実録 関西パンク反逆の軌跡 その2

サケデリック・スペース酒游舘は西勝酒造の明治蔵(1904年築)を改装した多目的ホール。1992年開館。演奏会場としては木造土壁ならではの温かく柔らかな響きがアコースティックなサウンドに最適で内外のミュージシャンから絶賛されている。今では滋賀県最古の民間ライブ会場である。

1988年秋、私は滋賀県にUターンして家業の西勝酒造を継いだ。社長(父親)の「倉庫にしている明治蔵を改装して酒の販売促進に繋げる」に釣られてしもうた。
社長のイメージは日本酒の資料館+試飲・販売場。私は京都大学西部講堂の様な多目的スペースを思い描いていた。場所さえ確保出来たら運営していける自信はあった。西部講堂で体験した先鋭的でバラエティに富んだイベントからノウハウを学んでいたからだ…

1979年2月15日「ストラングラーズ」(写真)
私の大学受験は私立文系専願だったので2月早々に終了。禁欲的な1年間の浪人生活から開放され後は野となれ山となれ、晴れ晴れとした気持でストラングラーズ京大西部講堂公演に向かった。これが西部初体験。オール・スタンディング・コンサートも初めて。瓦葺きの殺風景な建物に入場すると黒い頭がひしめいていた。暖房は無かった。満員とはいえ真冬の京都、足元から冷えて来るのには参った。場内で煙草を吸えるのにも驚いた。ストラングラーズのラスト曲「トイラー・オン・ザ・シー」終盤でシンセサイザーの爆音ノイズがステージ左右のスピーカーに移動するのに圧倒された。生ノイズもこれが初体験。西部講堂は木造なので演奏音が外に漏れる。密閉空間では無いため大音量でも耳に優しいと後で腑に落ちた。

同年6月2,3日「クロスノイズ」(写真)
ステージは西部講堂客席の前から1/3ほどのコンクリートで段がついている辺りに敷いた平台。会場に元からあるステージを使用しないで演目に合ったレイアウトでパフォーマンスを呈示する手法が参考になった。照明は白色光一発のみだったが却って音楽に集中出来た。コラム「特殊音楽の世界」を連載中の石橋正二郎さんの企画(注1)だった。翌3日、私は丸山野外音楽堂へジミー・クリフを観に行った。後で聞いた話ではこの日は講堂中に竹田賢一のVeddaが紐を張り巡らし全身白塗りの舞踏家がパフォーマンスを行った由。参加者全員による音出しも行われ出演者と観客が対等なのはパンク/NWの時代に相応しいと思うた。

同年6月23,24日「封印された星〜ダダからシュールへ映画特集」(写真)
山下信子さんの企画。後で毎年恒例と知った。
週末の午後、埃っぽい木製ベンチに座って異端のモノクロフィルムに目を凝らした。2日に亘る至福の映像体験だった。幕間にはウルトラQの劇伴の様な不穏なムードを醸す5/4 拍子のミニマルな曲が延々と流れていたのが忘れられない。あれは山下さんのオリジナル曲だったのかしらん。

真夏の京都はじっとしていても汗が出るほど蒸し暑い。ところが西部講堂には冷房設備も無い。

同年8月22日「WORLD NEWWAVE CIRCUS」(写真)
チラシに「少しでも、涼しくする為、対策を考えています」と書かれていた。入場すると場内のあちらこちらに氷柱が立っていた。見た目には涼しかったが焼け石に水。XTCがMCで「It’s warm here!」とボケをかましていた。経費を掛けずに知恵を使って難局を乗り切る逞しさを教えてもらうた。

