第95回 『神の目の小さな塵』 【新版】 (創元SF文庫) 文庫 ラリー・ニーヴン (著), ジェリー・パーネル (著), 池 央耿 (翻訳)
- 2026.01.21
- KYOTO
子供の頃は、デヴィッド・ボウイの「スターマン」みたいに、いつかスターマンが現れて僕らは別の次元に行けると思っていました。
SF小説の傑作アーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」、もしくは「2001年宇宙の旅」ですね。
デヴィッド・ボウイの「スターマン」は、「幼年期の終わり」と同じように宇宙人のメッセージがラジオから流れてきます。
今だとSNSを通じて宇宙人からフェイク・ニュースが来るのでしょう。
デヴィッド・ボウイの「スターマン」のかっこいいメッセージ
“Let the children lose it
Let the children use it
Let all the children boogie”
子供の頃は、何のことかまったく分かりませんでしたが、大人になると、これは“子供たちにドラッグやらせろ、そして、自由にして、ブギさせろ”って歌っていたのだと、衝撃を受けました。
LSDで世界をより良き世界にしようとしていたハーヴァード大学の教授ティモシー・リアリーの “ Turn on, Tune in, Drop out ” の危険なメッセージをポップ・ソングに入れようとしていた当時のボウイの先鋭さを感じます。ビートルズもこの先鋭的な言葉をなんとか自分たちの曲に入れようとして、うまく言ったのが、「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」です。
“That is you can’t, you know tune in but it’s all right. That is I think it’s not bad.”
とジョンがtune in という最新の言葉をやっと入れた時、スタジオでハイになっていたジョージとポールが「やったー」と喜んだというエピソードは有名です。
この頃はドラッグが救世主となると考えられていたのです。
過激な人はLSDを取水場に入れろ、そうすれば世界平和が訪れると声高々に叫んでいました。
その通り、政治家たちにLSDを飲ましたら、大変なことになったという物語を書いたのがフレーミング・リップスの『アット・ウォー・ウィズ・ザ・ミスティックス(神秘主義者との交戦です。』
民主主義の代表である政治家なんてものは、普通リベラルに進化していくはずなのに、LSD(リベラル)な思想を浴びた結果、悪魔(ネトウヨ)になってしまったという話です。デビルマンのデーモン一族と戦うために、悪魔と合体しないといけない、たとえ半分以上の人間が悪魔となるとしてもというプロットと同じです。
You think you’re so radical
I think you ought to stop (say what?)
But you’re going international (no, no, no)
They’re going to call the cops
You’re turning into
A poor man’s Donald Trump
I know those circumstances
Make you want to jump
君は自分のことを過激と思っているけど
もうやめるべきだと思うよ(なんか言ってみな)
でも君は国際的な存在になりつつある(嘘、嘘、嘘)
彼らは警察を呼ぶつもりだ
君はただ単に貧乏なドナルド・トランプになりつつあるだけ
それが、君を死にたくさせているて、よく分かるよ。
と「フリー・ラディカルズ」で歌っています。まだブッシュが大統領の時に世界がネトウヨ化しつつあるということを歌っていたのです。しかも左翼的思想を持っていた奴がネトウヨになっていっていくんだよということを歌っていたのに衝撃を受けます。
この頃、ザ・ヴェルヴェッド・アンダーグランドのドラムのモー・タッカーがネトウヨの原点のようなティー・パーティーの一員になっていました。日本でもだんだん昔ロックを聴いていたおじいちゃん、おばあちゃんたちが「日本をなんとかしなあかん」「日本を取り戻さなあかん」と、ネトウヨ化していきました。
彼らがロック好きで左ぽい考えをもって自民党なんかに反対を唱えていた頃の日本も別にいい国じゃなかったですし、日本をより良い国に変えようと戦っていたはずなのに、いつの間にか、変な転換が起こっているのです。
このまま行くと、世界はギリシャやローマ帝国が滅んだように、内部分断して暗黒の時代と言われた中世になったように、僕ら過去と同じ分岐点に来ているのです。
SFでもこういうのがテーマが多いです。
宇宙のことを知ってくると、宇宙というのはスワンズの「ユニバーサル・エンプティネス」だというのが分かってきます。宇宙は広く、あまりにも長い歴史を持っていて、僕ら以外の知的生命体がいないというのが分かってくる。いたとしてもその人種は何万年前にも滅んでいるか、もしくはまだ進化の途中の未発達の動物なような存在でしかない。映画「エイリアン」ですね、滅んでしまった宇宙人が残した卵とは何なのかという問いなのです。
もしくは中国のSF小説「三体」のように、見つかってしまうとすぐに滅ばされる。でもそれは四百年後とか気の遠くなる話なのです。それか突然僕ら消滅させれるかもしれないのです。四百年後に滅ぼされると言っても、そんなのどうでもいいですよね。4百年後、その宇宙人を撃退出来るように技術が進化してるかもしれないですし、進化させないために宇宙人が策を練るんですが、それが「三体」のキモでもあるし、その背景にはいつか滅びるであろう共産党を感じるのです。
「三体」のこういう感じって、中国4千年の歴史が生むものかと思っていたんですが、七十年代のファースト・コンタクトもの傑作『神の目の小さな塵』を読んだら、あー一緒なんだというか、さすがSFやってないことはないなと感心しました。『三体』『デューン』などを読んでSFにハマった人は読んでみてもいいかもしれません。分かりずらいとこ多いと思うんですが、そういとこは何となく読んで、未来が、現在がどういう状態になるかの思考実験を楽しむのによい遊びだと思います。
『デューン』の頃は人口問題が重要な課題で、白人の人がどんどん減って、アジア人がどんどん増えていくという恐怖に白人の人は晒されていたと思うのです。今回長らく絶版になっていて再出版される『神の目の小さな塵』に出てくる宇宙人のメタファーはアジア人だと思います。世界中の人がお金持ちになって行く現在は、世界中が子供を一人しか産まなくなるという世界になって行くのですが、この頃はまだ分かっていなかったんですね。
今の地球は2100年代に110億人でピークを達し、その後減少していくと言われています。地球の人口はあと50億人しか増えないのです。そして2200年には現在の地球の人口と同じ80億人に衰退すると予想されています。
早く子供は二人いる方が楽しいよ、三人いる方がもっと子供は出世していくとか宣伝していかなと、地球は寂しくなると思います。
これも僕らの未来なんでしょう。寂しい地球、誰とも会えないくら広い宇宙で僕らは孤独に絶滅していくのでしょう。
こんなことを考えながら、それじゃない未来を考える意味では『神の目の小さな塵』を読むのはよい思考実験だと思います。
『神の目の小さな塵』 【新版】 (創元SF文庫) 文庫 ラリー・ニーヴン (著), ジェリー・パーネル (著), 池 央耿 (翻訳)