第35回 ゾンビとの論争:経済学、政治、よりよい未来のための戦い ポール・グルーグマン(著)山形浩生(翻訳)

ゾンビとの論争:経済学、政治、よりよい未来のための戦い ポール・グルーグマン(著)山形浩生(翻訳)
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僕の好きな経済学者ポール・クルーグマンの新書が出たのでその紹介です。僕は経済学者がロック・スターくらい好きなのです。その中でも一番なのが彼なのです。

現在のクルーグマンは経済学者というよりNYタイムスのコラムニストみたいな人です。この本もそのコラム(オピニオン)をまとめた本です。まとめたと書きましたが、ブッシュ、オバマ、トランプ時代を網羅したオピニオンで、アメリカがどうなって(どうもなってないか)きたかということが分かります。

アメリカが20年間停滞してのがよく分かります。日本のことは一切書かれていないですが、日本もずうっと同じ状況だったな、僕も20年間、何もせずに生きてきたなと痛切に思ってます。

これはアメリカの場合は共和党のせいです。日本だと財務省のせいです。

共和党はみんなのために頑張りますと言いながら、選挙に勝つと1%の金持ちを優遇する政策を分からないようにやってきたわけです。そのトリックを孤軍奮闘、解き明かしてきたのがクルーグマンです。

時にクルーグマンが勝ったりしてるのです。だかが新聞のコラムとは言え、社会に貢献しているわけです。財務省の手先として、増税は善といい続けてきた日本の新聞、TVとは大分違うわけです。

日本がデフレに落ち入ってると一番最初に気づいたのがクルーグマンです。理論上だけのものと思われていた“流動性の罠”が実際に起こると思っていたクルーグマンは日本を研究し、日本が完全に“流動性の罠”状態(デフレ状態である)と、といち早く気づいたわけです。

“流動性の罠”とは、ケインズ派の経済学者ジョン・ヒックスが発案したもので、金利水準が異常に低いときは(日本ですね、その後アメリカ、ヨーロッパもそうなりました)、貨幣と国債がほぼ一緒になってしまうため、いくら金融緩和(国債を発行しても)を行っても、景気刺激策にならないという状況を示すものです。不況状況では金融政策が効かなくなるかもしれないことを示したものです。

クルーグマンはなぜこういうことを研究したかと言うと、経済学にはケインズ派(リフレ派、金融政策派)と新古典派経済学の2派がいるわけです。この2派が喧々諤々戦っているわけです。正確に書くと戦っていたわけです。でこの本のタイトルの由来『ゾンビとの論争』です。新古典派経済学と言うのはこの戦いに完全に負けていて、ゾンビ状態なわけです。もう誰も新古典派経済学が正しいとは思ってないわけです。でも新古典派経済学のやつらはずうっとゾンビのようになかなか死なない、ひつこくあきらめないという話なのです。

新古典派経済学と言うのがどう言うのかと言うと、その名前の通り、ケインズ以前の経済学、一言でいうとアダム・スミスの“神の見えざる手”を信じている人たちです。

“神の見えざる手”というのは、市場経済の自動調整機能のことで、経済活動を個々人の私利をめざす行為に任せておけば、“神の見えざる手”により社会全体の利益が達成されると言うやつです。要するに100円のリンゴを1000円で売ろうとしても、誰も買わないから、いつかは100円の値段に落ち着くという理論です。

ようするにほっとけばなんとかなる、いや何もしない方が“神の見えざる手”効果でうまくいくと、誰もがそう思っていたわけですが、前回の大恐慌の時にそうしていたら、状況はどんどん悪くなる一方だったので、ケインズの理論を取り入れたニュー・ディールという政策(最低賃金の確保、労働時間の丹祝、政府が投資をし、公共事業をやり仕事を作った)を始めたら、大恐慌を脱することが出来たのです。

しかし、その方法も70年代、80年代の不況を脱せなかったことから、もう一回アダム・スミスのやり方をやろうと出てきたのが新古典派なのです。

でもそれがうまくいかなかったので、またケインズ派が力を持っているというのが、今の経済学なのです。

だから今回のコロナ騒動も、放っておくのではなく、お金を配るという政策をやっているわけです。みなさんが10万円貰った背景にはこういうことがあるのです。新古典派の人が力を持っていたら、何ももらえなかったのです。

あのコロナの時にアホな政治家が「これであかん企業は淘汰されるからいいんじゃない」と言った人がいましたが、こう考える人は新古典派に影響されている人なのです。

経済をミクロ(小さく)で考えていて、マクロ(大きく)で考えていないのです。

アメリカで共和党なんかがやっていることはこれなんですよ。いまだに経済なんかほっといたらちゃんとした形に収まると思っているのです。でもそんなことしてたら、金持ちだけが特をする世の中になるのです。

共和党はこの理屈を利用して、金持ちがもっと金持ちになれば、下のものも潤うという理屈を考えていたのです。それがレーガノミクスとかビッグバンと呼ばれた規制緩和だったわけですが、でもそれだと何一つよくならなかったわけです。

で今はケインズ派が勝っているわけですけど、新古典派はゾンビのようにひつこいというのがこの本なのです。

ミック・ジャガーは60年代の政治の時代、“ロック・スターは何も出来ない”と歌いましたが、経済で本当に人を救うことは出来るんです。みなさんも経済勉強してみませんか、面白いですよ。不況だって、じゃヘリコプターでお金を撒いたらいいだろうとか、そんな過激な意見が実はちゃんとした理論の元にあるんですよ。日本だと高橋洋一(クルーグマンが教授をしていたプリストン大学に留学していた)とかの本がおすすめなのですが、反安倍の人には高橋教授の本は進められないので、クルーグマンの本からまず読み出してみてはどうでしょうか。

日本の場合は新古典派の理論を自分たちに合うように変えて、ケインズ的な財政出動はやめて、赤字を直せば、景気がよくなるという意味不明な説明をずっとしているわけです。これが消費税を上げていく理屈になっているわけです。

不思議でしょ、財務省は、日本の赤字がなくなったら、民衆の気持ちがすっきりして、日本の景気が上向くという理解不能のことを言っているわけです。

誰が聞いてもおかしいと思うこの理論をメディアの人は疑いもせず、その通りだ、増税は仕方がないと言っているわけです。

僕たちのゾンビは財務省、メディアなんです。みなさん、戦いましょう。