カレー屋店主の辛い呟き Vol.40 「あの頃」

やっぱり「あの頃」と、カレー屋主人の今は、その地平線上でいいコトも、悪いコトも繋がってるんスね。先日、某P社の同僚でもあった旧友達が店を訪ねて来てくれた時、そんな感じのコトを考えたのさ。それは、最近、この上の写真の映画「あの頃。」を見た後だったコトもあって、少しエモくもあり。でも、現在進行形のコトでもあったりするんよなー。はー。なんか、いきなりポエムな書き出し。恥ずかし。

さてさて、コロナ禍の中ミナサマはいかがお過ごしでしょか?大阪・上本町のカレー屋兼飲み屋店主の”ふぁにあ”です。まだまだ続いてる時短営業。なんか、ウチみたいな6席しかない店が時短営業しても意味あるんやろかね…と。いつも2、3人の店内を見て思うけど。お金はいつなっても入らんし。まぁそれはどっちゃでもえーねんけど。(強がり)まぁどないもなりませんわ。そんな中、この場末のカレー屋&飲み屋にも少し新展開があって。ランチ営業してたある日。近鉄百貨店の社員さんが、いきなり来店して「あべのハルカスの近鉄百貨店です。フェアがあるんですけど、出店していただけないでしょうか?」と。いやー思たね。これは詐欺や、完全に詐欺やと笑。名刺はもらってたんやけどね。その晩、来店してくれたお客さんに話すとさ。みんな「詐欺やろ」って笑。よくよく話を聞いていくとあべの・天王寺のお店を集めたフェアで、事前にカレーを大量に納品してチルドの商品にして販売するって話。丸一日約250人分のカレーを作りつづけて、無事納品。店頭にも立たせてもらって、えー経験させてもらったワケ。ウチのお客さんは、あまりの場違いな感じに笑けてたけどな…笑。なんか百貨店の裏側見れてオモロかったし。んで、なんだかんだ言っても、自分とこの商品が百貨店に並ぶて、いいもんやね。やっぱ。

これもよく考えてみたら。「あの頃」大阪の桜川に存在して、4年で弾を打ち尽くし多額の借金と迷惑、そして数々のアホイベントの記憶と激烈なエピソードを残して爆死した、ライブハウス&クラブ「montage」でカレーを作り始めたコトから、今に繋がってるねんな。そしてこの映画「あの頃。」のモデルになった面々や、様々なアンダーグラウンドカルチャーの発信源となってたミンナと交流を深めたのも「montage」立ち上げ前夜から、「montage」時代の数年間の濃厚な、まさに自分にとっても「あの頃」な時代。そんな大阪で同時代を過ごした「ハロプロ」の熱狂的でアンダーグラウンドなファン達の姿を描いた映画が「あの頃。」今回はそんなお話をさせてくださいな。

■映画「あの頃。」を見て

この映画「あの頃。」は、「あらかじめ決められた恋人たちへ」や、マンガ家、幅広い文筆業なんかで知られる劔樹人氏の自伝的コミックエッセイ「あの頃。男子かしまし物語」が原作の映画。もやもやした日常を送ってた主人公の劔氏が、松浦亜弥のDVDをある日見て、電流が走ったような衝撃を受け、ヲタ活動に邁進していく中で、ハロプロオタクの集まりである「ハロプロあべの支部」の個性的な面々に出会い〜。とストーリは展開していくねんけど。予告編を観たハロプロファンなんかは「ハロプロオタクの話キター!」とか思ったよーで。ただ、このお話は「ヲタ活動にハマったら仲間が出来た!んで、その仲間達と過ごした青春のあの時!」ってゆーより、もっと下ネタ連発のアングラノリ満載のおハナシ。あの頃の大阪の空気感や、当時のアイドルオタク達の圧倒的マイノリティな状況を経験してないと、この子ら、どー感じるんやろ?と思った若い子でいっぱいの上映前の館内。映画終演時、隣の席のまだ若いハロプロオタな女子(グッズ持ってたしな…)2人組をこっそり見たら、キョトン顔で、ピンと来てない感じ。いや、そりゃそーなるわなと。あの原作が単なるヲタクの青春ストーリーになる訳ないじゃいか。笑

