第48回David Bowie: The Oral History (English Edition) Kindle版 英語版 Dylan Jones (著)

David Bowie: The Oral History (English Edition) Kindle版
英語版 Dylan Jones (著)

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ひさびさに音楽本を。デヴィッド・ボウイの伝記本の傑作とされる『ジ・オーラル・ヒストリー』です。僕的にはボウイの伝記本のベストはカプチーノ・キッドことパオロ・ヒューイットの『デヴィッド・ボウイ コンプリート・ワークス』だと思ってたというか、ボウイの歴史を関係者の証言だけで構成していくのは無理だと思ってたので、ずっと読んでなかったのですが、この本は欧米の人から評価が高いので、読まないといけないだろうと、読んでみたら、ここでも紹介させてもらったパンクのオーラル・ヒストリー本『プリーズ・キル・ミー』くらい興奮しまして、ミック・ジャガーやキース・リチャードから「ころころ服変える奴」と揶揄されるボウイの実像を浮かび上がらせるのに、この方法が適しているとは思いもしませんでした。このスタイルでやったらすごくとっ散らかったものになるのだろうと思ってたのですが、そんなこと全然ないのです。本当にいろんな人が、ボウイの良いこと悪いことを語っているのですが、どんどん友達を切ってきたボウイですから、ほとんど悪いことが多いのですが、なんか胸が熱くなってくるのです。

どんどん仲間を切ってきたと書きましたが、子供の頃に殴られて、目の色が変わるくらいの障害になったのに、その人とはずっと友達だし、みんなが言うほどドライな人ではないのです。ジョン・レノンもそうなのですが、幼馴染は最後まで切らないのです。スターになった人はそういう所があるのかなとよく思います。そんな友達と会うことで、たまに本当の自分を取り戻そうというか、気持ちがよくなるのでしょう。そういうことをたまにしないと気が狂ってしまいそうになるのでしょう。

この本、なぜ日本では翻訳されていないのしょう?赤裸々過ぎるからですかね。

ボウイの愛人であり師匠だったリンゼイ・ケンプの言葉はこんな感じです。

「デヴィッドはセルフィッシュ(自己中)だったけど、彼は嫌な人じゃなかった。有名になったから自己中になったのじゃなく、最初からそうだった。欲張りじゃなかった。彼は本能のまま生きてたのよ」

デヴィッド・ボウイの作品を見て思うのはやっぱり自己中なとこです。それがよかった。晩年、大人になって丸くなって、自由恋愛から一人の女性を愛するようになって、その作品は面白くなくなったような気がします。

中二病の時が面白かったってことです。絶対墜落すると思って飛行機に乗れなかったのなんか完全に中二病です。よくそんな人が成功したなと思いますが、マネジャーのトニー・デフリーズも気が狂っていたからよかったのでしょう。トニー・デフリーズの場合はそういうボウイの奇行がビジネスになると考えてたような気もします。他のスタッフは「ボウイの仕事って週に二回しかライブがないこと多いよね」と感じてたくらいで、ボウイが飛行機乗れなくって車で移動していたのを気づいてなかったの笑いました。週二回の仕事だとギャラが少なくなるから、ボウイの仕事なんか誰も受けないはずなのですけど、まだおおらかな時代だったなと思います。まっトニー・デフリーズはスタッフのギャラ全然払ってないから、一緒なんですけどね。こんな人普通は絶対成功しないですけどね。でもボウイが成功出来たのって、こういう無茶苦茶があったからだろうなとも思うのです。初めて日本に来た時なんか、船で来て、シベリア鉄道で帰って行きましたからね。あの頃はそれがかっこいいと思ってたんですけどね。

晩年はちゃんと飛行機に乗るようになったから、中二病も治ったのでしょう。

ずっと自己中だったら、ボウイはベルリン時代くらいに死んでいたと思います。ベルリン時代から日本を経て、本当に普通の人間になろうとした、その過程も大好きなのです。売れる前にすごくもがき苦しんでいたのと反対のことを彼は同じくらい年月をかけてやったのです。売れるのに7年くらいかかったが、普通になるにもそれくらいの時間を要した。

デヴィッド・ボウイの本も書いている心理学者オリバー・ジェームスはこう言ってます。

「『スペース・オディティ』『世界を売った男』『ハンキー・ドリー」は彼の気が狂うのじゃないかという恐怖から作れた作品です。特に『ハンキー・ドリー』はよく出来ていて、すべて狂気の話です。これらのレコードは彼が「君(気が狂う)のことなんか怖くないよ、僕は君(狂気)を連れていくよ」と言っているようです。彼は自分の狂気と向き合っていた。そして『ジギー・スターダスト』『アラジン・セイン』『ダイヤモンド・ドッグス』の頃はたくさんのセックス、たくさんのドラッグをやって、しかも有名になってしまって、行き着くところまで行っていた」

なるほどなっと思います。

ボウイはこう言ってます。

「ダイヤモンド・ドッグが怖かったのは、自分がもう信じられないものに変異していたからで、恐ろしいことに、それはとても簡単なことだった。 60年代の僕は成功を得ようと、自分が書いたすべての作品の中からヒット作を見つけようとしていたけど、「スペース・オディティ」がヒットし、この新しい仮面が使えるって気づいたんだ。」

ジャケットの犬に変形していくボウイの姿は本当の自分の姿だったんだなと言うのがよく分かりました。

そんなボウイの葛藤の歴史が、ボディ・ブロウのように効いてきて、しんどいんですけど、なんか気持ちのいい刺激を与えてくれます。

被害妄想で中二病だったボウイが僕は大好きでした。