第36回ブループリント『よい未来』を築くための進化論と人類史 ニコラス・クリスタキス(著)鬼澤忍・塩原通緒(翻訳)

ブループリント:「よい未来」を築くための進化論と人類史(上) ニコラス・クリスタキス(著)鬼澤忍(翻訳)塩原通緒(翻訳)
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今月も音楽の本じゃないんですけど、ユヴァル・ノア・ハラリの『サピエンス全史』『ホモ・デウス』に匹敵する重要な本なので、紹介させてください。

僕は、一般教養をつけるために外国で話題の本、オバマやビル・ゲイツが読んで面白いと言った本を読んでいます。

この本もその一つで、どんな本なのかも分からずに読んでいたんですが、衝撃の内容でした。『ブループリント』、しょうもないタイトルだなと思って読み始めたのですが。

サブタイトルの“「よい未来」を築くための進化論と人類史”を読んでいなかったのです。社会ネットワークの作り方みたいな本かなとは思っていたのですが、始まりが、人間というのは本当は一夫一婦、一夫多妻、一妻多夫、どのシステムの動物なんだろうか、という話になっていって、一体この本は何を語っているんだろうとこんがらがってました。

正確に書くと、コミューンはなぜ失敗するかのかという話から始まっているのですが、コミューンですよ、あのヒッピー時代の産物、コミューン、それが人間の理想の家族の形、理想の社会形態とは何なのかという話につながっていくのです。

作者はちゃんとした学者なので、しっかりしたデータのもと書かれています。

学者なので、こうだといいきってないところが歯痒いところでもあり気持ち悪いのですが。ユヴァル・ノア・ハラリの本は人間とはこういう存在なのだと言い切っているから、あの本は分かりやすいんですけどね。

『サピエンス全史』の副読本として読むといい本なのかもしれません、いやそれ以上に最後は人間としてどうやって生きていくのか、愛のある答えがあると思います。たくさんの人に読んでもらいたい本です。

なぜ温暖化がダメなのかの、明確な答えがえられると思います。

『サピエンス全史』にも、人間は共同体で子供を育てていたのか、それとも夫婦単位で育てていたのか、どちらなんだろうという話が出てきます。男性のオルガスムスは一瞬にして冷め、女性のオルガスムが永遠に続くのは、たくさんの男性を受け入れるためではないかと説明されていたと思います。

他の動物に襲われる危険性があるのになぜ女性は声を出すのか、それは他の男性を引き寄せるためなのではないか、女性はそうやって一回のセックス の時にたくさんの男性を引き寄せることによって、自分の子が誰の子か共同体の中で誰の子か分かりにくいようにすることによって、共同体で育てられるようにしたのではないかと、男性が射精後、冷めてしまうのは、諍いを起こさないためではないかと。

この本でもそういう考察がされています。環境が厳しい場所では男性二人から支えれながら子育てをした方が、子供をちゃんと成人にさせる確率が高くなると。

というか、コミューンの研究をちゃんとしていた人がいたというのはびっくりしました。コミューンというのは僕は大きな集団みたいなのが多いと思ってたんですが、大体六人から60人くらいという集まりらしくびっくりしました。それくらいだったら、僕も仕切れるんじゃないかと思ったのです。

なぜコミューンが失敗するかというと、人間の自然の形を取り入れようとしないから、失敗するとかかれてました。コミューンというのは組織を維持するために、フリー・セックスにしたり、コミューン内での恋愛を禁止したり、子供を夫婦から離して、コミューンで共同で育てたりするなどの、歪つがコミューンの存続にマイナスになっていくのではないかと考察されてました。

海外のコミューンがどれもうまくいってないのはびっくりしたんですが、日本のコミューンの方がうまくいっているのかなと思いました。日本のコミューンの代表例は幸福会ヤマギシ会ですが、日本人というかアジア人の方がコミューンの形成にうまくいく遺伝子を持っているのかと思いました。

そうなんです、このお話、遺伝子の話になっていくのです。

人間も動物なんだから、遺伝子の中に、一夫一婦制、一夫多妻、一妻多夫制になる遺伝子が刻み込まれているだろうと考察されているのです。

ではなぜ、場所によって、一夫多妻、一妻多夫制を選択するエリアが生まれるのか、それはその場所の環境では一夫多妻、一妻多夫制を取り入れていかないと繁栄していかない理由があったからだと。遺伝子もまたブループリントでしかないだろうという話なのです。

“必然的な社会への青写真という概念は、明かに一種の決定論だろう。だが、ことはそう単純ではない。私たち人類は遺伝的遺産の欠かせない一部として、皮肉にも、生物学的に完全に束縛されずにいられる素質を受け継いでいる(説明しますと、環境によって夫婦形態を変えれる動物なんて、ほとんどいないんです)!ホモ・サピエンスがどれほど多様な住環境で生命をつないで繁栄してきたか、そしてどれほど文化の才能を進化させてきたかを考えれば、これよりも柔軟な生物は地球上に存在したためしがないだろう。人類は、そのときどきで直面した無数の状況に、このうえなく器用に(協力と友情と社会的学習を頼りに)対応する才能を進化させてきた。この才能をもって、遺伝子によって培われた一種の制限つきの柔軟性を発揮しているのである”

すごいでしょ、そして話はそんな僕たち人間も他の動物と何ら違いはなく、地球、宇宙の一部なんだ、だから環境、他の生き物を大事にしないといけないという話になっていくのです。

人のつながりが個人と社会におよぼす影響を解明したネットワーク科学の先駆者として知られるイエール大学ヒューマンネイチャー、およびイエール大学ネットワーク科学研究所所長が書いた興味深い本です。