第91回 世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ 齋藤 ジン (著)

世界秩序が変わるとき 新自由主義からのゲームチェンジ (文春新書) 齋藤 ジン (著)
Amazonで商品を見る

すごい本が出てました。買ったのに読むの忘れてただけなのですが。

あのジョージ・ソロスを大儲けさせた伝説のコンサルの方の本です。

読み始めたとき、斎藤ジンさんを女性だと思ってたのに、男性だと知って「あれ?」と驚きました。さらにトランスジェンダーの方だと分かりました。

「コンサルタントとしてトランスジェンダーで大丈夫か?」と失礼なことを考えてしまったのですが、本にはそのあたりのことも詳しく書かれていて、心が温まります。世界の懐の深さを感じます。日本ではテレビで多くのトランスジェンダーの方が活躍していますが、投資の世界でトランスジェンダーの方が当たり前に活躍できたでしょうか?日本の富裕層は彼女をどう信頼したのでしょうか?今は実績のある方なので、権威に弱い日本ではないと思いますが。このあたりの意見も本にしっかり書かれています。

この本で初めて知ったのですが、現在のトランプ大統領の財務長官、スコット・ベッセントは、共和党初のオープンリー・ゲイの閣僚だそうです。オープンリー・ゲイの閣僚は、民主党のバイデン政権で運輸長官を務めたピート・ブティジェッジが初でしたが、財務長官の方が重要ポストなので、共和党が一歩リードしていると感じます。

ベッセントの家を調べたら、ピンクの家でとても可愛いかったです。子供も二人いるようで、「LGBTQに生産性がない」と発言した杉田水脈議員にこの事実を突きつけたいです。さまざまな事情で子供を育てられなかった方から養子を迎え、社会を築いているこのゲイのカップルのどこが生産性がないのでしょうか。

杉田議員の問題は、LGBTQだけじゃなく、「子供が出来ない夫婦にも生産性がない」と言っていることに気づいていないことです。子供を作りたいけど運悪く子供が出来てない夫婦が、どれだけ悩み苦しんで、不妊治療をしているのか、全く分かっていない点です。「早く孫の顔がみたいわ」という一世代前の姑のようなデリカシーのない発言をする人が政治家をしているのは自民党の恥だと思います。

ジョージ・ソロスのことはご存知ですか?1992年、ユーロに参加したイギリスがポンドの価格を維持できないと見抜いたソロスは、ポンド売りを仕掛け、イギリスの中央銀行が暴落を抑えきれず、ポンド危機が起きてユーロ圏から離脱したという大事件を起こした伝説の投資家です。

これは、中央銀行の裁量で決定した価格が市場の実勢を反映しているかどうかの戦いです。昔、「円だから360円でいいよね」という嘘のような本当の話で、日本の円の価格が決まっていました。しかし、その価格が事情の実勢と合っているかどうかが問題です。

360円という安い値段設定が日本の高度成長を支えました。日本の高度成長は、実は為替安によるものだったのです。しかし、プラザ合意で為替安を維持できなくなり、日本の成長は止まりました。30年で日本人が突然劣化したわけではありません。円安時に「日本が終わる」と騒ぐ人たちを見て、馬鹿だなと思っていました。日本の成長は為替安によるものだったからです。為替安を維持するため、日本は為替介入を続けていましたが、プラザ合意で「ダーティ・フロート(為替介入)をやめろ」と言われました。円を安く誘導することは、ある意味、金融緩和と同じです。プラザ合意前の日本は全員がリフレ派で、お金を刷っている状態だったのです。インフレ気味でしたけが、誰も「日本死ね」とは言わず、貧しくても未来に希望を持てる国でした。

すいません、自分の見解ばっかり書いてしまいました。

斉藤ジンさんは、トランスジェンダーである自分はシステムの外にいるから、社会の盲点を見つけられると書かれています。ユダヤ人のジョージ・ソロスも同じです。マイノリティだから、社会の矛盾点を見抜けるのです。そして、差別してきた国のシステムに勝ったのです。

