第54回 プロジェクト・ヘイル・メアリー アンディー・ウィアー(著) 小野田和子(翻訳)

プロジェクト・ヘイル・メアリー アンディー・ウィアー(著) 小野田和子(翻訳)
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すいません今月も音楽とは関係ないSFの本です。でも昔はロックにとってSFというのはとっても重要な存在だったのです。デヴィッド・ボウイの「スターマン」なんてアーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」そのものでした。

どういう内容かといいますと、ある日、宇宙人が地球のラジオを乗っ取って「これから僕たちは君たちの支配者になる」と電波を流すのです。デヴィッド・ボウイの「スターマン」と一緒でしょ。

“夜遅くにラジオを聴いてたら、ゆっくりとした声が聴こえてきたんだ

それはDJの声じゃなかった、宇宙からのメッセージだった“

「スターマン」

地球人たちはその支配者たちをオーバーロード(上帝、空の上の神様って感じですかね)と呼ぶようになります。オーバーロードは支配するといいながらも、支配するような素振りはみせず、人間たちに異星特有の知識と科学力を与えていきました。既存の地球文化や国家というのはなくなりましたが、人類は発展していきました。そういう流れに反発するように一部の芸術家や学者たちは独自のコミュニティを作ります。そうするとそこに住む子供たちは念動力のようなものを使えるようになり、彼らはやがて宇宙を統括している大きな精神体「オーバーマインド」に進化するという話です。

話デカいでしょう、意味深でしょう。

ヒッピーなんかがコミューンを作っていたのはこういうSFにも影響されていたのです。

コミューン作ったからって進化しないですけどね。

このSFには当時冷戦で、世界が終わるというのも影響しています。

あの頃は、誰もがいつか「オーバーマインド」「スターマン」のような新しい子供が地球を一つにしてくれる、自分たちを救ってくれるかもという思いがあったのです。

アーサー・C・クラークはキューブリックの「2001年宇宙の旅」の原作者ですが、この映画のテーマも同じです。有名な映画ですが、なんの映画かよく分からないという人が多いかもしれませんので、説明します。

僕が子供の頃はLSDをやってこの映画を見るというのが、大流行してました。1977年くらいで、映画が初上映してから10年くらい経っていたのですが、とにかく名画座なんかでLSDをキメて、「2001年」を観るというのが僕の憧れでした。そうしたら、俺もスターマン(2001年はスターチャイルドですね)に成れると思ってたのです。バカですね。一緒に上映されていたのは「トミー」とか「ファントム・オブ・ザ・オペラ」とか「ロッキー・ホラー・ショー」です。オールナイトでぶっ飛ばせです。「2001年」を観る前にLSDをやると、ちょうどあの有名な宇宙ワープする場面のときに効いてくるのです。さすが、キューブリック、完璧に計算されているじゃんと感動する………ちがうそんな話じゃない。

「2001年」の出だしは、たくさんの宇宙船が宇宙遊泳している美しいシーンですが、あれは実は宇宙戦争前夜の緊張したシーンなのです。猿人が仲間を殺すのに使った骨が、人類を滅亡させる宇宙船にまで進化しましたということを一瞬で表現した映画史に残る名シーンなのです。

そんな時にモノリスとよばれる何千億年も前に宇宙人が残したものが月で発見されます。そしてそれを調査に行くという話です。そして、そのモノリスが電波を送っている木星まで調査しに行く時に、人類の未来をかけた戦いがあるのです。あれ戦いをしていたって理解してました?誰と戦っていたかというと、コンピューターのHALとです。ようするに人類を進化させた宇宙人は地球の未来を人類にするかAIにするかチェックしてたのです。で人間が勝って、スターチャイルドという存在になって、地球に戻ってきて、戦争を終わらせるという映画なのです。最後にドーンと現れてなんじゃこれはとみんな思うと思うのですが、そういうことなのです。

