実録・関西パンク反逆の軌跡 Vol.23
- 2026.03.28
- その他
2025年8月20日にフリクション「・ed」が「 ’79 live」として初のアナログ復刻された。
アートワークはオリジナル盤を忠実に再現しているためジャケットにクレジットは無い。再発に伴う新情報のライナーノーツとて封入されていない。
フリクションらしい無愛想さに苦笑い。
私はこの日のライブで前座を務めたスーパーミルクのベーシストだった。
このアルバムの再発ごとの変遷を記す。
◯オリジナル盤
1980年12月20日にオフィシャル・ブートレッグ「フリクション/・ed」として10インチ盤EPでリリース。
ジャケットには「このレコードはFRICTION1stアルバムがリリースされる4カ月前1979年12月、カセット・テープレコーダーで録音された」とあるのみ。

レコーディング・データ
フリクション/レック(b,vo)、ツネマツマサトシ(g)、チコ・ヒゲ(drm)
録音日/1979年12月16日
録音場所/磔磔
コンサート・タイトル/SPUNK OUT2
前座/スーパーミルク
ライブの主催者は本サイトを運営してはる南部裕一さん。
このライブ盤が発表された理由はレックが1980年4月25日にリリースされたフリクションの1stアルバム「軋轢」の出来に不満だったから。
「磔磔はエネルギーの行き場があるわけ。客がいるから。ちゃんと放射する相手がいるわけだけど、スタジオではそれがないから、『軋轢』ではエネルギーの出方があいまいになっているよね。フリクションは、対峙するっていうのがコンセプトだったから、その対峙するものがないわけだ、スタジオには。それは自分でもすっごい悩んだもんなぁ。そういえば、どこに音を持っていけばいいんだろうって。そういう意味ではエネルギーが全然違うよ。」(「ロック画報」19号「軋轢という快楽 レック・インタビュー」より)
レックはこの日の演奏について「磔磔のライヴは割と重要だと思うよ。不安とか、飽きてるとか、気持ちの揺らぎとかが全然ないから。完全にスコーン!と行ってるよね、あのライヴは3人とも、ちょっと奇跡的かもしれない。何回も起きないんだよな、ああいうのは。」(「ロック画報」19号「軋轢という快楽 レック・インタビュー」より)
音源は「もともとレックが持参したラジカセで簡易に録音されたものだった」(「フリクション/’79 live」CD小野島大のライナーノーツより)。
それ故レコードはモノラルでこもった音質である。
それでも発表に踏み切ったのはよほど得心がいく演奏内容だったからだろう。
さて私達スーパーミルクはSONYカセットデンスケを磔磔に持ち込みマイクを2本立ててステレオ・レコーディングした。当時このテープレコーダーはライブの生録音用としてカセットでは最高の機材だった。
録音場所は客席最後方のど真ん中。楽屋に通じる階段の向かってすぐ左側のベスト・ポイント。
自分達の演奏だけでなくフリクションのも無断で録音したのだから厚かましい。おおっぴらな不正行為にも拘らずフリクション側や主催者からもお咎めは無かった。録る側も録られる側もあの時代ならではの無頓着さだった。
◯’79 liveCD
2005年4月15日にCD版がボーナスDVD付きでリリース。
2001年初頭に「アーント・サリー/ライブ1978−1979」CDの年表校正でいぬん堂の石戸圭一さんとご縁が出来た。
スーパーミルクのライブ音源のCD化を進める過程で盗録したフリクション磔磔ライブをお聴かせした。このカセットの存在はレックにも届き2005年にCD化される時にPASSレコードの後藤美孝さんから連絡を頂きマスターテープとして使用された。
オリジナル盤と演奏こそ同じだが音質は格段に向上。曲間のガヤまで収録されているのでドキュメントとしての価値が高まった。
アルバムには
RECORDED BY SUPERMILK
THANKS TO MASUTANI FUMIO,NISHIMURA AKIRA&SUPERMILK(升谷文夫はスーパーミルクの元キーボード奏者)
とクレジットされた。
◯’79 liveアナログ復刻盤
当初のリリース予定は2024年6月19日だった。
同年3月末に私の携帯電話に着信があった。いきなりフリクション磔磔ライブのマスターテープを貸して欲しいと切り出され面食らう。話している内に後藤美孝さんと判明。
マスターはスーパーミルクのリーダーだった阿頼耶歩(あらや・あゆむ)が保管していた。テープは送ってもらったものの発売日は遅れるに違いないと踏んだ。結局リリースは1年2ヶ月後にずれ込んだ。
アナログ復刻にあたってのプロデューサーやマスタリング・エンジニアは残念ながら不明。
CD版と聴き比べてみた。ダイナミック・レンジは更に広がっている。特にベースの音圧が高い。歪んで割れた音は鈍器で殴打される如し。
ヒゲの縦ノリで水際立ったドラミング、ツネマツ・マサトシのエッジーなエレキも時代を超えて「♪お前のハートを貫く」!

映画「ストリート・キングダ厶 自分の音を鳴らせ!」が3月27日(金)に公開。
カメラマンの地引雄一と東京ロッカーズをモデルにした作品でフリクションに相当するバンドは軋轢、DEEP(b,vo)役は間宮祥太朗、マツ(g)はタカハシシンノスケ、ヒコ(drm)を黒野優が演じている。
次回は1979年12月16日磔磔フリクションのコンサート・レビュー。