第97回 Blues from Laurel Canyon: My Life As a Bluesman 英語版 John Mayall (著), Joel McIver (著)
- 2026.01.21
- KYOTO
ローレル・キャニオンに行ってきました。終活です。子供の頃からの夢でした。ミュージシャンたちがコミューンのように集落に住んで音楽を作っていたなんて話を聞くと住んでみたいなと思ったのです。行ってみて思ったのは「こんな所によく住んだな」です。断崖絶壁の所に違法建築で家を建てまくった(当時は規制が緩くオッケーだったのですが)。そんな家なので持ち主も建て替えることも売ることも出来ず、頭のおかしなヒッピーたちに貸したのでしょう。
ローレル・キャニオンの話を聞いたのは誰からでしょう。たぶんスマッシュ・ロンドンのジェイソン・メイオールから。アレックス・コーナーと共にブリティッシュ・ブルースの基礎を築いた彼のお父さんであるジョン・メイオールがなぜフランク・ザッパと仲がよかったのかを聞いているなかでローレル・キャニオンの話が出てきたのでしょう。ジョン・メイオールもフランク・ザッパもローレル・キャニオンに住んでいました。
というわけでジィソン・メイオール、ギャズ・メイオールのお父さんの自伝『ブルース・フローム・ローレル・キャニオン』を読みました。
この本を買っていたのは実はローレル・キャニオンのことより、彼がローレル・キャニオンで変なセックス・コミューンを作っていて、そんな親だからギャズはあんまり親のことをよく思っていなく、若かったジェイソンは別になんとも思ってなかったというようなことを日高さんから聞いて、なんじゃそれはと思って、ジェイソンに直接聴いてもよかったのですが、失礼だなと思ってこの本を買っていたのです。
この本を読んでびっくりしたのですが、ギャズとジェイソン、一才しか違わないのです。日高さんが言うように若かったとか関係ないですよね。一才しか違わなかったら双子みたいなものです。内の孫たちを見ているとそう思います。というか4歳くらい離れていても兄弟は一緒みたいなものです。「お兄ちゃんやからしっかりしなさい」「弟やからお兄ちゃんの言うことを聞きなさい」という昔の育て方から間違っているなと思います。4歳くらいだと対等ですよ。僕一人子だったからこの関係性が分からなかったのですが、たぶんこういう育てかたって、長男がすべての受け継ぐ戦前の家督制度の名残りが僕の頃にはまだあったんでしょうね。
ジョン・メイオールのセックス・コミューンみたいな話はいっさい出てこなかったです。AIに聞いたら“そんなことないですよ、他のメンバーがチルドレン・オブ・ゴッドに入ってその洗脳から抜け出すように一生懸命努力されていましたよ”と、「違うんかい」と思いました。AIが言った話も出てこなかったので、AIも嘘をついているのでしょう。
「ジョン・メイオールのとこにいたこれまた伝説のブルース・ギターリスト、ピーター・グリーン(フェイズされた音がブルースを生んでいたなと今は本当に思います。当時はまったく良さが分からなかったのですが)も変なドイツのヒッピーカルト集団と関わっていたよね、あれは一体何?」と聞いたら全部教えてくれました。ピーター・グリーンはそのコミューンでキツイLSD をやってからちょっとおかしくなっていったのです。最後は完全に引きこもり状態になって、ジョン・メイオールのロンドンの家に居候していて、ぜんぜん部屋から出てこず、ジェイソンが閉まったドアの前にご飯を置くと、次の日にはご飯を食べたお皿が置かれていて、生きてるなって確認していたそうです。
ジェイソン、ギャズ、本当にすごい伝説を持っているんです。ジョン・レノンに子守唄歌ってもらって寝たとか、都市伝説じゃないですよ、本当の話です。
それくらいジョン・メイオールはすごい人で、この本にも、あのボブ・ディランが初渡英した時(映画『ドント・ルック・バック』の時ですね)、ディランが名指しで唯一会いたいと招待したのがジョン・メイオールなのです。
