですが、iTune、YOUTUBEの歌ってみた動画も含めるとかなりの数が存在するのですが、今回はこの数年リリースされた「PLASTIC LIVE」カバーの中から、7インチがリリースされているものをご紹介します。

ちなみに7インチリリースがなくて今回ご紹介できなかった中で、なかなかいいな〜と思うカバーはドイツ人アーティスト、Nicky Wuchingerによるエモ〜いカバーw。

また2018年に配信され、YOUTUBE再生回数250万再生を突破しているFriday Night Plansのカバーは2020年10月21日に7インチアナログリリースが決定!こちらも売り切れ必死だと思うので、転売ヤーが買い占める前に予約購入したいと思います。

TOKIMEKI RECORDS OH NO, OH YES! feat. ひかり c/w PLASTIC LOVE feat. ひかり

まずは、80年代の名曲カバーを数々リリースしているプロジェクトTOKIMEKI RECORDSによるカバー。イントロも長いしBPMが微妙に早いのかグッとフロアユースな印象です。アレンジもタイトでスッキリ。ヴォーカルもスムースな感じで最高です。カップリングに中森明菜さん86年のLOVE AFFAIR Light Mellowソング、「OH NO, OH YES! 」が収録されているのですが、アレンジに”エロ”モダンソウルの代表作「Between the Sheets」を引用しているところもなかなかのあざとさ!w(いい意味で!褒めてます!)。このVoのひかりという方もその辺の“匂い”を嫌味なく醸し出す艶っぽさがありますね〜。プロデューサーチームが彼女をVoに起用した意図がここにあるならこの「フリンソウル」アレンジは大成功です。

ちなみにVoのひかりさんは「Mime」というバンドもされているようで、8月に新曲をリリースされてます。汗をかいたグラスの冷えたジンより酔える東京発ネオエレクトリックソウル!ぜひアルバムサイズで聴きたいです。

9m88(ジョウエムバーバー)
九頭身日奈 c/w PLASTIC LOVE

台湾のR&Bシンガー、9m88(ジョウエムバーバー)による2017年リリースのカバー作品。シンコペーションのないルート弾きのベースも珍しくシックでスッキリしたアレンジです。PVは昭和の歌番組「ザ・ベストテン」をモチーフにパロってる感じなのですが、リアルに知っている世代なのでなんだかニンマリしちゃいます。昨年アルバムをリリース。曲はメロウでアンニュイな曲が多いですが、反面PVのアートワークやスタイリングはPOPでキッチュで洗練されてます。台湾のPOPアイコンといったところでしょうか。

LIVEを見てみたいです。

EMMA HAZY MINAMI
PLASTIC LOVE c/w テレフォン・ナンバー

EMMA HAZY MINAMIなる2018年デビューのヴァーチャルクラブシンガー。ヴァーチャルと言いつつ、中の人もいるのでいわゆるボカロ的なことではないです。主戦場はYOUTUBEやSHOWROOMだったそうですが、2020年2月に無期限活動中止。CITY POP以外にも、髭ダン、米津、ボカロの曲まで、かなりの数の曲をYOUTUBEにアップされてます。ヴォーカル、カバーアレンジなどなど、結構丁寧に作り込んだプロジェクトな印象ですが、活動休止とはやはり大人の事情なんですかね?7インチのカップリングが大橋純子さんのテレフォン・ナンバー(オリジナル大橋純子さんのバージョンリリース切望です!)なのですがこれもかなり良い感じ。これを聞いて中々こんな感じにぬけ感のある歌い方できる人はいないんじゃないかと思うので、またどこかで歌声を聞いてみたいモンです。

ちなみにPVではモデルのトリンドル玲奈ちゃんが不思議で可愛いダンスを披露!

tofubeats
PLASTIC LOVE c/w PLASTIC LOVE(KARAOKE)

続いてはtofubeatsによるらしさ全開なエレクトロアレンジカバー。Plastic Loveのように女性らしい心の機微やありようを表現するような歌を男性Voで聞くとき、多少違和感というのを感じることあるのですが、このカバーはスッっと入ってきますね。エフェクトのかかったヴォーカルが逆に熱量を抑えた感じに聞こえるのでしょうかね。tofubeatsといえば確かJET SET?だと思うんですがレコード購入特典で入っていたMIX CD「tofumix20120221」を長らく愛聴しています。非凡なるDJセンス感じまくりです。

星村麻衣
PLASTIC LOVE c/w PLASTIC LOVE(Instrumental)

こちらはシンガーソングライター星村麻衣によるカバー作品。トラックを手がけたのは、ファンキーモンキーベイビーズやケツメイシのアーティストのプロデュース、作曲、作詞、編曲を手掛けるヤナギマン。2005年に発売されたジャパニーズラヴァーズロックコレクション「RELAXIN’ WITH JAPANESE LOVERS VOLUME 4」からのシングルカットですが、2005年にこの曲のカバーをしているというのも名プロデューサーの先見性といったところでしょうね。とはいえシングルが2017年リリースなので、メーカー的にはリリースして乗っかるしかないって感じですかね〜。そんな野暮なことはどうでも良くなる裏打ちリズムのループが気持ちいい、ラヴァーズロックアレンジです。

https://recochoku.jp/song/S21007073

G.Rina&井の頭レンジャーズ
PASTIC LOVE c/w Rock Your Body

最後は、吉祥寺発のジャマイカンインストファンクバンド井の頭レンジャーズがG.Rinaをゲストに迎えリリースされたカバー作品。素敵な曲にならないわけがないという感じですね。大人で洗練されたオーセンティックなロックステディバージョン。ちなみに、カップリングはJustin Timberlakeの”Rock Your Body”のカバーでこちらも最&高!

↑7インチとはバージョン違います。

今回もコラムでご紹介したレコードでDJ MIX。今回はPLASTIC LOVEカバーと、それに合わせてかけたい曲をセレクトしてのサンドイッチMIX。1曲目の竹内まりやオリジナル以外は全て7インチ。今更?いや逆に今でしょうw。Got to Be Realのように名曲は繋げる曲が多いのです!

vinyl日和見mix其の2-SET LIST

1:PLASTIC LOVE / 竹内まりや

2:PAPER DOLL / monolog+Ai Ichikawa

3:PLASTIC LOVE / 9m88

4:明るい未来 / YONA YONA WEEKENDERS

5:PLASTIC LOVE / EMMA HAZY MINAMI

6:Cruisin’ feat. SIRUP / Shin Sakiura

7:PLASTIC LOVE / Tokimeki Records feat.ひかり

8:Star feat. Monday michiru / Initial Talk

9:PLASTIC LOVE / tofubeats

10:killer tune kills me feat. YonYon / KIRINJI

11:PLASTIC LOVE / 星村麻衣

12:くらげ / SU-PAKA-POOH

13:PASTIC LOVE / G.Rina&井の頭レンジャーズ

14:何度でも(Lovers Rock Mix) / APRIL SET