第63回 ジョン・ウォーターズの地獄のアメリカ横断ヒッチハイク ジョン・ウォーターズ(著) 柳下毅一郎(訳)

ジョン・ウォーターズの地獄のアメリカ横断ヒッチハイク ジョン・ウォーターズ(著) 柳下毅一郎(訳)
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そろそろコロナが終わって、色んな所を旅をしたいなと思ってたからか、こんな本を手にしました。

何年前か忘れたんですけど、あるバンドがツアー中にヒッチハイクしているオッチャンを見たら「あれ、ジョン・ウォーターズじゃない」ってことになって、戻って乗せてみると、本当にジョン・ウォーターズだったという大事件がありました。それをツイッターで見た僕は、さすがゲイ、ヒッチハイクを発展場に利用してるのか、と衝撃を受けました。

映画関係の友達が「(『ドラッグ・ストア・カウボーイ』の)ガス・ヴァン・サントなんか顔バレしてないから、めっちゃ楽しんでるで」と言ってたんですけど、確かにガス・ヴァン・サントは超大物監督ですけど、顔が思い浮かばないですよね。

でも、『ピンク・フラミンゴ』『ヘアー・スプレー』などの変態大監督ジョン・ウォーターズは顔が一発で分かるすよね。時速50キロとかで走ってても、「あれ、ジョン・ウォーターズじゃない」って分かるくらいですから。

そんな有名人がヒッチハイクなんて危険じゃないのって、思ってたら、自身のヒッチハイク経験を本にするなんて、すごいなと思っていたので、ついに買ってしまったのですが、読んでみると、実はヒッチハイクというのは本にするアイデアでした。ちょっと安心したのですが、読んでいると、たまにヒッチハイクはしてるみたいで、本当にあのツイッターの出来事はジョン・ウォーターズの日常なのか、どうなのか分からないようになってます。この本も最高のヒッチハイクの小説が13本と、最悪のヒッチハイクの小説が同じ数と、現実のヒッチハイク・ドキュメンタリーが21本という三部構成になっています。

さすが、ゲイ、妄想がヤバいです。ゲイの人って、妄想がすごいのです。僕らノンケは、子供の時にセックスをしたいなと思うと、そのまま何も考えずに実行していくじゃないですか、でもゲイの人って、やりたいと思っても、それはいけないことじゃないかと思ってしまうのです。自分が本当にゲイなのか、ゲイじゃないのか、すごく悩むわけです。だからデビューするまでに、肉体労働者の男に童貞を奪われるとか、尊敬していた先生が実はゲイでとか、すごい妄想を膨らましていくわけです。デビューするために新宿2丁目に行くにしても、すごい葛藤があるわけです。本当に行っていいのか、自分はゲイということを隠して、ストレートとして、人生を生きていくべきじゃないかなどと。

まさにこの本なんかそんな話ですよ。警察官、若いレイヴァー、宇宙士官候補生など、ヴィレッジ・ピープルな色んな男たちにヒッチハイクされて、妄想を膨らませていくわけです。

あと、この本のテーマとして、自分も66歳なんだから、最後にヒッチハイクして弾けてやれという、メッセージもあるわけです。最新作『Mr.Know-It-All,The Tarnished Wisdom of a Filth Elder』は70歳だから久々にLSDをやるかというお話もあるみたいで、これも読みたくなりました。

一番のテーマはアメリカを旅することです。憧れますよね。僕も人生が終わる前ににルート66を行ってみようかなと思います。グランドキャニオンは観たことあるのですが、ロックの聖地、ヨシュア・ツリーは行ってないんです。キース・リチャードとグラム・パーソンズがUFOを観ていた岩に登って、メスカリンでも久々にキメてみようかと思いました。

そんな犯罪みたいなことしちゃいけない、いいじゃないですか、僕もあと10年くらいで死ぬのですよ。誰にも迷惑かけないなら、最後に好き勝手やってもいいじゃないですか!

これはそんな本です。旅したいですよね。日本中を小林一茶や、正岡子規みたいに旅して周りたいものです。正岡子規の子規って名前は、自分の死とひっかけっているのです。結核になって、血を吐いて、鳴いて血を吐くと言われるホトトギスと自分を重ね、ホトトギスの漢字名子規を自分の名前としたそうです。子規は自分の死を意識しながら、その短い時間を廃れていた俳句を新しい形で甦らせることに人生をかけた人だったなと。

とにかく今の人は生きよう、生きようとしすぎです。卑しいです。死を考えて生きていかないと、人間は死ぬんですから、生きようとすることはさもしいです。

コロナで死ぬことも人生ではないですか、コロナになるまで一生懸命生きていたのなら、それでいいじゃないですか、死ぬのが嫌な人は、それまで一生懸命生きてなかった人です。自分の人生もっといいことがあるはずだ、もっと生きたいなんて考えることは恥ずかしいことです。今が一番大事だと生きることこそが、大事なはずです。

柿くふも今年ばかりと思ひけり

               (正岡子規)

もっと死を意識した方がいいですよ。

そして、ジョン・ウォーターズみたいに、面白いことだけして生きていったらいいのです。

そうしたら、いい世の中になります。

みんな長く生きようとするから、世の中は汚くなるのです。