個人的なこの映画の見所は、あの当時の大阪のアンダーグラウンド界隈の少しやり過ぎで、内向けの狭い世界にどんどん掘り進んでくあの世界観や、当時のアイドルオタク達の圧倒的マイノリティな立場。そこから発するあのジメジメとした圧倒的熱量がスクリーンの中に気持ち悪く、ちゃんと空気感として存在してるトコ。同世代のそれなりに周囲にいた私。観賞中ずっとニヤニヤしてたわ。もちろん脚本や演出。そして主人公の劔氏の役を演ずる松坂桃李始め俳優陣の演技にも単純にやっぱすげーなーと思ったけど。ほら、知ってる人の役をやってる訳やから。より凄さが分かるとゆーか。松坂桃李は途中から劔くんにしか見えなかったし、仲野大賀は、クズを演じさせたらやっぱピカイチやし。でもやっぱ「あの頃」の空気感がスクリーンに広がってるコトに結局グッと来たんよ。おっさん的に。

あらかじめ決められた恋人たちへ – LIVE @ KAIKOO POPWAVE FESTIVAL’10 「あの頃。」原作者の劔氏はBASSで奮闘。かっこええなー。

ついでにもう一本最近の。あらかじめ決められた恋人たちへ「日々 feat.アフロ」 MOROHAのアフロとのコラボ。「あら恋」のPVを撮ってる柴田剛の作品はいつもいい。

この映画のモデルになってる「ハロプロあべの支部」は実在して、(原作が劔氏の自伝的エッセーだから当たり前か…)、映画ではコカドケンタロウ演じるイトウは現赤犬のvoのタカ・タカアキやし、山中崇演じるロビは、赤犬のロビン。ちなみに映画には出てこないけど、原作では赤犬のリシュウ氏もメインキャラとして登場。んで、そこに参加する事になった劔氏と。実際の「ハロプロあべの支部」は関西アンダーグラウンド界隈とモーヲタ&ハロプロヲタってゆー当時はあり得ない点と点が繋がってた場所。このあたりのコトは、原作者の劔氏が自身のnoteに書き連ねてて、この映画のサブテキストとして読んでみると興味深いしオモロいっスね。

んで、私はとゆーと、勤めてた会社を辞め。大阪でその界隈の面々と遊ぶ中で、その得体のしれない熱に刺激を受けてたのが、映画の舞台となったこの時期。今考えると、それが「montage」を作るきっかけになったよーな気がするわ。ジャンルは問わず、とにかく深い熱のあるモノ出来る小屋やろっ!てな。それが、商業的にどーとか分かったのは、まだ先の話で結果エラいコトになったんやけど。笑 まぁそんな話はここでは関係ないか。

この映画で語られる「あの頃」。そして、舞台となる「ハロプロあべの支部」は単なるハロプロヲタの集まりってだけじゃなくて、いろんなジャンルのオカシな面々が、たまたま集まっててたからこそ、映画にまで、てゆーか、こうして記録として残ったんやなと思うワケ。んで、大阪がちょうどいいサイズの街だからこそ、こういう「あの頃。」みたいなオモシロコンテンツが生まれるんやろねと。大っきすぎたら繋がらんし、ちっちゃすぎたら集まらんしさ。んで、笑いってカルチャーが日常の中心にある街ってのもな。その当時の大阪だからこそ、生まれたムーヴ。貴重な記録やんね。まぁ。今ならSNSとかで違う繋がり方をするんやろし、違うオモシロストーリーがどこかで生まれてるんやろーけど。んで、そんなコトをいつまでも、楽しめるジジイでありたいなと思うよな。

