カレー屋店主の辛い呟き Vol.15

「日々のハナシ 2月のあれこれ」
大阪・上本町のカレー屋兼飲み屋店主の”ふぁにあ”と申します。
ミナサマお元気でしたか?

 

さて2月です。
2月はよく8月と並んで暇な月と飲食業界でも言われている訳ですが
当店も多分に洩れずぼんやりとした営業でございます。
だって寒いんだから仕方ないよねと、テロテロぐーたらしてるうちに気がつけば3月。
しばらく宇宙船に攫われてたんじゃないかと思うぐらい、何してたか印象にないってゆーな。

うーホントに何してたんだろ…2月。

思い出し、思い出し書きすすめていく事にしますネ。

■「蜜蜂と遠雷」を今頃読む

いきなり小見出しをつけてみたりして…。なんか脈略がなくなりそなので
今回の原稿は、こんな感じで書かせてもらおかと。

 

でね、この「蜜蜂と遠雷」は、2017年の直木賞と二度目の本屋大賞を受賞した恩田陸さんの著書。
恩田さんは、他の著書もほぼ読んでる大好きな作家でずっと読みたかった訳ですが、活字中毒で、金欠気味のワタクシとしては、本は図書館でまず借りる→2回目読みそうだったら買うというルールに則って生活をしている昨今、約2年大阪市の図書館全体で1300件の予約を乗り越えてやっとこの2月に手元にやってきたわけです。で、500頁以上の長編でしたが一気に読了。

 

いやー凄い。いろいろな意味で感動しました。

 

舞台は芳ヶ江国際ピアノコンクール。二週間にわたる戦いの過程で、国内外のジュニアコンクールを制覇するも、13歳のときに母を亡くし、「ピアニスト」になることから長らく逃げてきた元天才少女、亜夜。社会人となり妻子を持ちながらも夢を諦めきれず、最後のチャンスと決意してコンクールにエントリーした明石。音楽エリートとして超名門音楽院に在籍し、優勝候補最有力の重圧に挑むマサル。そして、今は亡き世界最高のピアニストが遺した謎の少年・塵の異なる境遇にある4人のピアニストたちが成長を遂げ“覚醒”していくという、そんなお話。そして、蜜蜂のようにピアニストたちの覚醒の媒介になる(蜜蜂いないと花咲かないからね)少年・塵が亡き恩師から受けた使命である「音楽を外に連れ出せ」という啓示(=遠雷)の言葉がただの少年達の成長物語に終わらせない重奏的な広がりを感じさせてくれます。

 

恩田陸さんはもともと巧みな技巧をもった作家さんで、時に技巧が立ちすぎて中身が…。(そこも愛らしくて好きなのですが)なんてこともあるのだけど、この作品に関しては、音楽を語る言葉の超絶技巧や深さと広がりがガッチリ噛み合って、”轟くドラム、唸るギター、地を這うベース”なんて表現しか出来ない僕のような3流ライター(しないけどな)からすると、うわーと。

 

音楽を言葉にする事は本当に難しい訳で、これを高いテンションで乗り越えた作家さんは称賛しかないと思うわけです。音楽が好きな人ならどの世代の方でも持ってかれると思うんだけどな。是非一度ご一読を。

 

■ボビー・ブラウンはどれだ問題

うちのお店では店内にモニターがあって、そこには洋邦ロックからダンス~R&B~乃木坂46まで、店主お気に入りのごきげんな(って)PVが流れている訳ですが、最近流しているものの中にこんなものがあってですね

1984年リリースのニュー・エディションの極上メロウフローターな名曲「Mr.telephone man」。リリース当時はジャパメタ→パンク少年への移行期だったワタシ。後にこのグループとこの楽曲を知るわけだけど、ずっと12インチ盤で聴いていたのでこの少年時に誰が誰かよくわかんなかった訳。

 

で、お客さんでこのあたりの音に詳しそな人に「どれがボビー・ブラウンなん?」と聞いてみると、意外と分からないもので、最近この曲がかかると常連のお客さんが他のお客さんと、ボビーブラウンこれやろーゲラゲラと言い合う遊びが当店でプチ流行中なのです。(書いてみるとクダラン遊び…。)答えが分かった店主たる私はそんな姿を微笑ましく見ながら、そもそもニュー・エディションって意外と知られてないねんなと改めて思ったり。

 

てかね、個人的にはこのグループ。80年代から90年代のアメリカのR&B~ニュー・ジャックスイング~ラップのメジャーシーンの流れの中でも最重要なグループと思ってて。まぁ昔よく通ってたレコード屋のR&B親父の受け売りなんだけどね。ジャクソン5のポジションを継いだとか、ボビー・ブラウンが昔いたグループとか言われがちなグループだけど、重要なのはアイドルグループからスーパーグループに成長した後。88年の同じ日に発売されたNew Editionの「HERAT BREAK」とグループから独立していたボビー・ブラウンの2nd「Don’t Be Cruel」の2枚がその後のR&Bの流れを作るエポックな作品であり、そして、その2枚のアルバムに関わったProducerが、Jimmy Jam& Terry Lewisであり、LA&BABYFACE、Teddy Rileyだったんだ。その後、そのプロデューサー達は90年代~00年代に大ヒットを飛ばし続ける訳で、New Editionとの相乗効果で一気にシーンが変わってしまったんですな。

 

ちなみにTeddy Rileyがそのストリート感覚を生かせと結成を進めたベル・ビブ・デヴォーはHIPHOPとR&Bの融合をさらに進めて、そのスタイルに影響を受けたP.Diddyが、メアリー・J・ブライジ、Jodecyをシーンに送り出してと。で、ベル・ビブ・デヴォーのビブことマイケル・ビブンズがボーイズ2メンを発掘して、またその楽曲提供がJimmy Jam& Terry LewisだったりBABYFACEだったり。つまりね、マイケルジャクソン&クインシージョーンズじゃなくなってしまったのだな。ここから。厳しいぜ、アメリカのショービズ。

 

と一気に書きましたが、そんなのは知ってても知らなくてもどうでもいい話。
とりあえず名曲ぞろいなのでNew Edition改めて聴いてみてって話。

 

ただ、個人的に余談があって。
この「Mr.telephone man」のソングライティングは、あのゴーストバスターズのレイパーカーJRなのだけど先に提供したオリジナルがあって本当はこっちのが好きなのです。

Jr Tucker – Mr Telephone Man

 

この話をしてくれたレコード屋のおやじが売ってくれたこの曲の7インチ。すげー高かかったけど、今となってはいい思い出。気が付いたらなくなってたレコード屋だけど、元気なんだろか。

 

この曲を聴くたびに思い出す2月でございます。

 

さてさて、よくよく思い出してみるとほかにも2月いろいろ小ネタがありました。実はうっかり乃木坂46の大阪ドーム公演を見ていたりもしたのですが、ここではそぐわない様な気もするのでお店にドゾ。ただ、初めてのアイドルのライブ。40曲4時間越え。若者に交じるおっさん達。曲ごとに一斉に変わるサイリウム。なんてーか祭りで目が回りました。

 

なぜか買わされた嘘みたいな値段のサイリウム、次の機会あるんですかね…。