第83回「Rickenbacker Guitars: Pioneers of the electric guitar: The definitive history of a 20th-century icon」 Martin Kelly 著 Paul Kelly 著

「Rickenbacker Guitars: Pioneers of the electric guitar: The definitive history of a 20th-century icon」 Martin Kelly 著 Paul Kelly 著
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「本は場所を取るからなるべく電子書籍で持っていたらいい」と自分に言い聞かせながら生きています。紙の本をなかなか手放せないものがある。前回紹介した『ジプセット・トラベル』もそうですが、この『リッケンバッカー パイオニアーズ・オブ・エレクトリック・ギター』もその一つです。

これはなんだろうとずっと思っていたのですが、前回、“『ジプセット・トラベル』を電子書籍にするためには、大金持ちになってリゾート地で生活出来るようになればいいのだ、夢だったと気づいた”みたいなことをを書きました。

リッケンバッカーもまさにそんなギター、ベースなのです。ギター、ベースはフェンダーかギブソンで十分やろと思うのですが、なぜかリッケンバッカーを持ちたいという夢を捨てれないのです。だから僕はこの本をたまに見るのです。リッケンバッカーをちゃんと実機で持つようになった時、僕はこの本を売って、電子書籍で持つことになるのでしょう。

同じアメリカで生まれたのに、フェンダーとギブソンとまったく違うリッケンバッカーのギター、ベース。フェンダーというのはリッケンバッカーから生まれたのに、ぜんぜん違うエレクトリック・ギターとなった。世界初のエレクトリック・ギターはリッケンバッカーなのに、なぜかみんな世界で一番最初のエレクトリック・ギターはフェンダーが作ったテレキャスターだと思っている。リッケンバッカーより後だが、テレキャスより前に、ギブソンはアコギにチャーリー・クリスチャン・ピックアップと呼ばれるギターをつけて、チャーリー・クリスチャンがクラブでジャズのソロを決めていた。歴史はどんどん忘れさられ、改ざんされていく、そんな歴史を修正してくれるのがこの本です。

エレクトリック・ギターは元々ハワイアンでよく使われていたエレクトリック・スティール・ギターを、座ってじゃなく、立って演奏するのはどうしたらいいかから始まっているのです。そんなリッケンバッカーのエレクトリック・スティール・ギターやアンプを下請けで直していたのが、フェンダーを作るレオ・フェンダーなのです。たぶん、鉄板会社もやっていたリッケンバッカーの鉄の楽器はエレキにするとキンキンしてたんでしょうね。スティール・ギターには適した音でもギターとしてはキンキンしている。ギブソンみたいなアコギじゃなくっても、木の板でやればいいんじゃないと考えたのがレオ・フェンダーなのかもしれません。この木の板でいいと先に考えていたのが、ギターリストのレス・ポールなのか、レオ・フェンダーなのか、それとも他の人なのか、ということが謎とされているのです。レス・ポールも壊れたアンプをレオ・フェンダーのとこに修理に持っていったりしていたのです。みんな狭い世界でゴチャゴチャとやっていたのです。

そんな混沌とした時代の空気を蘇らせてくれるのがこの本です。

 そんな本を作っているのは元イースト・ヴィレッジというバンドをやっていたマーティン・ケリーとフェルトなどをやっていたローレンスの映画『ローレンス・オブ・ベルグレービア』を撮った映像作家のお兄ちゃんのポール・ケリーです。

マーティンのことは彼がプライマル・スクリームのマネジャーだったアレックス・ナイチンゲールのとこで働いている頃から知っているのですが、こんなに彼がヴィンテージ・ギターを好きだと知らなかったです。

この二人はこの本を作る前にフェンダーに関する本『ゴールデン・エイジ・オブ・フェンダー 1946-1970』も作っていて、このリッケンバッカーと負けないくらいフェンダーに関する完璧な本です。こちらは日本版も出ました。リッケンバッカーの本は残念ながら日本版は出なかったです。

日本は海外よりもリッケンバッカー好きが少ないんですかね。

本当のことを言うと、12弦のリッケンバッカーは持っているのです。でも場所もとるし、売っぱらおうかどうかでずうっと悩んでいます。それでこの本も売ることが出来ないのです。

でも、12弦の音は本当に気持ちいいんですよね。12弦持つとしたら、アコギやろという気持ちにもなるんですけど。でも初期のプライマル・スクリームみたいにずうっとエレキの12弦の音がなっているバンドやってみたいという気持ちも捨てれない。

出来たばかりのエレクトリック12弦ギターを渡されたジョージ・ハリソンの気持ちがよく分かります。「これだ」って思ったんでしょうね。本当はまずジョン・レノンに渡されて、「これ、きっとジョージが気に入ると思うよ」ということになったんですけどね。ジョージはインフルエンザで寝込んでいたんですよね。ジョン・レノンはリッケンバッカーから手渡された12弦あんまり気にいらなかったみたいですけど。

「ビートルズが成功している理由は12弦ギターだ。あいつらのコード進行は俺らがやっていることと何の違いもない」と、結論付けたザ・バーズのロジャー・マッギンはリッケンの12弦を手に入れ、ビートルズに対抗し、彼らを超えていく音楽の先駆けとなるフォーク・ロック、サイケと呼ばれ、完全にビートルズの登場によって負けていたアメリカのロックを盛り返していくのです。

ジミ・ヘンドリックスのフェンダー、エリック・クラプトンのギブソンでロックは次の世界に飛躍したと思われていますが、実はリッケンバッカーの12弦もこれらのギターと変わらないくらい重要な役割をしたのです。

こんな歴史がビシビシと伝わってくる本です。僕がこの本を売れない一番の理由はこれかもしれません。