第98回 半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防 クリス・ミラー (著), 千葉 敏生 (翻訳)
- 2026.03.28
- KYOTO
今、アメリカが1番興味ある久保憲司です。もちろん中国も興味があります。長年覇権国家として君臨してきたアメリカが、このまま派遣国家であり続けるのか、それとも中国にその座を譲ってしまうのか。本当に気になります。
アメリカが世界一だと証明した瞬間は、CNNで生中継され、今もYouTubeで見られる湾岸戦争のあの精密誘導ミサイルの映像です。
ソ連の半導体が劣っていたこと、アメリカの半導体がいかに優れているかを、世界中に見せつけた瞬間でした。あのとき冷戦は実質的に終わり、多くの人がフランシス・フクヤマの『歴史の終わり』が現実になったと感じたのです。
それは1991年1月。今から35年前のことです。
コロナほどではないけれど、世界の動きがほとんど止まっていた約6週間でした。
ちょうどその頃、世界最大規模の音楽産業見本市であるMEDEMが開催されていました。いつも参加する日本のレコード会社の人たちは「戦争中だから」と誰も来ず、日本から参加していたのはエイベックスの依田さんと松浦さんだけでした。
このとき彼らは、現地で有望なレーベルやアーティストを次々と契約。それが後のエイベックスの急成長につながったと言われています。
イビサで会ったのかどこで会ったのかはもう覚えていないのですが、僕が松浦さんと喋ったのは、この時だけだったなと思うのです。
この戦争で、大物アーティストのツアーが次々とキャンセルされ、スピーカーなどの機材が倉庫に眠ることになりました。そこで「だったらレイブをやっている奴らに貸し出すか」という流れになり、1万人規模のレイブがイギリス中で開催された年でもありました。
これはベルリンの壁崩壊から、わずか2年足らずで起きた出来事です。
全部がつながっているような気がします。つなげて話こともできるでしょう。でも35年も経つと、どんなに巧みにまとめても、全部夢のような話に感じてしまいます。
それから35年くらい経った今、また似たような転換期が来るのでしょう。
何年か後、アメリカは台湾に上陸しようとする中国軍に、あの湾岸戦争のような精密ミサイルを浴びせて、「世界はいまだアメリカの配下にある」と見せつけるのでしょうか。
それとも、エマニュエル・トッドが言うように、アメリカは自国産業を失った結果、中国にミサイルを次々と撃ち落とされ、「今度は自分たちがソ連になった」と気づくのでしょうか?
クリス・ミラー『半導体戦争 世界最重要テクノジーをめぐる国家間の攻防』を読んでいると、そんなシナリオはまったく感じません。むしろ、35年前のあの映像が繰り返されるような気がしてなりません。
いろんな人がいろんなことを言っていますが、半導体の歴史を知っていると「そんなことないだろ」と思ってしまうのです。
アメリカ国内にも「別に覇権国家じゃなくてもいい」という勢力が半分以上いるでしょう。結局、「覇権を維持したい派」と「別にいいんじゃない派」の戦いなのだと思います。
半導体に関しては、中国はまだ10年は遅れていて、国家規模で縮めようとしても無理だと感じます。
この本を読んでいると、アメリカが半導体で一番なのは偶然でなく、アメリカの精神性みたいなものが1番にしているとしか思えません。
僕が興味深く読んだのは、日本とアメリカが半導体で戦っていた初期の頃です。
「この人たちが、自分で作った半導体をどう使っていいか分からず、シンセサイザー、サンプラーに載せてしまったんだろうな」という考察の箇所です(本にシンセサイザーやサンプラーの言葉は一言も出てきませんが)。
もちろん、これからどうなるかも気になります。でもあまりにも複雑すぎて、どうなるかなんて全く分かりません。
それでも、アメリカの優位性は変わらないと思います。
アメリカという国の特殊性がアメリカを覇権国家にしているのだなと、つくづく感じます。
そして、もう誰が覇権国家だとかどうでもいい。世界平和のことを考えてくれよ、と思うばかりです。
これからの世の中を考えるのに、これ以上適した本はないと思います。ぜひ読んでみてください。
半導体戦争 世界最重要テクノロジーをめぐる国家間の攻防 クリス・ミラー (著), 千葉 敏生 (翻訳)