第80回 Americana: The Kinks, the Riff, the Road: The Story レイ・デイヴィス(著)
- 2024.08.07
- KYOTO
キンクスのレイ・ディヴィスの自伝『Xレイ』はあまり自伝らしくないということで、読んでなかったのですが、なぜかこの自伝2作目『アメリカーナ』は買ってしまいました。
『アメリカーナ』というタイトルから、自分が憧れた国、そして、その国が変わってしまったこと、彼の人生の終焉をタブラせているのだろうなと思って読みました。
まさにそんな内容で、終活を考えている僕にぴったりでした。
ぜんぜん知らなかったのですが、彼は自分に一番影響を与えてくれた音楽が生まれたニュー・オリンズに住んで、音楽を作ろうとしていたのです。ジョニー・サンダースと一緒ですね。しかし、みんなニュー・オリンズに住みますね。ジョニー・サンダースがニュー・オリンズで亡くなっているのを見つけたのは、隣に住んでいたウイリー・デヴィルですもんね。レイの自伝にも出てくるのですが、あのアレックス・チルトンも住んでいるそうです。レイ・ディヴィスによると、人嫌いなので、隠匿生活しているそうなのですが。じゃ、なんでニュー・オリンズに住む、どこでもいいだろうって笑ってしまいました。
というか、レイが、ニュー・オリンズで、強盗にあって、足を銃で撃たれていたのを初めてしりました。そういう事件がこの自伝では交差していって、さすがレイ・ディヴィスの自伝だなと思わせてくれるのです。『Xレイ』は現在の自分が、未来の自分にあって、過去を振り返るという内容だと思うのですが、手法は一緒ですね。
まさに彼の楽曲、アルバムのような自伝なのです。
そして、これを読みながら、僕の最後の終活は、やっぱロンドンに住みたいな、自分がよく住んだノース・ロンドンに最後に住もう、じゃレイ・ディヴィスが生まれ育ったフィンチェリー、マズウェル・ヒルに住みたいなと思っていました。もちろん町おこしがうまくいったペッカムやショーデッチにも住みたいな、ロンドンじゃなく、田舎がいいな、ブリストルのような小さな街がいいな、いやどうせなら郊外の高級住宅街のリッチモンドがいいな。と毎日妄想しているのですが。
デヴィッド・ボウイが若い頃住んでいたブロムリーもいいな。ロンドンに住んでいた頃は、セックス・ピストルズのメンバーが都会の子じゃないという意味でバカにしてつけたブロムリー親衛隊のように、僕もブロムリーに住むかと思っていたのですけど。お爺ちゃんになって、中心地に出るのは週に一回でいいやろと思うと、ブロムリーでもいいやろと思うのですが、どうなんですかね。
ロンドンに住んでいる時は、「このままバスに乗っていったら、あのキンクスのマズウェル・ヒルに行くのにな」と思っていたんですけど、一度もそのあバスの終点地に行かなかったです。あんな地の果て行きたくないわと思っていたのです。
今回この自伝を読んで初めて気付いたのですが、キンクスの名盤『マズウェル・ヒルビリーズ』って、そういうアルバムなんだと理解しました。バスの終点地、マズウェル・ヒルに住んだら、そこから抜け出せなくって気が狂って死んでしまうというアルバムなんだと気付いたのです。
なんとなくキンクスの名盤『ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ』や名曲「ビクトリア」みたいな古きイギリスを懐かしむ感じかなと思ってしまっていました。
『マズウェル・ヒルビリーズ』“ヒルビリー”(アメリカのアパラチア山脈に住む貧しい人たちの総称、ここからロカベリーが生まれたので、めっちゃくちゃ重要なんですけど、映画『脱出』なんかではレザーフェイスと同じくらいヤバい奴として描かれています。こういうアメリカンホラーの幻影となっている人たちですね。自分たちが見捨てているという罪悪感が恐怖、差別を生むのでしょう)にひっかけているのだから、分かれやなんですけど。そうあのジャケットのパブはホテル・カリフォルニアなのです。写っているメンバーたちはそこから抜け出せなくなった亡霊なのです。
この自伝でもまさにそんな雰囲気がよく描かれています。こんな音楽業界に入って気が狂ってしまう。抜け出せない、なんでや、俺はいい音楽を作りたいだけなのにという悩みです。
大事な弟とも仲悪くなってしまう。彼にとって一番大切なものは家族なのに。『ヴィレッジ・グリーン・プリザヴェイション・ソサエティ』『マズウェル・ヒルビリーズ』もまさにそういうアルバムですよね。
自伝の中にも出てきますが、レイがプリテンダーズのクリッシー・ハイドンと付き合っている時、アンコールでクリッシーが出てくる頃には、弟のデイヴは自分の車に乗って、会場を出ていったそうです。その対策として、俺はデイヴの彼女もキンクスで1、2曲歌わすべきだったかなと、真剣に悩んでいるのです。もちろん、レイらしい皮肉なのでしょうけど、笑ってしまいました。
世の常識となっている「ユー・リアリー・ガッド・ミー」のギター・ソロはジミー・ペイジという説も、レイはちゃんと「そんな奴はスタジオで見なかった」と答えています。オアシス兄弟とは違うのです。レイは本当に弟のことを偉大なミュージシャンとして讃えています。
本当にそうなのですけどね、歌もギターもデイブの方が何百倍も上手いのです。初期の「ビューティフル・デリラ」「ロング・トール・ショーティー」などデイヴのヴォーカルの方がかっこいいのです。
レイの方が物語を作るのがうまかっただけ。レイは不眠症で、夜寝られず、だから昼はいらいらしていて、すぐブチ切れる、そのせいで一番大事な時期にアメリカで5年間活動出来なかった。でも、それを乗り越え、アメリカで売れていく過程を綴ったのが今作です。
キンクスがアメリカで売れて、経済的にも安定すると、やはり弟がソロを出す、弟が離れていくという物語でもあるのです。
初期のリフ曲が、ジョン・リー・フッカーなどのアメリカのブルースを自分らなりに、しかもイギリス英語で歌うということをちゃんと考えていたというのも書いてあって、感動します。レイとデイブはロンドンの北部の両親の家のラウンジでピアノとギターであのリフを考えたのです。イギリスのブルースを発明したのです。
そして、最後に、その武器を与えてくれた原点、ニュー・オリンズに住んでやってみようと思っていたのがすごい。しかも強盗にあって、足を撃たれていたりする。それもレイらしいなと。
愛するアメリカ、憎むアメリカという感じでしょうか。ぜんぜんアメリカを憎んだはれへんけど。レイは誰も憎んでないのです。こういう道もあったけど、俺はその道は行かなかったなという後悔がちょっとあるだけなのです。
終活はロンドンでって書きましたが、僕もレイみたいにジャズやブルース、ロックンロールが生まれたニュー・オリンズもいいかなと思っています。
この後、レイの最初の自伝『Xレイ』も読んでみようと思ってます。今回は続きって感じですかね。
Americana: The Kinks, the Riff, the Road: The Story レイ・デイヴィス(著)