第61回 唐突ながら: ウディ・アレン自伝 ウディ・アレン(著)金原瑞人(翻訳)中西史子(翻訳)
- 2023.01.06
- KYOTO
一番好きな映画監督はウッディ・アレンの久保憲司です。
最新作『リフキンズ・フェスティバル』は#MeToo運動に巻き込まれて、アメリカでは上映されず、日本も上映されなかったです。アメリカと日本以外の国では上映されているのに、悲しいです。
『リフキンズ・フェスティバル』を観にヨーロッパに行こうかなと思っています。あっ、ヨーロッパはダメですね、イギリスで観ないと。ヨーロッパは吹き替えなので、彼の映画の魅力が半減してしまいます。
文化が高いとされるヨーロッパが吹き替えって笑ってしまうでしょう。それくらい自分たちの言語を誇っているということなのです。アメリカの場合は、字を読むのがめんどくさいということで、吹き替えです。
60年代にアメリカで高尚なヨーロッパの映画が流行っていたのは、当時のハリウッドはエロいことを自粛していて、エロいのを観たい人はヨーロッパ産の映画を観に行くということだったのです。
僕も人のこと言えないですけどね、マーロン・ブランドが最後にバターを塗ってアナル・セックスをするという『ラスト・タンゴ・イン・パリス』という高尚な映画の内容をまったく覚えていません。
今ウイキを観たら、『ラスト・タンゴ・イン・パリス』は72年公開(日本は73年)、70年初頭まで、エロがお客を呼ぶという効果があったのでしょう。僕は75年くらいに太融寺の梅田ロキシーで見ました。
梅田ロキシーという名画座に行くには、梅田の地下街を通って、そのどん詰まりに、シャブ中と立ちんぼとオカマ(今はオカマなんて言葉を使うのは下品だって分かっているのですが)の溜まり場、泉の広場というがありまして、まさにそこは世界の終わりって感じでした。その頃から50年近くたっていますが、ちょっと前に“泉の広場で立ちんぼしている人がいて警察に捕まった”という記事が出ていてびっくりしました。ジェントリフィケーシンョンを頑張ったって、あかんもんはあかんねんな、地場の力って怖いなと思いました。
セックスも知らなかったのに、『ラスト・タンゴ・イン・パリス』を観に行っていた自分を笑ってしまいます。ちなみに監督は現在巨匠のベルトリッチでした。
ベルトリッチの師匠は未成年の少年に悪戯をしようとして、その子に暴行され、車で轢き殺された大巨匠パッゾリーニです。ずうっとそういうこともあるのねと思っていたら、どうも昔から少年1人の犯行としては無理があるとされ、ネオ・ファシストによる殺害という説が囁かれていたそうです。75年くらいのイタリアってきな臭いのです。
ベルトリッチの『暗殺の森』とか、頭グルングルンしながら観ていました。あの頃、名画座二本立て300円(平日の午前中に入れば)、立ち食い蕎麦70円(月見でも90円やったかな)、梅田までの電車賃往復140円(子供料金)、510円あれば1日楽しめました。
そうやって、エロを楽しんでいたわけですが、ウッディ・アレンで最初に売れた映画もエロだったそうです。『ウッディ・アレンの誰でも知りたがっているくせにちょっと聞きにくいSEXのすべてについて教えましょう』でした。
こんな変わったコメディをとっていたウッディ・アレンが1977年(日本公開は78年)に突如リアルなコメディ・ロマンス『アニー・ホール』を撮って、アカデミー賞を撮るのです。
僕は14歳で、『アニー・ホール』は上映時間を5分でも過ぎたら観ないというギャグ以外全く理解しなかったですが、大きくなったら、彼女と一緒にロブスターを茹でるんだと心に近いました。
ウッディ・アレンの自伝を読んでいて、この映画は意識の流れを映像化しようとしていたそうで、あーなるほどなと。
彼の映画を観ていると、NY、マンハッタンに住みたくなります。ウッディ・アレンの映画は全部それです。NY、パリ、ロンドン、バルセロナに住みたくなります。この自伝を読んでいるとウッデイ・アレンの実生活が反映されています。
ウッディも「この本のゲラをチェックしていて、ぼくが一番いいなと思ったのは、ロマンチックな思い出や、我を忘れて夢中になった素晴らしい女性たちについて書いたところだ」と書いておりますが、『アニー・ホール』のあのシーンは、別れた奥さんとのリフレクションなんだなと。前作『レイニー・デイ・イン・ニュー・ヨーク』の女学生と監督のドタバタは、現在の奥さんであるスン・イーとの出来事が反映しているんだなと色々楽しめました。
#MeToo運動に巻き込まれ次の映画が撮れない状態のウッディ・アレンですけど、この本読めば彼の潔白も分かるでしょ。彼自身自分をたいした映画監督じゃないと思っているので、別にもう映画が撮れなくなってもいいよと思っているのが、彼らしいなと思います。
最後にいいます。ウッディ・アレンは、フェリーニ、ビスコンティ、スピルバーグ、キューブリック、ゴダール、トリフォーに並ぶ偉大な監督だと思います。
唐突ながら: ウディ・アレン自伝 ウディ・アレン(著)金原瑞人(翻訳)中西史子(翻訳)