そんな憧れのジョージ・ソロスを儲けさせたのが斎藤ジンさんで、尊敬しています。トランプ政権の財務長官、スコット・ベッセントはジョージ・ソロスの右腕だった人です。彼が斎藤さんの「日銀改革と日本の転換点」というレポートを読み、2012年の円売り、日本株買いで大儲けをしたそうです。

彼女は1990年代後半の日本の金融危機を予測しており、その考え方が素晴らしいです。

“なぜ私はこのとき日銀を取り巻く環境が激変すること、そしてその相場の意味合いを予測出来たのか、本質的には私が1990年代後半に金融危機を予想した時と同じですし、ソロスがイングランド銀行に攻撃を仕掛けた話とも同根です。つまりシステムと現実の乖離が拡大し、その矛盾が解消する時に市場が大きく動く、という考え方です。

 日本の金融危機であれば、不良債券という現実に対し、その処理システムが欠如していたことです。ソロスとイングランド銀行であれば、マクロ経済の現実に対し、裁量的に設定された為替レートが正当化できない水準であったことです。こうした矛盾の解決には、どちらかの状況を解消する必要があるので、大きなエネルギーを生みます。それこそがソロスの好む、「inflection point」を狙った投資機会なのです”

分かりますか?ちょっと難しいですよね。

みなさんの関心はお金を増やす方法ですよね。NISAをやるべきか、日本株かアメリカ株か。僕の意見では、為替リスクがあるのでアメリカ株より日本株の方が安全だと思います。

みなさんは、世界に目を向けてない日本の会社より、世界を相手に最先端で戦うアメリカの会社に未来があると考えますよね。SP500に投資すれば年8%と言いますが、円高や暴落のダブル・パンチを喰らえば利益は一気に消えます。トランプ・ショックで悲鳴を上げた方は分かるはずです。身近な日本企業に投資する方が状況を把握しやすく無難です。日米金利差など要因はありますけど、為替は基本的にマネタリーベースの量で決まります。ドル円なら、市場の円の総量をドルの総量で割ると1ドル=約115円(2025年1月のドル総量:5.73兆ドル、2025年3月円の総量:657兆円)。現在の143円は円安気味なので、将来的に115円に向かう傾向があると思います。

これがジョージ・ソロスの「ソロス・チャート」です。今は「ソロス・チャートは古い、金利差が重要」と言われますが、基本はこれです。お金の値段は市場が決めます。「ドルが高い」「円安で死ぬ」と騒いでも、固定相場の時代ではないのです。

また僕の見解ばかり書いてしまいました。

斎藤ジンさんは、日本の時代が再び始まると予測し、この本を書きました。日露戦争時、覇権国のイギリスがロシアを抑えるために日本を支援しました。イギリスはアメリカを牽制するため、日本にハワイ購入を提案したこともあります。トランプみたいですね。もしこの交渉が上手くまとまっていたら、真珠湾攻撃もなく、ハワイは日本の領土だったかもしれません。戦争せずハワイを買えばよかったのに。朝鮮や中国への進出も認められていましたが、覇権を脅かす存在となり、日本潰しが始まり、敗戦に至りました。

冷戦時代、ソ連の防波堤として日本は再び盛り上げられました。しかし、冷戦終結後、日本叩きが始まり、株価は冷えました。今、アメリカが中国を敵視し、日本を再び盛り上げるので、株価は上がると斎藤さんは予測します。

覇権国というカジノのオーナーがゲームを決めます。斎藤さんはアメリカが覇権国であり続けると予想しますが、前に紹介したエマニュエル・トッドの『西洋の敗北』では、グローバリズムで中国なしでは戦艦やロケット、銃弾まで作れない西洋は敗北するろ予測します。トッドも日本の産業復活を予想しますが、西洋への過度な追従は危険と警告します。

共産党が崩壊の方が先か、西洋の敗北が先か、僕には分かりません。トッドも分からないから、日本はうまく立ち回れと言います。

面白いと言ってはいけないのですが、面白い時代です。これからの世界はどうなるのでしょうね。