カレー屋店主の辛い呟き Vol.38 「SLAM DUNK」

『あきらめたらそこで試合終了ですよ…?』この日本マンガ史上屈指の名台詞。この言葉に助けられた人はきっと沢山いて、斯く言う僕もその一人。昨今のコロナなこのご時世。この台詞を思い出す方も多いんやないかな? で、この台詞とともにシーンもバーンって浮かんでくるのがマンガの力。「SLAMDUNK」の数々のパンチラインと名シーンの数々。発表から30年経って、じじいになってもまだ鮮明に思い出すことが出来るねんな。やっぱこのマンガすげーよ。

さてさて。まだまだコロナがまだまだ猛威を振う中、ミナサマ変わらずお過ごしでしょか?大阪・上本町のカレー屋兼飲み屋店主の”ふぁにあ”と申します。当店も相変わらずの自粛営業中。光が見えるのいつなんスかねと言いつつも、個人的には、いつも通りの平凡な日々。営業時間は短いけど、やるこたー同じなんでね。今回はこの名台詞でも有名な「SLAMDUNK」についてのお話。個人的にはこの30年、何度も全巻買い直し、ずーっと傍らにあって沢山の勇気をもらったこのマンガ。そーいえば思い出してもーたけど。15年ほど前、借りてたアメ村の事務所がビルごと全焼した時、事務所に置いてあった「SLAMDUNK」全巻が煤で真っ黒になってた時は泣けたなぁ。とりあえず煤だらけの27巻を取り出して2つ目のこの台詞「あきらめたら〜」を読んだんだよな。あー懐かし。今考えたら、あれが人生最大の不幸と思たけど、まだまだやらかすねんなぁ…。(遠い目)んで、今、カレー屋やもんな。いろいろあったなー。なんか、節目節目でこのマンガ読んだ気がする。まぁそんな昔話は置いとこか…。未だに僕が、ほぼ毎日見てるNBAを好きになったのもこのマンガのおかげだし。日本のバスケの裾野(いやアジア圏でもか…。みんな知ってるし)を広げた最大の要因つっても過言じゃないよね。


そもそも、なんで今「SLAMDUNK」なんだってハナシなんだろーけど。今年の1月6日。フォローしてる作者の井上雄彦氏のtwitterで突然発表があったワケ。その日、昼間っから天王寺の「てんしば」のベンチでチューハイを飲んでた僕。Twitterを見て「うあぁ」と、ちょっと大きめな独り言で周囲の親子連れから白い目で見られてもーたけど。(いやどっちゃみち白い目で…)個人的にはビッグニュース。実写やったらどーしよとも思ったけどさ…笑 以前、他の漫画家さんから聞いた「井上雄彦氏はある玩具メーカーのスラムダンク関連のフィギィアの出来に落胆と失望を感じて、印税を全ぶっ込みして出版社から商品化のライセンスを買い取った。知らんけど…」なんてうわさ話を思い出して、そんな人が実写化を許すわけねーよなと。続報を待つとどうやらアニメ映画化のよう。そこからずーっとワクワクしてんの。だって。アニメ版では描かれなかったクライマックスの山王戦がどう描かれるの?とかさ。山王戦のラスト漫画では台詞まったくないもんな。でも、選手の息遣いが感じられる臨場感。あれどうなるんやろ。んで、今のアニメーションの技術や、昔には無かった視点(ドローン視点とかさ)とカット割りに、今の井上武彦氏の画力とキャラクター造形が注入されるとしたらさー。ヤバいて。うん。コレで完全オリジナルストーリーやったら一旦派手にコケとくけどな。笑

