カレー屋店主の辛い呟き Vol.39 「Ghetto Hollywood」
- 2021.03.02
- OSAKA
- Ghetto Hollywood, SITE

これを書いてる時点で、まだまだ続いてる緊急事態な日々。はー。なんかため息でるわ。ミナサマはいかがお過ごしでしょか?大阪・上本町のカレー屋兼飲み屋店主の”ふぁにあ”です。
この零細カレー屋&飲み屋も、当然のように客足も減り、細々と時短営業を続けてる今日この頃。自粛のハナシや、協力金のハナシ。他にもいろんなetc。言いたいコトは山盛り。スガちゃんもアカンぽいしさ。まぁ考えたら、スガちゃんって貧乏人の子供ってな触れ込みで、「だから平民の気持ちわかるんちゃう?」なんて言われてたけど、そんなワケないわな。のし上がってきたヤツほど、ウチらみたいなボンクラ平民のコトはわかんない。今の官僚さんとかもそーやけど、たぶんボンクラを横目に、努力したんやろし、自分の清き心情なんてとっくに曲げてんねやろしな。逆に平民のコト嫌悪しとるんとちゃうかね。あいつら努力もせんとーゆーて。それやったら、「この平民ども金をやろー」って言ってくれる気持ちの優しいバカ殿のほーがえーんかね?ボンクラはボンクラなりに、隙間を見つけてオモロく生きていきますがね。
あー横道それて、また、愚痴っぽくなってもーた。とりあえず怒り憎むよりLOVE。とりあえずその方が、楽で幸せなのは間違いないし。怒り、憎しみはオモロい方法で処理すべし。ただのヘイトはハナシ聞いててもつまらん。笑いがないとな。コレ関西人の大事な知恵。
今回もダラダラと書きだしてもーたけど。前向きな感じで一つ宣伝を。コレもまだ発表していいんか?具体的なコトは書かんけど。(宣伝にならへんね…笑)あるデパートさんからフェアの出店打診があったんス。こんな零細カレー屋に!って笑てもーたけど。マジメに準備してるので、またその詳細はお店のインスタなんかでどぞ。まぁこんなご時世でも、ぼんやり続けてりゃなんとかなるってコトなんスかね。知らんけど…。」
■NORIKIYOのニューアルバム「相模川町」
さてさて本題。僕も大好きなラッパーのNORIKIYOが、昨年末に、彼にしては久々のアルバムをリリース。(彼の楽曲、アルバムのリリースの早さと多さったらね…)てか、NORIKIYOのコトみんなあんま知らんのかな?どうなんやろ? デビューの2000年代後半から異常なほどの制作スピードで楽曲のリリースを続けて、おまけに個人的には、はずれなし。たぶん、彼の世代ぐらいが多分日本のハスラー系のラップを確立したんやろーけど。(なんてか、ハスラーってのはストリートにおいて、まぁだいたい非合法なコトで生きてる的な?)彼自身の体験やストリートで起こるアレコレをベースに、そこだけに留まらない強いメッセージと、ストーリーテリングの力で、なんか映画を見てるような感覚にすらなる日本屈指のリリシスト。彼のリリックってなんか画が浮かぶんよなー。まぁ、よーは本物ってコトなんやけど、見てもらうほーが早いですか。
そんな彼の最新作が「相模川町」。この作品、Japanese Hiphopでは珍しい形に仕上がってて。アルバムを通して描かれるのは、彼のHOMETOWNでもある相模原をモチーフにした、架空の街「相模川町」で行き交う人達の物語。NORIKIYOは、各登場人物の感情をラップしてるんやけど、コレだけやと、ちと難解。で、そこを補完するのがNORIKIYOの所属するクルーSD JUNKSTAのメンバーで、盟友の「Ghetto Hollywood」ことSITEが描いたキャラクターとMV。このMVがリリースからほぼ毎週1曲づつYouTubeで無料でUPされるっちゅー怒濤の展開。内容はかなりThugで万人受けするもんじゃないかもしれんけど、ここまでコンセプトを、がっちり上質なクリエイティブで包んだ作品って、発表の仕方、表現の仕方含めて、日本ではあんまなかったんちゃうかな? 海外ではケンドリック・ラマーのアルバムとかまさにそうなんやろーけど。デビッド・ボウイの「ジギー・スターダスト」とかとは少し違った“Based on true story” なコンセプトアルバム。彼の持つストーリーテリングの力が、最高に発揮されてる一枚ス。
■「Ghetto Hollywood」の話
