第66回 THE CLASH BEFORE & AFTER クラッシュ写真集 ザ・クラッシュ 1982年 PENNIE SMITH<写真>

THE CLASH BEFORE & AFTER クラッシュ写真集 ザ・クラッシュ 1982年 PENNIE SMITH<写真>
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東京の奥沢のVIVA Strange Boutiqueさんというお店で写真展をやらせてもらいました。とっても変わったお店で前から気になっていました。

ロック関係のお店ってなんか売れるアーティストとコラボばっかりしたりするんですが、VIVAさんはモノクローム・セットやテレヴィジョン・パーソナリティーズ、フェルトなどとコラボしたりしてとっても気になっていたのです。

気になっているというのは、電気グルーヴの卓球が言うところの「クボケンは金の話しかしない」ということで、採算どうやったはんねんやろなんですけど。

日高さんとGAN-BAN豊間根さんが立ち上げたインディ・レーベルREXY SONG初の日本人アーティストとなったTHE ALEXXの杉浦くんに「卓球が、俺は金の話ばっかりするって言うんだけど、俺、そんなに金の話しないよね」って訊いたら、「卓球さんが、クボケンを空港からプレシャス・ホール(札幌の名クラブ)まで送ったんだけど、その間、クボケン金の話しかしなかったよ、って言ってましたよ」と言われました。

気をつけます。

なので、VIVAさんでも頑張って「どうやって商売やってはるの」と訊かなかったです。でも本当にすごいのです。先にあげたアーティストだけじゃなく、元アント・サリーのフューさんとコラボしてめっちゃかっこいいTシャツやベレー帽作ったり。

元アント・サリーのフューさんといえば、僕ら関西パンク憧れの女性でした。元ラフィン・ノーズのヨーランこと世界的DJ YOJI BIOMEHANIKAことYOJIさんが高校生の時に阿木譲さんのロック・マガジンの事務所にバック・ナンバーを買いに行ったらフューさんがいて、「“あんたかっこいいな、うちのバンドでベース弾けへん”と顔めっちゃ近くで言われてん、めっちゃ揚がったわ」と言ってて、それくらい憧れの人だったんです。

僕もロック・マガジンにバック・ナンバー買いに行きました。そうすると、阿木さんが「これもつけてあげるよ」と他のバックナンバーもくれるのです。八百屋さんかと思いました。

VIVAさんにはその頃の匂いがするのです。今は大阪のおしゃれなエリアとなった堀江、当時は本当に何もない所で、そこにあったクラブ、パームスで踊っていたことを思いだします。

VIVAさんには、阿木さんや、パームスをやってた日限(ひぎり)のママみたいな関西人独特のええ加減さは全くないですけど。

線路沿いにあって、ロンドンのお店も思い出します。僕が思ったのはラフ・トレードはもちろんなんですけど、アート、写真本の専門店Donlon Booksや料理本の専門店、Books For Cooksを思い出しました。いるだけで自由になったような気がする店、好きなことだけやって生きていくお店。

Donlon Booksみたいなお店は日本でも何店舗もありますけど、ちょっと違うんですよね、日本のはちょっと格式張ってしまうというか、無理しているというか、なんか「私頑張っているわ」感が出過ぎていると思うんです。Donlon Booksなんて本当に街外れにあって、マーケットがないと誰もいかんよという所でやったはるのです。好きなことするためにそこを選んでいるんでしょうね。

アート、写真専門店は難しいと思うんですけど、料理の専門店は日本でありかなと思います。でも京都だとレボリューション・ブックスという立ち飲みと料理、絵本の本屋さんをやっている画期的な立ち飲み屋さんがあります。

Books For Cooksはレボリューション・ブックスさんとちょっと違ってて、料理本の中から毎日一つレシピを選んで、それでランチをやったはるんです。すごくないですか!!!近所からお皿をもった常連さんがテイク・アウトしにきたり、ほんと、近所に引っ越したいというお店なのです。僕の今住んでいる所はそんな感覚を味合わせてくれるキュロットさんというお店があります。コロナ以降はおひとり様食堂になったので、ぜんぜん行けてないんですけど。

僕には憧れのお店がたくさんあります。VIVAさんもその一つです。

そんなお店で、阿木譲さんがやっていたロック・マガジンでアーティストにインタビューしたり、写真を撮られたりしていた羽田明子さんが個展を開かれていたので、僕もやらせてもらえないかとお願いしたのです。

そして、今回初めて、お店にも行きました。写真展では僕が若い頃聴いていたマイブラとかキュアーがかかっていて、本当に完成されていない、彼らの若い音、メロディを聴いて、あらためてバンドやってみたいなと思いました。

自分が写真を撮り出したというか、写真やってみたいなと憧れたNMEなんかの写真を思い出したました。その頃のNMEは新聞スタイルで、とっても大きいな紙面に白黒の写真がドーンと載っていたのです。色がついてもあと一色くらい、それがかっこよかったのです。だぶん彼らが新聞というスタイルにこだわったのは安く出来るというのもあったんでしょう。もちろん、ぴあみたいにコンサート情報を週間で載せることで金を稼ぐというのもあったのでしょう。でも、ロックが、今でいうオルタナティヴのインディがイギリス中のキオスクの顔をしめていたのです。

今はSNSで同じことが出来ますけどね。でも今は人それぞれのトップ・ページですけど、NMEなんかは誰かれ構わず、これがかっこいいんだとイギリス中に宣言していたのです。

そして、ロック・メディアが弱かった世界中のメディアはそれに追従していったのです。イギリスのメディアを制覇すれば、アメリカ、ヨーロッパでも話題になっていったのです。

そんなNMEの中で僕が憧れたカメラマンはペニー・スミスです。彼女のザ・クラッシュの『ビフォー・アンド・アフター』はロック写真集の傑作です。

僕も憧れて、ブランキー・ジェット・シティの最後のツアーの写真集『スウィート・デイズ』はこのペニー・スミスの写真集のようにするしかないだろって、作りました。

どちらももう古本でしか手に入りませんが、よかったら買ってみてください。

最後に今はユナイテッド・アローズに買われ、その後ユニクロへ事業譲渡へされるが交渉決裂中のキャス・キッドソンなんか、本当にロンドンのホーランド・パークにある小さなお店だったんですよ、お店ってああやって展開出来るのかといい勉強になります。身近な所では京都の猪一さんってラーメン屋がサザビーに何億で買われたり、僕もこんな感じで最後に一発当てたいと思っている今日この頃です。

VIVAさんにはこんな嫌らしさは一切ありません。

あっ、最後にまた金の話になってしまいましたね。すいません。