同年12月31日「REVO’80」
西部前の広場でヒッピーのおっちゃん達に混じって餅搗きに参加した。餅をよばれてドラム缶の焚き火にあたり冷や酒を呷った。多様性を容認する開放的な雰囲気に浸り19才の私は大人になった気がした。
私達スーパーミルクの演奏中は爆竹が炸裂し呑めや踊れやの祝祭ムード。野次られはしなかったが音さえ鳴ってたら何でも良かったんやろなぁ。
事前に前売券を預かったのだが私は1枚も売れず。当日に残券を持って行くのを忘れて有耶無耶に(写真)。主催者の津島良介さんは15万円くらい赤字を被った。音楽性はパンクでも精算責任は果たさなあかんと反省した。この場を借りてお詫びしたい。

…明治蔵改装にあたり私はプランナーと共に東海から関西一円の酒蔵を改装した施設をリサーチして回った。ほとんどが資料館だった。規模の大小はあれ、どこも一回観たら充分な内容だった。
私は社長に「集客を上げるにはリピーターが必要、それには常設展示だけでは不十分、様々なジャンルのアーチストの展示、コンサート、映画上映、演劇、落語など出来る事は何でもやるべき」と提案。これは承認され私は酒游舘で自由にイベントを企画・開催する権限を得た。

1992年12月1日に酒游舘は開館。
杮落しは1993年3月26日の三上寛さん。大津市出身のダンシング義隆さん(誰がカバやねんR&Rショー)が観に来はって「滋賀に酒蔵を改装した面白い会場が出来た」とほうぼうにアピールしてくれはったお蔭で1994年12月2日には仲井戸”Chabo”麗市Solo action Live「夜を日に継ぎ」公演が実現した。100名を越える動員は初めてだった。
チャボさんの様なメジャーなロック・スターの出演は予想外だった。私自身1982年9月30日に大津市民会館でRCサクセションを観ていただけに望外の喜びだった。

酒遊館
2015年11月7日工藤冬里、礼子&アーリントン・ディオニソ
2016年2月11日キング・ブラザース
2016年6月19日みかみほ
2017年9月22、23日MOLA&刺繍展
2018年7月16日SPECIAL OTHERS ACOUSTIC
2018年11月30日ー12月2日池坊滋賀中央支部花展
2019年マヘル・シャラル・ハシュ・バズ
2019年12月8日怪談と即興音楽
2020年2月13日フェルディナンド・カブサッキSHIGAセッション
2020年10月10日後藤宏光+タナカえん

サケデリック・スペース酒游舘 春のライブ情報

和気優(vo,g)
〜縄文TRiBE TOUR 2020-2021〜
O.A/月吠

2月27日㈯17時30分開場 18時開演
入場料(ドリンク代別600円 地酒のみお代わり自由)予約2000円 当日2500円

♪和気優HP http://www.you-waki.com/

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
酒游舘オープンマイク15
2月28日㈰18時開場 18時30分開演
参加費(ドリンク代600円込)1100円

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
リクオ
〜リクオ&ピアノ2021〜
O.A/chicken souL

3月21日㈰17時開場 17時30分開演
入場料(ドリンク代別600円 地酒のみお代わり自由)予約3500円 当日4000円

♪リクオHP http://www.rikuo.net

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
会場・問い合わせ
サケデリック・スペース酒游舘

滋賀県近江八幡市仲屋町中6
電話(0748)32-2054 (10〜17時)

e-mail sakedelic1960@softbank.ne.jp

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー

注1. 石橋さんの西部講堂企画では1981年7月18日フレッド・フリス ソロコンサートと1982年5月12日ICPオーケストラも忘れ難い。どちらも客席にステージが設営されていた。前者ではテーブル・ギターを初めて観た。フレッド・フリスは台の上に横たえたエレキに様々な小道具を使ってそれまで聴いた事の無い音を出していた。音の抜けがくっきりしていて驚いた。アンコールではギターのチューニングを整えメロディアスなインスト曲を演奏してオチを付けたのも洒落ていた。
後者ではフリー・ミュージックの楽しさを知った。短パン姿で葉付きの木の枝を使ってドラムを叩くハン・べニング、片時も煙草を離さないミシャ・メンゲルベルク、拡声器で「空はいつも青いよ〜」と歌った近藤等則。