カレー屋店主の辛い呟き Vol.35 「VICE」

「54-71」ってバンド皆さん知ってんのかな? youtubeをボンヤリ見ていると中の人に “あなたへのオススメ”といって定期的に昔のLIVEの映像を紹介されるこのバンド。いや、何度も見てるんやけど…と思いながらもついつい見てまうこのバンド。先日も、もう何度見たか分からんLIVE映像を見ながらふと「これ、動画見ながらヘラヘラしてるオッサンに喝を入れる為に、何かの力が働いて定期的にこのバンドの映像が流れとるんやなかろか…」と思ったオモシロ陰謀論。でも、忘れた頃にオススメされるこのバンドのLIVE映像のおかげで、バンドが休止(やったんかな?)して早や10年ほど経っても未だに大好きなバンドなんス。なんかいつも喝入れられる感じになるねんな。やるねyoutube先生!

Voビンゴ氏ヌルヌルテカテカの“松尾伴内”期のLive。なんでこのカッコになったか知らんけど笑

ハードやけどスカスカ。HipHopやハードコアのDIYな精神を体現したようなそのステージを見ていると、もっかいやらねーかなーと思う反面、バンド休止後のビンゴ氏と川口氏(B)の動きもなんとなく理解と共感が出来るから困ったもの。でももったいないよなー。

さてさて。肌寒くなって来ましたね、ミナサマいかがお過ごしでしょか? 大阪・上本町のカレー屋兼飲み屋店主の”ふぁにあ”と申します。いきなり54-71の話をしてもーたけど、ほんまにしたいのは「VICE」とゆーメディアの話。ってのも、今の「VICE Japan」の社長が54-71の佐藤ビンゴ氏で、編集長が川口賢太郎氏。そんな関連もあってyoutubeで54-71の映像を見るとVICEの動画が関連で出てきて、しばらくVICE関連の映像をループするってのが個人的あるある。んで、そのコンテンツがオモロいから店で話してみても意外とVICEのコト知らないんだ、みんな。んなワケで今回は「VICE」のコトとか、コンテンツのコトとかお話しできればって思ってさ。

■VICEってなーに

カナダのモントリオールで創始者サルーシュ・アルビが、パンクやセックス&ドラッグetcの記事をまとめた16pのタブロイド型のフリーペーパー「VOICE」(上写真左)を作ったのが1994年。それが、カラー化してマガジン型の「VICE MAGAZINE」になって、そこからいろいろな定番企画が生まれていくんやけど。中でも、今や世界を席巻する写真家になったライアン・マッギンレーの発案で初期の頃から始まったPHOTO ISSUEの企画は、その後大人気かつ定番の企画に。彼が連れてきた(のかな?)テリー・リチャードソンとか、ティム・バーバーとか、僕も大好きなダッシュ・スノウ(上写真右 オーバードーズで亡くなってからVICE表紙に使われた盟友ライアン・マッギンレー撮影の写真)とか。数々の写真家とタッグを組んで展開される、エクストリームかつ、ストリート感溢れたページの数々は日本に住んでる僕のトコロまでがっちり届いてさ。一撃で目に飛び込んでくる何より雄弁な一枚の写真の力。それを生かすクリエイティブ。企画の切り口の鋭さ。で、そんなモノがフリーペーパーで日本まで届くて…。雑誌メディアにいた僕に「あーおれ何しとるんやろ…」と絶望感を感じさせ、会社を辞める遠因の一つになった(そんなカッコえー話だけじゃ無いけど…笑)のちゃうかと今考えると思うわけ。マジで衝撃やったし、どうやったらこんなコトになるのか分からんかったフリーペーパー。それが「VICE」やったな。まぁ歴史の話はVICEのサイトに表紙のカバーとともに語られてるページがあるのでこちらをドーゾ。

