カレー屋店主の辛い呟き Vol.47 「25年」
- 2021.11.02
- OSAKA

25年、悲惨な負けを繰り返してた、オリックス・バファローズがついに優勝!タイガースも、この時期まで優勝争いをしてた信じられないシーズン。「まぁここまで楽しませてくれたから…」なんて、優勝出来なかった時の心の予防線を張りながら、毎日野球速報が手放せなかった今シーズン。いやー楽しかった!
しかし、25年。思い出してみると、僕はまだチケットを扱う会社のサラリーマンで。ちょうどオリックスの担当で。年間50カードは、神戸のグリーンスタジアムで過ごしてたあの頃。偶然行ってた神戸で被災して。僕の人生感を変えた悲惨な状況を目の当たりにして。「こんな状況で、野球してもいいんやろか?」とひび割れた球団事務所で何度もミーティングして。迎えた開幕戦の満員のスタンド。泣けたなぁ。そして何かの力が後押しするよーな、ミラクルなシーズン。優勝後のビールかけ。優勝なんて経験したことがない僕を含めた素人集団がゆえの、チケット販売の為の徹夜作業のアレコレなやりとり。今考えるとホントに、貴重な場面に立ち会えてたんやなと。
25年前のあの頃。バックヤードや食堂で交流があった現監督の中嶋さんの胴上げを何度も観ながら、いろんな感情が湧いて一晩寝れず。このコラムの内容も急遽変更しようと原稿を書いてる次第。あの年経験して、感じたコトは、一言では言えへんし、ずっと気持ちの奥底に持っておくことやと思うけど。「まじで人間いつ死ぬか分からんなー」って腹のくくりと、「やったらこんなマジックのよーなコト起こせるねんなー」って気持ちが強烈に生まれたのが、あの年。あそこから25年経って、紆余曲折しながら「カレー屋」になった今の僕も、あの年、あのシーズンがキッカケやったんかなと思いますわ。
そろそろ緊急事態宣言も明けて、通常営業に戻れるってゆー今日この頃。あの時から25年経って迎えた、コロナ禍って危機。みんな生活習慣も変わって、飲食業も冬の時代を迎えるであろうこの時期に、前向きに立ち向かう気持ちにさせてくれた今回の優勝。選手・スタッフ・関係者のミナサンおめでとう。んで、ありがとう。
と、感情のままに書いてもーた多少エモい原稿のあと、本来の原稿にどーつなげんねんと思うワケですが、一応一回書いた原稿を捨てるのもなんなんで、少し載せときますね。あー。自己紹介忘れてました。大阪上本町のカレー屋兼飲み屋店主の「ふぁーにあ」です。ここから先はあるアニメのおハナシ。このアニメ個人的には先シーズンベスト。てか、個人的アニメ史に残る作品で、繰り返し観たくなるコト確定なんス。
■「SONNY BOY」終わっちゃった

このアニメ「SONNY BOY」が始まったのは、夏の始め。前にも、ちらっとこのコラムでも書いたけど、キャラクターの原案が敬愛する江口寿史先生で、久しぶりに江口サンのキャラが動いてるトコ観れるゆーて個人的に期待値MAXやったこの作品。初回放送を観て一撃でヤラレタっスね。多分TVアニメの歴史の中でも屈指のプロローグ。ここから多少、1話のネタバレするけどさ。話としてのモチーフは、かの名作「漂流教室」。ある中学校が、中に居た生徒ごと真っ暗な異次元の世界に飛ばされて、その生徒達の中にいろいろな能力を持つ者が現れる。その能力を使って他の生徒達を支配しようとする者、反発する者、従うしかないと諦める者。ある種の国家のよーなモノが生まれて、と、ストーリーは進んで行くんやけど。
とにかく、一切説明がない。普通はあるであろう、何か天変地異が起こって平凡な日常が!なんてシーンもない。アニメなら必ずあるやろーオープニングもない、スタートから、暗闇の中に学校だけ描かれ、その中の生徒達の日常がどんどん進んでく。圧倒的置き去り感。で、バックの音楽も一切なく、画面から漂う異質な感じと、妙な閉塞感。これ、能力バトルモノでもなくて、単なるパラレルワールドモノでも無くてと、いろんなアニメの今までのフォーマットに当てはめても、どー展開してくのか分からん圧倒的説明不足。そして、1話ラストまでこのトーンが続いて、ある出来事をキッカケに世界が開け、そこで鳴る銀杏BOYSの圧倒的カタルシス。圧倒的、圧倒的とゆーてますけど。圧倒的やってんからしゃーない。笑 ゆーたら、「エヴァ」初見の時に感じた感覚と同じやったんすよ。