その当時の赤犬のLIVE – UNCO~うんこが好きです~@ココロとカラダ – ROMZ 4th Anniversary

少し余談やけど。「あの頃」そんな面々の周りにいて、くぐもったヲタク達の熱と、それが爆発するときのエネルギーには興味があった私。でもアイドルって存在そのものにはイマイチ興味が無かったんやけど。更に数年ジジイになってから、「あの頃。」の松坂桃李と同じ経験をすることになるねんな。ある日、ボンヤリテレビを見ていると、画面の中には乃木坂46の面々が映ってて、一人のショートカットの子がカメラに抜かれた時に心臓がドキドキしてきたのさ。そこから、結果、握手会にまで参戦するコトになる数年を送ることになるんやから、人生はオモロい。さんざんおっさんが地下アイドルの前で熱狂的なヲタ芸をしてるシーンを、バーカウンターから見てたのに、そっち側の人間になるなんてな。まぁ乃木坂のファンになることは、ハロプロヲタの年下の友人に言わせると、それは似て非なるもんらしく。 「乃木坂や他のアイドルはセンターと呼ぶけど、ハロプロはエースと言うんです。なぜならウンヌンカンヌン…」と、呪文のような言葉を吐いてたけど。笑 始めてアイドルのファンになって、推しとゆー意味が少しはわかったよーな気がする。結局、個人的な数年続いたライトなアイドルヲタ期は、その子に気がついたのが遅かったのもあって、数年で彼女は芸能界から引退。幸か不幸かヲタクの沼からゆっくり抜け出すコトになるんやけど。未だに、マジで彼女の卒業ライブのDVDを観ると泣けてくる。後遺症やで。気持ちワルイやろ。笑

橋本奈々未 『ないものねだり』卒業前ソロ曲

なんかあんま関係ないコトばっか書いてるわ。映画の話に戻さなね。この「あの頃。」を撮った今泉力哉は、小作品からメジャーまで幅広く活動してる監督さん。彼の存在をはじめて知ったのは、それこそ乃木坂のシングルの特典映像から。また、少し横道に逸れるけど、この企画って、アイドル業界の中での大発明やと思うねん。乃木坂のシングルには特典映像がついてて、それはメンバー各個人の「個人PV」やねんな。んで、それは単なるイメージ映像じゃなくて、キッチリと若手の映像作家を使ってショートムービーに仕上げてるワケ。選抜に選ばれなかったメンバーのモチベーションを保ちながら、役者としての経験も詰み、おまけに若手の映像作家をフックアップするという一石何鳥のすばらしい企画なんやけどさ。彼はこのシリーズを何本も撮ってて、観てるうちに、この人の映像のなんてか温度みたいなん好きやわーと。そして、こういった仕事をstepにして、彼は売れっ子監督に成長していくねんな。

乃木坂46個人PV『白石麻衣似の多田敦子』予告。今泉監督作品

今回の「あの頃。」でもそうなんやけど、今泉作品は、とにかく出てる役者が魅力的に映ってる。あんま言ったらあかんことかもしらんけど、同じ俳優さんでも他の作品と比べると数段よく見えるねんな。特に女優さんを魅力的にみせることに関しては、当代イチの監督さんや思うわ。例えば、彼の作品「愛がなんだ」の岸井ゆきのとか良かったわー。マジで。んで、この「あの頃。」でも感じれる彼の作風。独特の映像の温度ちゅーんかな。「何か起こりそうで起こらない」でも、「何かが起こってしまってのドラマ」でもなくて、「何かが起こってしまってるけど表面上は何も起こらない」ってか。うまく言えんけど。結局、日常ってそういうコトやろって表現が上手な監督。この映画でも、ストーリーを転換する大きな出来事がいくつか起こるんやけど、そこをあえて深堀りしなかったり。劇的なドラマにしなかったり。多分好き嫌いは分かれるシナリオと演出やけどさ。個人的には好きなんよ。

ちなみに上で書いた「愛が何だ」予告

長々とまた書いてもーたけど。この映画の中でたびたび主人公が言う「今が楽しい」って台詞。昔はよかったなーと言うんじゃなくて、繋がってるけど今が最高ですと。同世代の大阪のシーンを生きた人間としても刺さったし、そーありたいもん。だからこそ、この映画のタイトルは「あの頃。」好きなモノへの変わらない愛と、進んでく日常。クセ強な作品やけど、個人的には刺さったな。

なんか、まとまりない文章やけど、今回はこの辺りで。また。

ホイミカレーとアイカナバル / 店主ふぁにあ
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