https://www.vice.com/ja/article/437nnp/the-photo-issue-japan-edition01

それで、少々脱線するよーな話やけど。VICEを語るには外せない、写真家のダッシュ・スノウを個人的に熱烈に追いかけてた時期があって。彼は有名な写真家なんやけど、破天荒すぎる人で。なんてーか彼そのものがアナーキーでアート。壁にダギングすると怒られるから、ホームレスにダギングして撮影したり、ハムスターの気持ちを知りたいと電話帳を死ぬほど破って敷き詰めた空間で、大音量のバンドの演奏の中ドラッグを摂取するインスタレーションを行ったり(ワールドクラスのアホ…)。最終的にヘロインをやりすぎて死んでもたってニュースを聞いて、まぁそやろな…と納得したり。むちゃくちゃな生き様やったけど、残してくれた写真は、なぜか崇高やし、現場に居なくても伝わる空気感が詰まってて、VICE=ダッシュ・スノウってのが、VICEがどんなフリーペーパーかを説明するには一番簡単なんかな?って個人的には思うねんな。実話ナックルズ的な(これもオモロくて好きやけどね)ヤバいもんが…!ってゆー文脈で語られがちやし、たぶん日本では私たちとは違う世界の話やから触れんとこって思われがちで残念やけど、圧倒的なクリエイティビティでアートに昇華(本人達の意図はさておき)させつつ、その空気感を切り取って目の前に突きつける姿勢がVICEにも、ダッシュ・スノウにもあったからこそ、この両者が共鳴しあったんやなかろかと。んで、VICEってそんなフリーペーパーですよってコトなんやけどさ。(ん。分からんか…笑)

その後VICEは映像メディアに参入して、世界中の若者たちを虜にするデジタルメディアに成長して行くんやけど、その規模は、VICE単体で全世界で月間5000万ユニークユーザーを超えて、VICE関連のメディアも含めると月間2億5000万~3億ユニークユーザーとエラいコトになってるワケ。話を最初に戻すと、その日本ブランチの社長と編集長を54-71のメンバーがやってるという事実。あーオモロいよなー。

■個人的にオモロかったVICEの映像集

今や巨大なメディアになってしまったVICEやけど、その姿勢はフリーペーパーを作ってた時代から何にも変わってなくて、とにかくヤバそーなモノや事柄があったらとにかく突撃して、そのまんまを撮影。んで、クリエイティビティを持って作品に仕上げるって手法をとったコンテンツが沢山。アメリカの若者の中では、全米ネットのfoxやCNNは利益の誘導やフェイクばっかで信用ならんってコトで一番信用できるんはVICEや!って意見もあるよーで。昔は、グラフィティやスケートカルチャー、ドラッグやギャングなんかのある種エクストリームなカルチャーを追ってたのが、世界が狭くなって世の中を見回して見るとISだったり、シリアの問題だったり、世界そのものがヤバいコトになってた。んなら独自の切り口で、そのまんまを見せたろかい!ってコトなんかな。VICEは今世界の30拠点ほどでコンテンツが制作されてるんやけど、分厚い制作ガイドラインというものがあって、カメラの設定からレンズの選択、アングルのバリエーション、インタビューのロケーションまで、細かくルールが決められてるそう。その世界観とクオリティーを保つことが、素人YOUTUBERの突撃レポートとも、既存メディアのドキュメンタリーとは大きく異なるモノを作れてる理由。やっぱVICEって単なるプラットフォームでは無くて、フリーペーパー時代から変わらん独自性を持ったメディアなんやろね。

さてさて、VICEの説明はこのくらいで。見始めるとキリがないくらいのコンテンツの中からいくつか個人的にオモシロかった映像を貼ってくね。

「Heavy Metal in Baghdad」 Trailer

まず始めにVICEの歴史を変えた重要な超有名作。創始者のサルーシュ・アルビが監督をして戦時下のイラクへ突撃。CNNや世界中の既存メディアが戦場の最前線の戦闘を伝える中、VICEは現地のメタルバンドを長期取材したんやけど、そこには戦場のリアルじゃなくて現地のリアリティが詰まってるねんな。VICEのドキュメンタリーに共通する現場の息遣いや、企画の斜め上さとかが全部詰まってる名作。イスラムの若者も、戦火の中でも、ある種敵性音楽のアイアンメイデンが好きなやつも、いっぱいおるんやでってな。池上彰さんは教えてくれへんからね笑

