カレー屋店主の辛い呟き Vol.33 「ゆれる」

んぁー。暑い。仕込みをしながらボンヤリつけてるテレビのワイドショーから聞こえてきた「withコロナで経済を回して…」なんて台詞。そういや、うちのカウンターでも「経済を回さな!」なんてハナシよー聞くけどなんだかなぁ。経済が回ったからふわっと自分のところにも回ってくるなんてコト。もーないやろ。相変わらずボンヤリ顔で新橋でインタビュー受けとるキミ「経済をー」って。おまえにはその経済回ってこんわ。気づけよホンマ。そもそも、経済が回ったとて上本町のalleyな場所に建つ、うちの店にお客さんがジャンジャカ来るワケないやろがボケ。どんな状況でも必要とされる価値だったり、楽しく生きれるマインドだったり。こんな状況ならんでも、いち零細自営業者いろいろ考えとるわ。暑さのせいか、心の声をしっかり口に出しつつ進む仕込み作業。てか、マジで暑いなウチの店。熱中症でこのまま倒れて「コロナで経済的にシンドイ大阪上本町のカレー屋店主が、節約の為クーラーを切って仕込みをしてたところ、熱中症で店内で死んでました。」「これもコロナによる悲劇の一つですねー」なんてニュースになって笑い取ったろか。いやいや…。少しクールダウンや。ちょうど仕込みも一段落。クーラーをつけ、ボケなワイドショーを消し、タバコに火をつけ、店のライブラリーから音楽をポチリ。

「ゆれる」evisbeats feat田我流 
PVもええよなー。5:07あたりの内田裕也のサンプリングも含めて 笑

当店のBGMのライブラリー一曲目はずーっとこの曲。 「この心がゆれる時がある。それはバイト帰りのサンセットだったり〜たまたまDIGした一枚のVINYLだったり〜生きてるって実感を味わうその瞬間ほんの一瞬、その一瞬を求めて〜」初めて聞いてもう9年弱か。感傷に浸りながらどんどんクールダウンしていくカラダと気持ち。「社会から見れば窓際の人、でもいつに生まれても俺は俺だと〜」進むエレピとドラムのワンループ。シンプルだからこそのクラシック。「今日は残りの人生の始めの1ページ まだまだやりたいことが山積みさ〜SWINGしてBOPしてHIPしてHOPだろ〜」ってな。さぁ今日も気持ち切り替えて頑張ろか。

まだまだ暑いっすね。ミナサマいかがお過ごしですか? 大阪・上本町のカレー屋兼飲み屋店主の”ふぁにあ”と申します。ダラダラと書いた当店のある日のいちシーン。「誰かがゆれるための曲をかこうぜ〜」と唄うこの曲にずーっと「ゆれる」んだからこの曲ホント名曲だわ。“みんながゆれる〜”じゃなくて“誰か”なんよ。そーゆーリリックの端々に、彼のパーソナルな部分が感じられてスッと入ってくるchillな曲。僕もいつか「誰かがゆれる為の一皿」を作れりゃいいんスけどね。SWINGしてBOPしてHIPしてHOPしながら日々精進っス。さてさて、今回は“たまたまDIG”したある名盤のおハナシ。少しの偶然が重なって僕の手元にやってきたこのレコード。この曲も20年以上僕をゆらし続けてるワケだ。

■William DeVaughnとの出会い

一番始めにこの人の曲に出会ったのは、たぶんclub。ベロベロのアタマでえー曲やなーと思ってたんだろーけど。今と違ってスマホが無い時代。次の日気がつけば忘れてて。レコ屋に行っても分かんない。そんなループが何回かあって。だって、だいたいこの人の曲がかかるのは本編終わりのAfterHoursの時間。夜中じゅう遊んで、ベロベロなんだから覚えてないし 笑 でもそんなアタマとカラダに優しく響いた曲だったんだな。んで、しばらく経った2000年の始めの頃。渋谷の中古レコード屋さんで(どこか忘れた)このアルバムのジャケットを見てなんか気になって聴いてみたら「!!!」ってなって即購入。今と違ってフィジカルにレコ屋を回ってるうちに引き寄せた、アナログな時代の美しきワンシーン。早くしっかり聴きたくて友達の家に向かう時のワクワク感とかさ。「昔はよかった!」なんて、おっさんにはなりたかないので言わないけど、想像してみてくださいな、そん時の状況。スマホ世代のミナサンに「うらやましいだろー!」とは言いたいワケだ。ジャケットからのインスピレーション。情報が少ない方が結果オモロいこともあるわけさ。

William DeVaughn「Be Thankful For What You Got」(1974)

そして、このレコードを手に入れ、William DeVaughnてシンガーと、知りたかった曲のタイトル「Be Thankful For What You Got」が分かって調べてみると、この曲実は超有名曲やったってオチもついて。Massive AttackやYo La Tengoがカバーしてたり、De La Soulがサンプリングしてたり、沢山のレゲエカバーがあったり。なんで出会わなかったのかね。これもアナログな時代のあるある。今なら確実にたどり着いてるもんな。

Massive Attackのカバー (1991) ストリッパーが踊ってるだけのPV。これokやったんやね。

彼William DeVaughnが出したアルバムは後にも先にもこれ一枚。そもそもこのシングル曲「Be Thankful For What You Got」を作った時、彼は公務員時々シンガーだったらしく、この曲のデモを送ったフィラデルフィアの音楽制作会社オメガ・サウンドに「レコーディング費用を払ったらレコードにしたろか?」と言われたんだそう。金の無かった彼は提示額の1400ドルを900ドルに値切ってレコーディングしたとかしないとか笑 ただこのレコーディング。そのオメガ・サウンドのプロデューサーが当時の人気番組「SOUL TRAIN」のバックバンドをしてた人気絶頂のフィリーソウルの演奏集団MFSBのメンバーだったコトで、低予算だけどMFSBのスゲーメンバーが集まったんス。(慣れない英語のwikiとか、英語のページからなんで間違ってるかも笑)

MFSBのK-Jee(1975) サタデーナイトフィーバーの名シーン!

そして、この頃のフィラデルフィアソウルの最大の特徴の豪華なストリングスが、この「Be Thankful For What You Got」には無くてってのも低予算だったからこそ。メロウなMFSBの演奏と、同じくMFSBのヴィブラフォンの巨人ヴィンセントモンタナの音だけが入ってて、これが後にアシッドジャズのムーヴメントを通過したMassiveAttackやDJ達にはクールで新鮮に聴こえたんだろな。知らんけど笑。低予算が生んだミラクル。もちろん名曲だからなんだけど、1990年代後半にclubでかかってたのはそんな理由もあったかも。その結果繋がった僕の手元の一枚のVINAL。まぁあくまで勝手な想像やけど、低予算がゆえに出来た名盤ってサブストーリーがあってもオモロいよな。

その後「Be Thankful For What You Got」のヒットを受けて作られたのが、上の写真のアルバム。この表題曲含め、圧倒的にメロウ。個人的には夏の終わりの午後なんかにピッタリの名盤かと。

そして、こんな素敵な名盤に会うことが出来るんだから“DIG”するコトはやめられない。今の時代逆に掘ろうと思えばいくらでも掘れるから、レコードに限らずね。いろんなコトに興味をもって「ゆれる」瞬間を味わいたいわけだ。では今月はこのあたりで。

ホイミカレーとアイカナバル / 店主ふぁにあ

〒543-0031 大阪府大阪市天王寺区石ケ辻町3−13

ホイミカレー:毎週火木金12:00-売り切れ次第終了 アイカナバル:月—土18:00-23:00