特殊音楽の世界48 「紹介とお知らせ」
- 2022.02.04
- COLUMN FROM VISITOR
今回は最近聴いたなかでとても面白かった音源のいくつかと、これから開催されるイベントを二つ紹介します。
まずここ最近では群を抜いて面白かったNO TONGUESというフランスのグループのLes voies de l’Oyapockという音源です。
コントラバス2人とサックスとトランペットの金管2人という変わった編成のグループです。
南アメリカ北東部のオヤポック川周辺を訪れてそこで先住民と行ったワークショップと環境音の採取を元に制作されたものらしいですが、そんな事情から想像されるような民族音楽っぽい感じからは遠く離れています。
ボートのモーター音の上にミニマルな菅の演奏が被さっていたり、何の楽器で出しているかわからない(多分コントラバス)超重低音が鳴り響いていたり、フィールド・レコーディングもうまく交えとても現代的な音になっています。
これ、注意深く聴かないとわからないですがモーター音が途中からコントラバスの音に変わっています。
ライヴもとても面白そうです。
フィジカルはどこも売切れのようですがデジタルアルバムは購入できます。
https://ormorecords.bandcamp.com/album/les-voies-de-loyapock
次は以前も紹介した高岡大祐さんと関島岳郎さんのチューバ・デュオのCD-R。
先日、このデュオを大阪と京都のとても小さい場所で観たのですが素晴らしいライヴでした。
どちらも小さい場所なので建物自体が拡大したチューバになったようで、まるで巨大なチューバのベルの中に居るような感覚に陥りました。
時にはホーミーや人の声にも聴こえるようなありとあらゆる種類の音質が次から次へと現れ、豊かな倍音に彩られたその演奏は菅2本だけとはとても思えない贅沢な音でした。
即興の時はもちろん、曲を演っている時でもその豊富な音質を自由自在に使うことによって既知の曲に新しい解釈が加えられ、今まで知ることがなかったその曲の魅力に気づかせてくれました。
京都でのゲスト・ヴォーカルにかりきりん、Colloid(中村佳穂のライヴではコーラスで参加)の下村ようこさん(最近素晴らしいソロ・アルバムをリリース)を迎えた演奏もとても印象に残りました。
建物全体が震えるような、チューバが奏でる「歌」を聴いていると音の振動こそ音楽の根源であると実感しました。
二人の演奏動画は以前に紹介したことがあったので今回はバリトン・サックスの吉田隆一さんを含めたトリオの動画を。
その時に購入したのが関島岳郎、高岡大祐tuba duoのCD-Rです。一応音源紹介なのでその時のライヴを思い出す素晴らしいこのCD-Rも紹介したいのですが、どうも会場限定らしく高岡さんのbandcampでも売っていません。いつかはそこでも売るのかもしれませんが、もし手に入るような機会があれば一度聴いてみてください。もちろんライヴもお勧めします。
もう1枚は、今や説明不要とも思えるくらい日本でも名前が知られるようになったインドネシアのSENYAWAの新譜、ALKISAH。
SENYAWAは日本ではセンヤワと紹介されていますがスニャワと読む方が近いらしいです。
自作楽器ビルダーのWukir Suryadiが作った竹の楽器とRully Shabara
のヴォイスだけというシンプルな編成ながら、とても強力なグルーヴを生み出しています。
二人はSENYAWAでも単独でも何度も来日して日本の音楽家とも一緒に演奏、共同制作を行なっていますが、中でも内橋和久とはManhanyawa(SENYAWA+内橋和久)はパーマネント・グループとしてCDもリリースしています。
SENYAWAは音源もいいですがライヴが格別に素晴らしいです。土着的でありながら現代的でもあるそのグルーヴは唯一無二のものです。
去年の12月という極々最近の彼らのライヴです。
もし生で聴く機会が今後あれば見逃せないと思います。
次にご紹介するのは、その内橋和久がリリースしたダクソフォンによるカバー・アルバム「singing daxophon」です。
ダクソフォンってなに?と思われる方もいるとおもいますがこのコラムでも以前ビョークの家でダクソフォンを演奏する内橋さんの動画を紹介しました。しかしその動画今は観られなくなっていますね。
ダクソフォンについてわかりやすい紹介記事を見つけました。
https://composition.space/daxophone
元々は2011年に亡くなったドイツの演奏家ハンス・ライヒェルが考案した楽器ですが内橋和久がその後継者として演奏・普及をしています。
公式なダクソフォンのページがこれ。
http://www.efi.group.shef.ac.uk/photos/idax.html
形も美しいですね。全て手作りです。
演奏しているところを観ないとよくわからないと思います。演奏動画はこのカルテットをあげてみましょう。他にもいろいろあるので探してみてください。
このようにとても多彩な音を出す楽器で、時は人の声にようにも聴こえるんですが内橋さんはこのダクソフォンを使ってカバー・アルバムを作りました。
ジェームス・ブラウンにZeppにクイーンにビートルズにボブ・マーリー等々誰もが知っている名曲がダクソフォンだけでカバーされています。
この公式ホームページでボウイのスペース・オディティが試聴できます。一度聴いてみてください。その魅力にとらわれることは確実です。
「singing daxophon」と 同時に、ダクソフォンの創始者ハンス・ライヒェルのダクソフォンだけによるオペレッタ・アルバム「YUXO」も内橋和久の手により再発されています。これも素晴らしいアルバムです。
次はお知らせです。
直前になりましたがONJQのレコーディング・ライヴが2月8日急遽決定しました。
これはコロナの感染拡大のため2月初頭のレコ発東北ツアーが中止になったことを受けて急遽決定しました。
ONJQ(Otomo Yoshihide New Jazz Quintet)Live Recording Session
大友良英(g)類家心平(tp)今米治(tb)水谷浩章(b)芳垣安洋(ds)
2022年2月8日
open19:00 start19:30 入場料5000円
会場:公園通りクラシックス
予約・お問い合わせ:公園通りクラシックス top page
もう一つ去年F.M.N.からリリースして様々な方面で大好評の音遊びの会の2枚組CD「OTO」ですが、ようやくレコ発ライヴが決定しました。
2022年3月27日(日)
OPEN 14:30 / START 15:00
【料金】予約:¥2,500 当日:¥3,000 | 学生・かぶっクラブ会員 2,000円(要学生証)|介助者・小学生以下 無料
【会場】:神戸アートビレッジセンターKAVCホール|神戸市兵庫区新開地5-3-14
【会場お問い合わせ】:神戸アートビレッジセンター (TEL:078-512-5500)
【お申し込み方法】:KAVC予約フォーム 、もしくはお電話にて受付いたします。
詳しくはhttp://otoasobi.main.jp/schedule.html まで。
どちらもよろしくお願いします。
石橋正二郎:レーベル、企画を行うF.M.N. Sound Factory主宰。個人として78年頃より企画を始める。82~88年まで京大西部講堂に居住。93年にレーベルを立ち上げる。KBS京都の「大友良英jamjamラジオ」に特殊音楽紹介家として準レギュラーで出演中。ラジオ同様ここでもちょっと変わった面白い音楽を紹介していきます。