「noisey Bompton」

N.W.A.の自伝映画「ストレイト・アウタ・コンプトン」なんかでもよく知られてる、全米ワーストの犯罪の街コンプトン(Compton)のシーンの話。BloodsとCripsの2大ストリートギャングを中心に、殺人、強盗、麻薬取引などの凶悪犯罪が日常的に発生しているこの街は、この撮影の時期にゴリゴリのスーパースターになっていったケンドリック・ラマーの故郷なんやけど。この映像を見てから彼のアルバムを聴きリリックを読見返すと、彼のリリックの意味がより深く分かるのよ。彼と彼のクルーそして彼の幼なじみが登場するんやけど、彼の幼なじみはBloodsのメンバーで対立するCripsの「C」を認めないから「コンプトン(Compton)」じゃくて「ボンプトン(Bompton)」。んー分からんけど…。ただ、それを語る冒頭のスヌープ。スターオーラ出てますわ。

How a Train Tunnel Became the Center of NYC’s Art Scene

伝説的グラフィティ・ライター”FREEDOM”ことクリス・ペイプが、NYマンハッタンのリバーサイドパークの地下にある鉄道トンネル「フリーダム・トンネル」のコトを語る貴重な映像。彼が80年代後半に、このトンネルの壁にグラフィティの歴史の中でも、マスターピース的作品をいくつか制作したことで、この名前が付けられたワケ。このトンネルめちゃめちゃ有名で、ファインアートの歴史に残るよーな作品がゴロゴロあって、この映像の中でも彼の作品がめっちゃ出てくる。グラフィティ初期からずーっとシーンを追ってたVICEならではの一本やね。

旧車の祭典でコール最強を目指すバイク女子 – Q-1 GRAND PRIX EP01

家が大通り沿いなんで、週に何度か通る族の爆音ホンマ迷惑。“コロシタロカ”って思うこと度々やけどこのQ1のシリーズは一周回って個人的にツボ。既存のドキュメンタリーやと、彼女の背景とか日常を掘り下げたりするんやろーけど、作り手側の余計なナレーションと作為が無いから、途中から彼女がアスリートに見えてくるんやね。なんてーかちょっと応援したなるとゆーか笑 でもこいつらうるさいよなーって感覚もあってさ。なんか不思議な感情になるねんなー笑

Party Legends: Snoop Dogg

だいぶ前のパーティーのオモシロ話シリーズ。いろんなアーティストがパーティーのオモシロ話をするだけなんやけど…。アニメーションのかわいさもあって好きなシリーズやったな。このスヌープ編もそーやけど、だいたい「ナンやそれ!」って突っ込みながら楽しんでます。字幕もあるよ!

さてさて。ミャンマーのクレイジードクターシリーズとか、北朝鮮潜入シリーズとかまだまだ紹介したい映像は沢山あるけど、キリないか笑 でも共通してるのは、理解できないコトや場所に突撃する有り余る好奇心と、ナレーションやテロップなどを極力省いた映像で、“リアル” ではなくてその場の”リアリティ” を追求する撮影手法とクリエイティビティ。法律や、社会常識の先を見せることで、視聴者の感情を揺らすエンターテインメントの感覚。日本や既存のメディアのドキュメンタリーと違って、取材の意図や、解説を極力排除してありのままを見せて、視聴者にぶつける姿勢は論理的に語ることが是とする日本のような社会には絶対に必要やと思うねんな。まぁブルースリー師匠の「考えるな!感じろ!Don’t think! Feel」ってコトなんやけど。なんかこの〆前にも言った気がするな… 。 まっ、また来月!

ホイミカレーとアイカナバル / 店主ふぁにあ

〒543-0031 大阪府大阪市天王寺区石ケ辻町3−13