そして、話したかったのが、上でも書いた「Ghetto Hollywood」ことSITEのコト。ここ最近更に活躍が目立ってどんどん知名度を上げてる彼。好きなんスよね、なんやろね?世界観ってゆーんかな? 思い返してみると、はじめて彼のコトを認識したのは10年ほど前やろか?その当時のHipHop界隈のMVでやたら見る「Ghetto Hollywood」の文字。なんやろと思って調べて見たんやろね。そしたら、ラッパーのSEEDA達がTERIYAKI BOYSに仕掛けたBEEFに絡んでたコトが分かって興味を持ったんよな。
下克上感あってオモロかったよな。これ。
本人も後にインタビューで、このBEEFがバズったコトが、それまで活動してたグラフィティの世界から、映像の世界にドップり浸かるきっかけになったと語ってたな。そしてそこからHIPHOP界隈からの絶大な信頼を受けつつ、数々のPVを撮っていくんやけど。何本か個人的オススメと、感想をとりあえず。
PUNPEE、S.L.A.C.K、GAPPERのPSGのMV。彼の私物を使って作ったストップモーション。そのDIY感、サンプリングのセンス、PSGのトラック含め中毒性が高い作品。最初見た時、何かが始まりだしてるわーって思った。
今回のアルバム「相模川町」でもコンビを組んでるNORIKIYO+Ghetto Hollywoodと相模川町のトラックを提供したBACHLOGICが別名儀の鋼田テフロンとして組んだ7年前のクラシック。少しハナシはそれるけどNORIKIYOのラップが超スキルフル。深夜の散歩まだ時々これなんよね。
瞬く間に大きくなったBADHOPの当時挨拶状代わりだったMV。地元で撮影されたためか、より感じる作り物なしの本物感と勢い。結構ベタになってまいそーなシチュエーションのMVなんやろーけど、これ行くやろなーと。アーティストの魅力と映像のディレクションが相乗効果でバキっとハマっていい。
で、2018年にはPUNPEEのMVでフルアニメーションの作品に挑戦。はじめて見た時はちとビビりました。多少裏方を昔やってたもんで、ほら予算とか、納期とかさ笑。スゲーかかったやろーなと。そもそも上で紹介したPSGのMVの時は家のもの動かしたストップモーションやったし。なんちゅーか関係ないけど大きくなったなーとジジイ目線でさ。
そしてMVを撮り続ける間にも、それ以前から続けてた東京ブロンクス名義のライター業や、インスタグラム(SITE @ghettohollywood)でもずーっと僕らを楽しませてくれてる彼が、現在進行形で取り組んでるのがマンガ。その作品こそがこちらなんス。


「週刊SPA!」で連載中のこの「少年インザフッド」。昨今のHIPHOPのmcバトルだけやないHIPHOPカルチャーを描いた、リアルでアンダーグラウンドでハードコアな青春グラフィティ。内容は、”団地に住む“何者でもない”少年が、謎のDJやグラフィティライターの同級生に出会い、平凡な日常が鮮やかに塗り変わっていく――。著者自身の実体験をベースに、’96年と現在という2つの時代を行き交うストーリーにはカルチャーだけではなく、団地、薬物、在留外国人といったシリアスな社会問題も絡んでくる”とNetから借りてきた説明文。単行本で今2刊まで出てるこの作品は、日本のHIPHOPカルチャーの中でもアイテムとして持っておきたい作品。単純にマンガとしてもオモロいし、将来的にかなりエポックなモノになると思うねんな。
彼はドラマかなんかの原作になるようなモノを作りたかった。日本の「WILDSTYLE」を撮れるの俺だけって、インタビューで言ってたんやけど。確かに将来的なハナシはおいといて、今の日本でこの作品をもし実写でドラマ化出来るのは、多分彼自身だけ。昔、このコラムで書いた「mid90s」とかもそーやけど、ある種サブカルを描いた作品ってシーンの内側にいて、外の世界とアクセス出来る。んで、いろんなモノをクロスオーバー出来る感覚を持ったクリエイターじゃないと、絶対に無理。園子温の「TOKYO TRIBE」あれマジで絶望的にダサいもんな。井上三太の原作はけっこう好きやのに、そうじゃない、そこじゃない感が。好きな監督だけに、園子温どした?ってな…。
今後の彼の活動はホント注目で、個人的には見習いたいクリエイターさんの一人。ユーモアを持って、オモロいモノをサンプリングして、クロスオーバーしていくその感覚。でも芯にある絶対的に揺らがないHIPHOPへの姿勢。何混ぜて、どんな店にしても、ウチのカレーって言えるよーになりたいんだよな。
では、今回はこの辺で。
ホイミカレーとアイカナバル / 店主ふぁにあ
〒543-0031 大阪府大阪市天王寺区石ケ辻町3−13
ホイミカレー:毎週火木金12:00-売り切れ次第終了 アイカナバル:月—土18:00-23:00