この街にしかないものを意識的に作る、、、。重要なテーマではないでしょうか。
- 2018.05.30
- NARA
- THROAT RECORDS, 五味岳久
ゴールデンウィークが明けて、最近暖かくなってきたからか観光のお客さんの来店が多いように思います。特に海外からのお客さんは毎日と言っていい くらいの頻度で来店してくださいます。ネットで店の情報を調べて来られたのか、たまたま通りがかっただけなのかは定かではありませんが、とにかく よくいらっしゃいます。奈良は海外からの観光客の皆さんからすれば人気の街なのでしょう。THROAT RECORDS近く奈良市内のメインストリート、三条通りを歩いていてもすれ違うのは8割観光客と言ってもいいくらいです。
そんな街にある店で日々接客をしていると、海外から来たお客さんはよく帰りのレジの時などに「とてもいい店だ」など感想を言って帰っていく方が多 いのです。日本ではあまりそういう習慣はないように思いますが、海外からのお客さんにそうやって感想を伝えてもらえると、とてもいい気分になりま す。日本にはない良い習慣ではないでしょうか。これから自分がどこかの店に行った時は、同じように店主に「いい店ですね!」と感想を伝えて帰るの もいいなと自分の店で接客しながら考えるようになりました。
自分の店にずっといると、待ちの状態が続くので外の世界を見る機会が減ってきます。パソコンや携帯で世の中のニュースを知ることくらいはできます が、それを肌で感じることはなかなか出来ません。幸い自分は自分のやっているバンドのツアーなどで色々な場所に行く機会が多いのですが、そこで得 てきたものというのが自分の店に戻ってきた時にとてもプラスになっているように思います。
自分でこの店をやるようになってから、ツアーで他の街に行く機会があるときには出来るだけチェーン店ではなく、そこにしかないような店に入るよう にしています。飲食店でも、洋服屋でもレコードショップでもなんでも。どこにいても同じものが手に入るチェーン店の安心感というのもありますが、 そこにしかないものに触れることができる機会があるのはやはりそういった店だと思うからです。皆さんも旅行に行けばその土地の名物料理なんかを食 べたいと思うでしょうし、その街の個性に触れたいと思って旅行に行くのだと思います。
ただ極端な話、そこにしかないものというのはインターネットや物流の整備された今の時代ほとんどどこにもないと言っていいような気がします。地方 の名産品もオンラインショップで注文すれば早ければ翌日に手元に届いたりする便利な世の中です。一昔前とは時間と距離の感覚が全く違ったものに なっているのです。
そこにしかないもの、どこにでもあるもの。どちらの良さもあると思いますが、地方都市で店を営む者としてはこの街にしかないものを意識的に作って いけるかどうか、というのはとても重要なテーマなのではないかとよく考えるようになりました。
音楽もそうです。そこでしか体験できない音楽というのがもしあるとしたら、皆それを聴いてみたいと思うはずです。自分の暮らす町、奈良だけの話で はなく全ての街にそこでしか体験できない音楽があればこの国の音楽はもっと面白くなるのではないでしょうか。Apple MusicやSpotifyのスピード感や便利さは誰もが認める事実ですし、その普及は飛ぶ鳥を落とす勢いです。ただ、誰もがオンラインで同じ感覚を同時 に共有出来る喜びとはまた違った音楽の楽しみ方というもあるのではないでしょうか。
外国から来たお客さんに「おすすめのレコードは?」と聞かれたら、奈良にあるこの店にしかない出会いをじっくり時間をかけて提供出来る、そんな店 でありたいと思います。
いろいろ書いてたら旅行に行きたくなってきましたね、、、。