もちろんガッチリ観てほしいし、各種のネタバレ考察もnetなんかにはあるから、この後のストーリーは言わんけど。このアニメとにかくモノローグが無くて(大体のアニメは説明役=回しが存在する)、説明もホンマ断片のみ。毎週、続けて観たけど、あれっ?一話飛ばしたっけ?と思ったコトもある位、分かんない。自分なりに解釈して、考察して、物語を補完してかないと分かんないトコも沢山。んー。ラジオでハライチの岩井氏も語ってたけど「なんか分からんけどオモロい」ってのが当たってるのかなぁ笑
一応。最終話を見終えての個人的感想はね。同じように謎が多すぎて、各種の考察が盛り上がった、ある種の哲学系アニメの「エヴァ」のストーリーとか、最近流行の秋元康脚本の考察ドラマ的なんとは、少し違って。この話、パラレルワールドモノではあるんやけど、ストーリー上起こってるコトは、上に書いた1話でゆーと、持てる者と持たざる者の話やったり、ルールの意味やったり。この我々が住んでる日常で感じるそれぞれの行動、てか、生き方。哲学がきっちり描かれてる。それは最終話まで同じなんやけど。結局、分からんストーリーを、補完、考察するってコトは、現実の世界での自分の生き方、哲学を深く再確認することに繋がるでやろ?ってのがこの作品の監督であり、オリジナル脚本を書いた夏目真吾氏が作ったこの話の構造で。これ、ある種の純文学。ネット上の考察の流れも、回が進むごとに、なんで漂流したん?とか、あのシーンはこれの伏線?とか、逆にこの伏線回収されてないやんけ!とか。どーでも良くなってきて。ストーリーを語ろうとすると、各キャラクターの心の動きを推測するしか無くて、「これ、哲学やな」と。もちろん、ストーリー上は色々な伏線は回収されるし、喜怒哀楽の感情もバンバン湧いて、ストーリーの見えるとこだけ追っても、オモロいんやけどさ。だからこそ、このアニメ。色々経験を積んだ大人達に観てほしいんだよ。しかし、このアニメの魅力を伝えるのムツカシわ…。
■んで、音楽もえーねん。
この「SONNY BOY」は音楽も良くて、また、毎話担当してるアーティストが変わるってゆー少し変わった手法を取ってるんやけど。何話目かで、劇中音楽のアーティストのセレクトヤバいなーと思って、クレジットを調べてみると、音楽アドバイザーとして渡辺信一郎氏の名。この人の制作するアニメ、んで、セレクトする音楽はホントに大好物なんで、やっぱりなぁーと。そーいえば、前にも、このコラムでも紹介したけど、彼の作品「サムライチャンプルー」ではNujabesらを起用して、世界中に今のLo-Fi HIPHOP隆盛の種を蒔いたりと、アニメの音に対する方法論を、ネクストレベルに持ち上げた巨人とも言うべき存在が彼やと思ってて。なんてか、この方が監督なんかで絡んでる作品って、音のイメージが先で、アニメの登場人物がその上で動いてるよーに感じんだわ。つまり、グルーヴ。まぁ、なんしか音楽好きな方は、彼の名前を覚えておいたほーがえーでって話。
NATURE、Nujabes、fat jonの3組のトラックメーカーの名トラック揃いの名盤。死ぬほど聞いたで。
発売から15以上経った、今聞いても新鮮。つまりClasictってコト。
んで、今回の「SONNY BOY」でも、銀杏BOYSの他にも、落日飛車 (Sunset Rollercoaster)、VIDEOTAPEMUSIC、ザ・なつやすみバンド、ミツメ、Ogawa&Tokoro、空中泥棒、カネヨリマサル、toe、ピアノBGMにコーニッシュetcと、渋めの国内外アーティストの書き下ろし楽曲が、各話ゴト流れるんやけど。なんてかセンス!やし、全曲(やったか…な)ストーリーに合わせた書き下ろしってエグい作業。
個人的には落日飛車が最高でしたわ。
さてさて。ここまでアニメ「SONNY BOY」について書いてきたけど。言語化の能力が足りなすぎて魅力が伝わったのかどーか…。やから、なんしか一度観てほしい。んで、店で語れりゃって思うんよ。
そして、11月から始まる野球のクライマックスシリーズ。夢の夢やったバファローズvsタイガースの、日本シリーズの可能性がまだ残ってる、まさに夢の中のよーなシーズン。野球好きの店主が、中継に熱中して酒の注文間違えても大目に見てくださいな。では今回はこの辺で。
ホイミカレーとアイカナバル / 店主ふぁにあ
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