ジョン・メイオールのバンド・リーダーとしてのノウハウを得たかったのか、後のディランのスタイルである自分の女性遍歴なども赤裸々に歌うスタイルの弊害などを聞きたかったのか、謎なのですが、すごいです。
もう一つ書いておきますとあの無駄口を一才きかないマイルス・ディヴィスがわざわざジョン・メイオールに「お前のやっていることは意義がある」と言ったのです。全部本に出てきます。ジャズをもっとビッグにしようとロックに接近しながらもエレクトリック・マイルスと呼ばれる気が狂ったとんでもない音楽を生んだけど商業的には成功しなかったマイルスが、ジャズとブルースをロックの時代に上手く合わせ成功したジョン・メイオールの音楽を尊敬していたということなのでしょう。
この本で読んで面白かったのは、とても家庭的だったジョンがある日自由恋愛に目覚めてしまうのです。その理由が全く分からないのです。そういう時代だったからか。始まりは1番自由恋愛していたバンド仲間のエリック・クラプトンが、バンドのライブをすっぽかした日、エリックを目当てに来た女性が会場に現れた時にジョンの自由恋愛人生は始まるのです。
自由恋愛の話は置いといて、この本で象徴的に描かれているのが、プールなのです。
プールがどういう風に描かれているかというと、強欲の象徴として描かれているとしか思えないのです。
ジョン・メイオールを尊敬していた人物にザ・ローリング・ストーンズのブライアン・ジョーンズもいました。ストーンズを首になって一緒にやりたいと思った人物がジョン・メイオールなのです。ブライアンはジョンをあのくまのプーさんを書いた作家が住んでいた豪邸に招待します。ジョン・メイオールはギャズ、ジェイソン、そして二人のお母さんを誘って、ブライアン・ジョーンズの家に遊びに行きます。ジョンとブライアンが音楽の話をしている間、ギャズとジェイソンはブライアン亭のあのプールで楽しく遊んだそうです。そして、二日後、ブライアンはそのプールで謎の死をとげるのです。
ローレル・キャニオンに家を買ったジョン・メイオールはその家にアメリカの成功の象徴であるプールを作ります。そして、完成したらギャズ、ジェイソン、彼のお母さんを招待し、バルコニーからプールまでロープを貼り、そのロープを渡りながらプールに飛び込んだりして。ギャズ、ジェイソンは遊んだそうです。本当にジョンは家族を愛していたのだなと思います。
ギャズと一緒にホラー映画を作ったり、きっとそれを観ていたジェイソンは映像の世界に行きたいなと思ったのでしょう。
そして、そんなプールにある日、ジョンは酔っ払って飛び込むと水が入ってなくって、膝小僧を全壊する事故に遭います。そして、ローレル・キャニオンの家はあの有名な山火事で全焼してしまうのです。ジョンの大切なコレクション、彼が録音してきた大切な音楽も全部燃えてしまうのです。
ジョンはこの一連の事件について詳しく語りません。話を聞いていたライターさんがこの本の終わりとしてまとめただけかもしれません。ジョンの人生はまだまだ続き、この本の続きがあるとこの本は終わっているのです。
本の続きが本当に出るのか、どうなのか、ジョンが亡くなってしまったのでもう分かりません。
でもこの本を読んで思うのはジョン・メイオールがどれだけ音楽、家族、女性を愛したかということです。
そうそう、ジョニ・ミッチェルと同居し(ゲイだから安心)、ボブ・ディランのレコードを出し(騙されたと思った)、ニール・ヤングのレコードを出し(騙されたと思った、結構アーティストに痛い目に合わされています)ゲフィン・レコードのデヴィッド・ゲフィン(もちろんユダヤ人)に襲われそうになった話も面白おかしく書いています。
この本を読んでたら、音楽をやりたくなります。
Blues from Laurel Canyon: My Life As a Bluesman 英語版 John Mayall (著), Joel McIver (著)