■「SLAM DUNK」はリアルなのだ

読んだことの無い人に(いるんかそんなヤツ…。女子とか?いや女子て…)一応ストーリーを説明しとくと、不良高校生の桜木花道が、バスケ部マネージャーの晴子に一目惚れ。成り行きで始めたバスケットに徐々に夢中になって行く中で、チームメイトの流川、リョータ、三井、ゴリ、木暮、恩師の安西や他校のライバル達と出会う。そして主役の花道だけではなく、それぞれの背景やドラマが浮き彫りになる中、話は全国制覇を目指す道へと収斂されて…。と書いてみると、青春スポーツ漫画の王道中の王道のストーリー。ほな、なんでこの「SLAMDUNK」が漫画史において不朽の作品と言われてるかとゆーとさ。まずは、作者井上雄彦氏本人も部活を経験したバスケットへのリスペクトの姿勢。スポーツマンガにありがちな、人間離れした必殺技を使ったりしないプレーや、基礎練習の描き方。リアルなバスケットの魅力とバスケ愛が全編貫かれてるねんな。なんせ、ラストシーンの決まり技は『右手は添えるだけ』(見てなわからんけど…)。これバスケの基本中の基本やし。基礎練習が大事ってコト、全国のバスケ初心者は、たたき込まれたやろーし 笑 んで、その設定に、敵味方メインサブそれぞれの魅力的なキャラクターや、キャラクター達が話す『あきらめたらそこで試合終了ですよ…?』に代表される名パンチラインが乗っかって。現実とさほど違わない舞台の上で、等身大のキャラクター達が生き生きと躍動する姿。これが最大の魅力やと個人的には思うワケ。あと、もう一つ。このお話。よくある成功の物語じゃなくて、基本的には、失敗と挫折の物語。全てのキャラクターに挫折と失敗があって、おまけに、順位としての勝者がおらんねん。だって、このマンガ。最終的には全ての描かれてる学校が、全部負けて優勝校は描かれないからね。どんなに努力しても、届かないのがリアル。でも、失敗や挫折から、前に進めば少しはぶち破れるかもって夢を与えてくれるのがこの寓話の人気の理由じゃないスかね。

そして、この話何度も読み返してると、この物語にリアリティと深さを与え、実は裏回しの役割を果たしてる一番重要なキャラクターが「メガネ君」こと3年生のシックスマンの木暮だとゆーことがよーくわかってくるんよな。この男がいなければ、よくあるスポ根マンガになってたと思うんだ。


「メガネ君」最高の見せ場。土壇場での3p

木暮君のコトおさらいしとくとさ。湘北高校の副キャプテンで3年。身長178cm、体重62kgとバスケ選手としては普通の体格で、身体能力にも優れてるわけじゃない普通の高校生。そもそも入部した目的は「体力をつけるため」と本人もゆーてたし。中学時代からスターだった同級生の三井や、ゴリこと赤木とは全くちがう雑魚キャラ。ただ、優しく気遣いのできるこのマジメな男。新入生の流川や桜木が入部し、自分がポジションを奪われるコトはさておいて「オレのフォワードのポジションはいずれあいつら二人にとられるかもな。だがそうなりゃ湘北は強くなるぞ赤木 こりゃあ…楽しみだな…!」とうれしそうに語ったり。一度挫折をし、クラブから離れた三井がバスケ部を潰しにきた時も、「全国制覇」と言っていた1年時の姿とはかけ離れた三井に対峙し一喝。その後も、読者にとても近い等身大のキャラクターの彼を、要所要所でストーリーを前に走らせるスイッチ役として、作者の井上氏は大事に使ってる。そんな彼が全国に行く為の土壇場で決めた3p。泣けるなぁ…。普通の高校生が、一瞬眩い光を放つ瞬間。読者は単なるヒーロー物語から、読者自身のストーリーへと重ね合わせて、ストーリーへのリアリティと、希望を同時に持つんじゃないのかね。大人になると木暮くんの良さどんどん分かってくるよな。

