第55回 西洋音楽史大図鑑 スティーブ・コリッソン(監修)藤村奈緒美(翻訳)

西洋音楽史大図鑑 スティーブ・コリッソン(監修)藤村奈緒美(翻訳)
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今回はちゃんとした音楽の本です。音楽をやっている人なら、読んでおくべき本かと。基礎教養です。この西洋の音楽の歴史をちゃんと知っていないとフランク・ザッパとかジョン・ケージを語るべきじゃないと思います。

僕は日本人なのだから日本の音楽史だけでいいような気もするのですが、洋楽好きとしてはこの辺のことはちゃんと理解しておかないといけないと思い57歳とほとんど死の方が近い年齢なのですけど、こつこつ勉強しております。しかし僕は一体何を目指しているのでしょう。

一番の目標はADOさんの「うっせいわ」みたいな若者に受けるような音楽を作ってみたいということです。こういう音楽はグダグダ言わずに、いい歌詞を書いて、ボカロで一生懸命曲を作っていったらいいのですが、その前に僕はファンキーな音楽を作りたいという脅迫観念にかられています。

なぜ日本人はファンキーな音楽を作れないのかということに悩んでいます。お隣の韓国は完全にこのアジアと西洋の違いに気づいて、BTSなど本当に西洋で通じる音楽を作っています。なぜ日本人がこれを出来ないのかということを悩んでいるわけです。

K-POPなんて元々はJ-POPをお手本としてたのに、J-POPじゃ世界は制覇出来ないと西洋の音楽をお手本に仕出しました。

日本は自分たちの国のマーケットがデカいので、日本の半分のマーケットしかない韓国みたいに世界まで視野に入れなくっても食っていけるから、世界の音楽とは違った頭重視の音楽の方が売れるからでしょうね。やっている人たちもバックビート、裏拍を強調したらいいんだろうという感じになっていて、誰もスウィングしなくなっているのです。で外国の一部の変態から、「日本のスウィングしない音楽は面白いよね」とシティ・ポップとして愛されているわけです。

YMOなどもアフリカン・バンバータから「世界一ファンキーなミュージックだ」と言われているから、日本人も普通にファンク出来ると思っている人ばかりだと思いますが、YMOの元ネタであるベルギーのテレックスを聴いてみてください。YMOとは違った普通に西洋のファンキーなミュージックです。アメリカの黒人がやっているリズム感と違いがありません。ドイツ人のジョルジョ・モルダーが作る音楽もそうです。当時は打ち込みだろ、機械がやっているだけだろと批判されていましたけど、アメリカの黒人と同じグルーヴを持ってます。ジョルジョ・モルダーがプロデュースしたブロンディの「ハート・オブ・グラス」のリズムの基本は日本人が作ったローランドのCR-78というリズムマシーンが作っているのに、なぜ日本人が洋楽を作るとリズムが裏返ったように聴こえるのか不思議で仕方がありません。

なぜこんなボタンの掛け違いが起こったのか、日本にはたくさん優秀なミュージシャンがおられるのに、なぜこれを治せないのか、不思議で仕方がないです。

頭重視の音楽は日本で売れるからでしょう。先輩がやってきた音楽を否定してしまうからでしょう。

昔坂本九「上を向いて歩こう」が普通に海外で売れたのは西洋の音楽と同じリズム感を持っていたからです。何を歌っているのか全く分からなかったけど、日本人は猿と思って、原爆でぶっ殺してもいいと思っていた日本人を「あーぼくらと同じ感性を持っている人たちなんだ」と初めて理解したのです。

シティ・ポップだと「こいつら俺らとなんか違うよね、変だよね」と思ってしまっていると思います。これも一つの戦略ですけどね。でも僕は西洋と同じファンキーな音楽を作ってみたい。

ビートルズもそうなんですよね。彼らはしゃべっている時はすごいリヴァプール訛りなんですけど、歌う時はアメリカ英語で歌っています。なんでそんなことするかと言うとアメリカで売れるためにです。サンシャインみたいにたまに自分たちの訛りで歌う時があってかっこいいですけどね、オアシスなどがビートルズ英語を受け継いでいて、オアシスがレコーディングで初めてビートルズぽく「サンシャイン」って歌った時は、スタジオにいたアラン・マッギーは「やったー」って叫んだそうです。これと同じように彼らもアメリカ音楽のリズムの違いにちゃんと気づいています。

みんな自分達独自なことをやろうとしているんですけど、みんなやっているのはアメリカ音楽です。日本人はいつまた坂本九の「上を向いて歩こう」みたいなことをやろうとするんでしょうね。円が360円の時に戻ったら、またアメリカにみんな目を向けるようになるんですかね。円が安くなって大変だといいますけど、ミュージシャンにとったら、円が安い方が海外でやる気が起こるんです。だって1000ドルのギャラが円高の時だったら8万5千円だったのに、13万円になっているんですよ。固定相場360円の時なんて、1000ドルのギャラが36万円です。飛行機代が高い、そりゃそうかもしれませんが、飛行機に乗るのは一回だけです。アメリカで50本のギグを組めれば二倍になった飛行機代なんてなんともないです。

円安になれば、外国のアーティストのギャラが払えなくなって、外タレの来日が減って、日本人のアーティストのコンサートに行く日本のお客さんが増えます。フジロックなんかも外国のアーティストの割合が減って、日本人の割合が増えます。

為替なんてそんなものです。というか自国通貨が安い方が自国にとっては得なんです。悪い円安なんて理論、経済学にはないです。なんでマスコミはそんなことを声高に言うんですかね。増税したい財務省、金利を上げたい金融機関の陰謀でしょうね。

経済学では、為替を安くすることは近隣窮乏化といいます。自国の為替を安くすると周りの国が大変になるということです。

ウイキにもちゃんとこう書いてます。

“政府が為替相場に介入し、通貨安に誘導することは国内産業の国際競争力は増し、輸出が増大する。さらに国内産業が育成される。やがて乗数効果により国民所得は増加し、失業は減少する”

昔プラザ合意でアメリカが何をしたかというと、お前らが為替介入して、円安にしているから、アメリカの製品が割高になって売れないから、為替介入するなと言ったわけです。近隣窮乏化なってますよということですね。「そんなん知らんがな、お前らの製品がよくないだけやろ」と言えばよかったんですけど、なぜか日本はアメリカの言うこときいてしまうんです。プラザ・ホテル(だからプラザ合意って言うんです)に呼びつけられたのは日本だけじゃなく、ドイツも呼びつけられたんですが(敗戦国ってことですね)、ドイツはちゃんと「知らんがな」と言って無視しました。プラザ合意っていいますけど、本当は日本とアメリカ合意、ドイツ反対なんで、なんも合意してないんです。

日本にとって円安というのは何一つ悪くないんですけどね。海外に行きたい金持ちが海外で贅沢出来ないや、外車や海外のブランドを買って見栄をはりたい奴が困るくらいなんですけどね。

円安が1%進めば、GDPが1%伸びると言われているんですけどね。輸出よりも輸入が多い中小企業は大変ですけど、それは政府が中小企業を助ける政策をしていけばいいだけです。

一体僕は何の話をしているんでしょう。ちゃんと勉強した方がいいかなということです。こつこと西洋の音楽史を勉強したいと思っております。『西洋音楽史大図鑑』は結構勉強になります。高い本ですが、音源は今はただでいくらでも聴ける時代になっているので、どんどん知識が膨らんでいきます。フランク・ザッパというのはここで紹介されている作曲家たちと同じように扱われたかったんだなというのがよく分かりました。