第82回 Gypset Travel ジュリア・チャップリン著
- 2024.10.28
- KYOTO
本は買ったらすぐ売るタイプです。
ずうっと狭い家に住んで来たので、モノが持てないし、貧乏なので、何かをやる時はそれまで持っていたモノを売って生活してきました。
一生懸命集めたドカベンの漫画を売って、キング・クリムゾンのレコードを買っていました。僕が14歳の頃、今からなんと46年前、ドカベンは一冊70円で売れました。「ドカベン」や「アストロ球団」、「男一匹ガキ大将」を8冊売れば、キング・クリムゾンのカット盤(廃盤、昔は売れなかったレコードの端をカットして売っていたのです。在庫を抱えていると税金がかかるので、レコード会社はそうやって在庫を処分していたのです。)が一枚買えました。
そういう生活を何十年もしてきたのかと思うと笑ってしまいます。だからKindleで本を買うのは、場所をとらなくっていいなと思いながらも、なんか嫌なのです。売れないから。
そんな中でずうっと置いている本があります。ジュリア・チャップリンの『ジプセット・トラベル』という本です。ジプセットという言葉は感のいい人は分かると思いますが、ジプシーとジェットセットを混ぜた造語です。今ジプシーと言うのはダメなので、この本ダメかもしれませんね。ジェットセットとは飛行機で飛び回る富裕層のことです。ザ・モノクローム・セットの曲で「ザ・ジェット・セット・ジュンタ」という曲があります。“ビートルズが死んで、アホなジェット・セット族だけが残った”と歌っています。とってもいい曲なので、YouTubeで聴いてみてください。本当にすごい世の中になりましたね。世界で一番最高の図書館が誰の横にもあるんです。
一番最初のかっこいいジェット・セット族って、ビートルズなのかなと僕は思っています。人生の意味を求めてインドまで行くのですから、すごいですよね。
ジェット・セット、ヒッピーと呼ばれる前はボヘミアンと呼ばれていました。
今僕らがやっている旅行というのはジェット・セット族の残骸なのです。旅行って何かというと、貴族がやっていた冒険を、安全に、予算、時間を決めてやるようになったのが旅行なのです。
地球温暖化時代、飛行機に乗るのもアウトですよね。グレタちゃんみたいにどこ行くのも船で行かないといけないです。グレタちゃんがやっていることって、昔の貴族がやっていたことなのです。デヴィット・ボウイも初めて日本に来た時は船で来てました。めっちゃ貴族です。帰る時は、横浜からウラジオストックまで船で行って、シベリア鉄道でヨーロッパに帰っていきました。もう一度いいます、めっちゃ貴族ですよね。半分は飛行機が落ちるという恐怖症に悩まされていたんですけどね。子供の頃、この旅行に憧れました。
キース・リチャードも家族旅行はオリエント・エキスプレスで旅行してました。キースの趣味は初版本のコレクトです。何回もいいます。めっちゃ貴族です。本も昔は誰もが持てたわけではなく、印刷されたものを、貴族が自分の趣味で製本していたのです。だから本も一冊一冊違うのです。
僕もいつかジェット・セット族のような生活をしようとこの本を置いているのです。『ティファニーで朝食を』の主人公も高級コール・ガールしながら生きていくジェット・セット族でした。あれ、そういう話だって分かっていました?小説のオチは突然消えた彼女に「きっと彼女はアフリカのサバンナかどこかで、元気にしてるよ」と語り手に語られています。
子供の頃はそういうヒッピーみたいな生き方が大嫌いでした。パンクでしたから、でも、デヴィッド・ボウイも住んだ京都に住んでなんとなく、ロジャー(間借り人)の生き方も分かってきたのです。
で、ついに僕もなんとなくですけど、最後の場所が見つかったような気がするのです。つい最近石垣島に行ってびっくりしたのです。沖縄本島と全然変わらんやろと思っていたら、全然違っていたのです。ここが僕のゴーギャンのタヒチなんだって分かりました。というか、あのゴーギャンの絵のタイトル“我々どこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか”というか、お金持ちじゃないから『ジプセット・トラベル』に紹介されているアメリカのモンターク(ウォーホルが別荘持っていた所ですね、ミックやキースもよく遊びに行ってました)、イギリスのウエスト・カントリー(グラストンベリー、コンウォール周辺ですね、乗馬しながらカントリー・ライフを貴族のように満喫したかった)、マジョルカのデイア、ケニアのラム、ブラジルのアルト・パライソ、メキシコのトドス・サントスなど、こういう退廃でオシャレな所で日本から一番近いのはインドのノース・ゴア(ミック・ジャガーの娘がビーチでお店やってたけど、まだやっているんですかね)ですね。
ゴアに住むのもしんどいですよね。でも石垣島やったら、コンビニでバイトしながら、なんとか暮らせそうです。
沖縄本島の人口129万人は多過ぎます。石垣島が5万人、5万人くらいじゃないと、“我々どこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか”なんて考えられないです。129万人も人がいたら、人が多過ぎて気が狂ってしまいます。本島は石垣島から行く離島、人が300人とか、50人とかで、お土産物屋でもやって暮らしたいんですけど、お店やる資本もないので、やっぱ石垣島でバイトしながら、“我々どこから来たのか、我々は何者か、我々はどこへ行くのか”を考えたいです。
INUの「気狂って」ですよね。
“沢山の人間がいて
俺はその中のひとり
定まらぬ視線の中で
みんなお互い窒息寸前
ええ加減にせんと気い狂って死ぬ
簡単に物が在って
簡単に手に入らない
手に入ったところで
おまえのものにはなりえない
ええ加減にせんと気い狂って死ぬ
なんとなく感じてたことがはっきりと分かってきた”
物が何もない離島で、美しい朝日と夕陽を見ながら死んでいきたい。
Gypset Travel ジュリア・チャップリン著