■NBAにはまった原因はこの試合かも

この「SLAMDUNK」をきっかけに、アメリカのプロバスケNBAの魅力にはまって、結局、生観戦をするようになってもーたワケやけど、実はこの木暮くんの3pのシーン。モデルになってる試合が現実のNBAでもあったんだ。木暮のモデルは、元シカゴ・ブルズで、マイケル・ジョーダンらと三連覇を達成したジョン・パクソンと言われてて、背番号も同じ5番。そもそも彼ら湘北高校のユニフォームのデザインはシカゴ・ブルズの物と同じやし。で、このシーンが起こったのが、1993年のNBAファイナル。シカゴ・ブルズ対フェニックス・サンズの第6戦。ちなみにブルズの相手のサンズには、SLAMDUNKの登場人物「桜木花道」のモデル(井上雄彦氏が桜木=デニスロッドマン説を否定。モデルがいるとしたチャールズ・バークレーと発言)の「チャールズ・バークレー」と、「宮城リョータ」のモデルと噂される「ケビン・ジョンソン」(ドリブルのフォームがそっくり)がいて、SLAMDUNKからバスケにはまった僕には感情移入しやすかったこのシリーズ。だってマンガ以上のプレーがTVの中で行われてるんやで。夢中になるやろ!結果、このシリーズをがっちり見た頃から、個人的に、NBAの沼にはまりだしたんよな。

んで、この3Pのシュートのシーンは残り時間が約15秒。96対98でシカゴ・ブルズはリードを許した状況。ここでブルズはタイムアウトを取り、逆転へのストーリーを相談。逆転の為には最後のワンプレーしかないタイミング。この当時のブルズのエースは神「マイケル・ジョーダン」で、彼に最後を託すのは当たり前の選択。SLAMDUNKの湘北高校でゆーと、エース「流川楓」(彼のモデルはジョーダンと言われてます。プレイのフォームや腕のリストバンドが一緒。)で決めに行くトコロ。でも、最後のシュートを託されたのは地味な男「ジョン・パクソン」やってんな。


ブルズ3連覇を決定づけたジョン・パクソンの3P

もう30年近く前のこのジョン・パクソンの劇的な3P。これでブルズの3連覇が決まったこともあって、この左45度のシュートの軌道もしっかり覚えてるわ。アニメ版SLAMDUNKと同じようにスローモーションやったな。


アニメ版の同シーン「木暮フリーだ打て」

余談やけど、このジョン・パクソンはこの翌年に引退。その後ブルズのコーチや球団社長を歴任することになる。その知性とキャラクターはまさにSLAMDUNKにおける木暮と同じ。モデルにしたかどーかは井上氏が語ることは無いけど、この実際の試合の前から木暮はパクソンのような描かれ方をしてたわけやから、このパクソンの3pを見た時に井上氏どう思ったんやろね。マンガの中では中盤のピーク、陵南戦のクライマックスはコレや!と決定付けられたと書いてまうのはゲスの勘ぐりか…笑 でもあらためてこのシーンの映像を見てみると、マンガを現実が超えてくるようなもんでさ。NBAの選手達の凄さが、改めてよく分かるんよ。

木暮くんの話を長々としてもーたけど、このSLAMDUNKのキャラクター達のプレイスタイルや、エピソードには沢山その当時のNBA選手のエッセンスが含まれてて、実際の選手達のプレイを知ってから、マンガを読むと、SLAMDUNKの世界がまた一つ広がるし、元ネタがわかっても、違和感が無いのは井上氏がバスケットの世界をリアルに描き、そこへの愛情とリスペクトが感じられるからこそ。んで、さらに現実のNBAのプレーは、マンガを完全に超越した超人の世界。その裏にある、選手一人一人のバックグラウンドやサイドストーリーを掘ってまうと、そこは沼やねん 笑 

さてさて。映画化発表のタイミングで興奮してこんな文章書いたけど。まだまだ飲み屋のカウンターでこんな話をでける人は少なくてさ。ほら、野球の話やったら、西成の立ち飲みで歯抜けのおっさんとでも出来るから笑 (いや、そもそも歯抜けのおっさんより、可愛い女性のほーが…)SLAMDUNKのファンからNBA、バスケットのファンをどんどん増やしたくて書いた次第。少しでも興味を持った方は、とりあえず映画の公開までにウチの店にどぞ!SLAMDUNKは全巻そろってますから 笑 では今回はこの辺で。


映画化までは、「山王戦」はこちらで。ファンの中では超有名作。エモいなー。

ホイミカレーとアイカナバル / 店主ふぁにあ
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