すごいでしょ、AIと人間の戦いって、まさに今言われていることを、50年も前に映像化してたのです。

人類を救いたいですよね。これがロックの一番のテーマだったこともあるんですよ。こんな大きなテーマを語れる人今いますかね。ロックで政治を語るなとか、そんな次元を超えていた時代があったのです。

僕らの子供の時の日本のSF映画もそうでした。「妖星ごラス」「地球防衛軍」「宇宙大戦争」などみんなこれがテーマです。日本の場合は日本が戦前に夢見ていたことのメタファーです。そう大東亜共栄圏です。日本がアジアから西洋の帝国主義を追い出して、そして、日本が世界を制覇して、地球を一つにするという大きな夢を夢見てたのです。日本でかいでしょ。ナチも同じこと夢見てましたが。イギリスも全部一緒です。こういう日本のSF映画って、挫折した大きな夢として、描かれていたので、外人さんも登場して、なんとなく世界で地球を救おうとしながらも、日本人がリーダーとなって危機を救うという内容なのです。

いつから日本人はこんな夢を持てなくなったのですかね。増税したい財務省の陰謀ですかね。このままだと日本は滅ぶ、だから増税しないと、気が狂ったように何十年もいい続けられて、日本人は卑屈になってしまったのかもしれませんね。

バブルの時は東京の土地だけで、アメリカ全土が買えるとか言ってたんですけどね。

アメリカのちゃんとしたシンクタンクが2100年の世界のGDP予測してますが、日本はちゃんとアメリカ、中国、インドに次いで第4位です。2070年か、50年かいつか忘れましたけど、一度ドイツに抜かれますけど、100年後も日本は世界をリードーしていく国の一つとして、とっても重要な位置にいる予想です。

人口が少なくなっていると不安を煽るのはなんでなんですかね。イギリスなんて、日本の人口の半分しかないのにしっかりやってますよ。日本はけっこう人口が多いんですよ。べつに一億人切るくらいの人口になってもちゃんと世界第4位の地位を守っていくのです。もっと世界をよくするためにどんどんと世界のためにいろいろとするべきです。「地球防衛軍」の頃の気持ちを忘れたらいけないです。

そういう話ではなかったです。今回紹介したいSFは「プロジェクト・ヘイル・メアリー」で、ファースト・コンタクト(宇宙人と初めて出会う奴ですね)と人類滅亡ものをうまく組み合わせた話なんですが、とっても興味深い考察があって、なんですけど、世界があと何十年かで終わるかもしれないという時、人類は地球防衛軍みたいなものを作るんですけど、そのリーダーとなるのが日本でなく、アメリカなのです。アメリカが世界に対して緊急事態条項を発令するわけです。もちろん自分の国には発令出来ますけど(唯一発令出来ない国が日本なんですけどね。今回のコロナのゴタゴタはそういうことです)、他の国には発令出来ないんですけど、それは武力によって発令しているような動きを見せるわけです。ようするに会議なんかやってたら、時間の無駄なので、ゴタゴタ揉めた時はとにかくアメリカが全部率先してやる。文句あるの、じゃうちと戦争する、勝てないよねという感じです。地球を救う計画プロジェクト・ヘイル・メアリーを発令ししていくわけです。名前からしてすごいでしょう。でもこのSFの通りだよなと今回のロシアとウクライナの戦争を見て思いました。とにかく軍事大国2位のロシアがコテンパンにやられるじゃないですか、これはやっぱアメリカ強いなと。だから中国が台湾を攻めたりしたら、確実にコテンパンにやられると思うんです。

結局アメリカが世界を制覇するのかと、そういう世の中だよなと思う今日この頃です。

アメリカがオーヴァーロードなんですよ、そういう管理下の中で僕たちは独自の世界を作ってオーバーマインドを生まないといけないんだなと思うわけです。

なんてことを「プロジェクト・ヘイル・メアリー」を読んでいて思い出しました。

50年前の悪夢がどんどん蘇ってきてるようで面白いです。世の中ってそんなに変わんないんですね。